二日目、三 手づくりアイス
「......どうだ?」
『これ、すごくおいしいです......!ご飯も甘いし、中の梅干しも大粒で……』
「そうか。じゃあ俺も食べようかな……いや、もう少し我慢するか。念のため......」
彼女が具合が悪くなったと言い出さないかどうかじっと待っていると、壁の穴から、なにかが差し出された。それは先ほど俺が渡した竹の皮に乗った、手作りの棒アイスだった。乳酸菌飲料のような不透明な肌色をしたそれは、白いプラスチックの棒が挿してある。
「お......くれるのか?」
『はい、お返しです。……って言っても、こんなのしかないんですけど......。すいません、私、あんまり自炊してなくて......』
「いや、俺もたまたま人からもらっただけだ。料理なんて出来ねえよ」
『あっ、そうなんですか......』
屈んでアイスを拾い上げ、一口かじる。ひやりとした冷たさと、濃厚な甘みが口の中に広がった。アイスの先には桃のゼリーが入っていて、それがいい食感のアクセントになっている。
「うめえ......でもこれ、棒太すぎね?アイスがちょっとしかねえじゃん」
『ああ、実は......少ない量でも何本も食べた気になれるから、ダイエットにいいかなと思ってそれにしたんです……』
「あーね......」
『十本残っていたので、五本ずつ分け合いましょう。半分こです』
「おお......サンキュー。おにぎりも二個しかなかったんだ、半分こだな!」
『うふふっ......はい』
好感度を稼ぎ、毒見をさせた上で五本のアイスをも得てしまった。俺は自分の賢さに痺れながら、おにぎりとアイスに舌鼓を打った。
四本目のアイスを食べているとき、間違って棒の端を強く噛んでしまう。プラスチックが劣化していたのか、砕けてしまった。......慌てて口の中の破片を吐き出そうとした時、俺は奇妙なことに気付く。
「このプラスチック......うめえ。せんべいみたいな味がする……」
粉のようになったプラスチックを何度も噛むと、香ばしいかおりと、ほのかな甘みが口の中に広がる。腹が減っていた俺は、そのままボリボリと棒を丸ごと食ってしまった。
「チッ......もったいねえ。三本も無駄にしちまった......」
俺はゴミ箱に捨ててしまった今までの棒を惜しく思いながら、五本目のアイスを棒ごとゆっくり味わった。
気付くと外は夜だった。色々なことが起こりすぎたせいか、やけに時間が経つのが早く感じる。
『私、そろそろ眠りますね。......穴、また衣装ケースで塞いでおいていいですか?』
「......え、なんで?」
少しむっとしながら言う。自意識過剰かよ。
『真っ暗でないと寝れないので......』
「......じゃ、俺も明かり消してもう寝るわ。それなら穴塞がなくてもいいだろ?」
『そんな、お気遣いなく......』
「んだよ、穴が塞げねえと困ることでもあんの?」
『いえ......そんなことは』「じゃいいじゃん」
電気を消して横になり、彼女に話しかける。
「なあ、茜はどんな役やってたの?」
『茜......?』
「いいじゃん、名前で呼んでも。おれは光男な」
『私、黒川さんに下の名前をお教えしましたっけ......?』
「え……したんじゃねえの?俺が覚えてるんだし。で、どんな役やってたんだよ」
『通行人のおばさんに、弓使いのエルフに、迷子の子供......とか、でしょうか。頼まれた仕事は、何でもやりました。そこで、爪痕を残せていればよかったんですが......』
「......声優やめて、どうすんの?実家に戻るとか?」
『あ……三年付き合っている彼氏がいるんです。その……彼が同意してくれれば、籍を入れようかな、って……』
「俺急に眠気醒めたわ。明かり付けるから、穴塞いでくんね?」
「え……?あ、はい……」
なんだよ彼氏持ちかよ……優しくして損したぜ。おにぎり返せよ……。
・・・・・・
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