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ガールズクロスライン 第14話(夜) 街角と光の樹
空を仰ぐと、そこには街全体を包み込むように巨大な大樹がそびえていた。
幹は透明に輝き、枝葉には光の魚たちが泳いでいる。まるで夜空そのものが生命を宿したような景色。
見上げる彼女の瞳は、その幻想を映しながら揺れていた。
「ねえ、聞こえる? この樹はね、世界の記憶を歌ってるんだって」
風に混じって、確かに微かな響きが耳に届く。
「朝に繋いだ手も、ここに届いてる気がする。だから境界を越えても、わたしたちは一人じゃない」
光の樹が大地を照らし、都市全体が星座のように瞬く。
夜はただ暗いのではなく、未来を照らす根源の輝きに満ちているのだと、その時知った。
お読みいただきありがとうございます!
第14話は「街の朝」と「幻想の夜の樹」を対にしました。
次回は、さらに扉の先で出会う新しい風景をお届けします。




