【ダンジョン迷宮“16”】4-36
世界中に点在しているという迷宮は、基本的にはそれが発生した国のものとなり、見つかった順番によってそれぞれ“番号”が割り当てられる。
「それで、今回のこれは“16”ってわけ」
「「「「ほー」」」」
次の日の朝、メイの説明に対して他4名が同時に感心の声もらす。
ドラコと自分はもちろんだったが、リーシアさんとルゥも迷宮に関する知識は全くといっていいほどに無かった。
迷宮によってはそれぞれの特徴を冠したあだ名のようなもの付けられることもあったが、この場所に関してはそういうのは無いらしい。
「まぁそれに、4階層で止まってるってことはまだ“攻略”されてないってことだろうし」
“攻略”とは、その迷宮の最下層まで達する者が(公式に)現れた状態のことを言うらしい。
「私もここには潜ったことないわね」
唯一といってもいい迷宮熟練経験者のメイが言う。彼女はこれまでにも各地の迷宮をいくつか入ってみたことがあるとのこと。
「Aランク冒険者指定依頼だったってとこがちょっと気になるわよね、、」
今度はルゥが少し不安げな声でつぶやく。
「それだけに報酬は破格でしたけどねっ」
こっちはリーシアさん。
「ドラコも、気持ちAランク」
…うん、気持ちな、、
「まぁ、十分に気を付けて行こう」
最後にコバヤシがそう言ってから、目的地へと向かって歩き出すのだった。
・・・
今回の迷宮は、その入り口だけ見るとまるで鍾乳洞のような洞窟であった。
メイが言うには、ダンジョン迷宮の入り口やその内部はそれぞれの迷宮ごとによってかなり異なっているのだとか。
そういえば前に行ったところは古びた教会のような場所だったけな、ということをコバヤシは思い出す。
「たっんけん、たっんけん」
・・・。
「…ドラコ、あまり離れすぎるなよ、、」
大丈夫だろうとは思いつつもコバヤシは一応、目の前をてとてと歩いていく少女に警告しておく。
洞窟のような狭い入り口を抜けると、中は想像もできないような広い空間が広がっていた。
前回の場所もそうだったが、これはダンジョン迷宮の特徴なのだろうか、、
また前回の場所とは異なり、洞窟の壁には所々にあの“光る石”がぽつぽつと配置されていた。
配置的にはいかにも人工的な感じがするが、、
コバヤシはそれらを確認しながら思う。いずれにしろ、リーシアさんがこの暗い場所で困るという事態にはならなそうである。
下の階層がどうなっているかはわからないが、、
松明なども持ってきてはいるが、使わないで済むならそれに越したことはない。
「へぇー、思ったより広いのねぇ、、」
後ろでルゥがどこか気の抜ける声を出す。
「なんか、思ってたよりも、その、少し、きれいな場所ですね、、」
リーシアさんは少し緊張しているようだ。
「今のところ、近くには魔物とか居ないみたいです」
彼女を安心させようとコバヤシはそう口にする。マップには“敵”を示す赤い点が示されていない。一番近いものでもまだずいぶんと遠い場所にあることがわかる。
「それじゃあぼちぼち進んでいきますかっ」
「たっんけん、たっんけん」
…キミはもう少し緊張感を持とうか、、
一行は、進む。
・・・
・ダンジョンワーム
・Lv 16
・脅威度 弱
撃破。
・スティックスライム
・Lv 20
・脅威度 弱
撃破。
・ロックナイト
・Lv 23
・脅威度 弱
…撃破、、
いやいや、確かこれって『Aランク冒険者指定依頼』だったはずだよな、、
ここまで、、他にも魔物がいくつかこちらに襲ってきはしたが、そのすべてに対しコバヤシが参加するまでもなく、またドラコが身体を変化させるまでもなく瞬く間に撃退していく。
個人個人の能力が高いのは言うまでもなく、この四人、いつのまにかここまで協調して戦闘ができるようになったんだと、コバヤシは考えずにはいられない。それほど彼女たちのチームプレイには目を見張るものがあった。
主にドラコとルゥが前衛、メイが中衛、そしてそのすぐ後ろにリーシアと続く。ルゥが戦うところを見るのはコバヤシにとっては初めてとなる。
というか、“これ”って、、空手、、か?
彼女の戦っている姿を見てコバヤシは考える。
コバヤシは格闘技に対しての知識などは皆無であったが、ルゥの“それ”は確かにコバヤシにとっても見覚えのある構えだった。
「はっ!!」
魔物と戦っているルゥの両手には分厚いグローブのようなものがはめられている。
相変わらずのロングスカートのような服装は、実のところ“チャイナドレス”のような作りになっているらしく、スリットがあるために激しい動きでも大丈夫のようだ。
それにしてもこのチームは本当に頼りになるな、、
自作の短弓を構えてリーシアと共に後衛をこなしながらコバヤシは考える。今回もリーシアは味方達への補助担当だったが、前回とは違い短い木製の杖のようなものを持参している。先には不思議な輝きを放つ石(宝石?)が備わっていた。
「 」
彼女の唱える魔法は、やはりコバヤシに聞き取ることができなかったが、“ステータス”の変化によって魔法の効果を知ることはできた。彼女は自身にも補助魔法をかけることによって暗闇の中でもある程度の視覚を得ることができているとのこと。
ドラコはひたすら黙々と魔物たちをべしべしと叩いていっている。こちらも全く心配することはなさそうだな、、
そしてチーム全体のサポートと支持を出しているのが、中衛で弓を構えるメイである。
「左奥から三体来てる、右側は私がやるわ! リーシアは補助を待機しておいて、アキラはリーシアのサポート」
的確で素早い指示出しと、メンバー全員の能力等の把握(コバヤシ除く)、さすがはAランク冒険者だなぁとしみじみ思っているうちにさくさくと迷宮探索は進んでいくのだった、、
・・・
「アキラさん、すみません、、私のサポートばっかりで、、」
だいぶ迷宮を進んだあたりでリーシアがそう告げてくる。
「大丈夫ですよ。実際、俺も最初から後衛で行くつもりでしたから」
このチーム、それぞれの役割が意外としっかりバランスよく分かれている。
ドラコ(前衛のみ)、ルゥ(おそらく前衛のみ)、メイ(中衛、後衛?)、リーシア(後衛、中衛?)、コバヤシ(おそらく前中後衛)
ドラコも“あの炎”を使いこなせるようになれば前中後衛こなせるようになるかもしれない。
それにしてもここまでかなりの余裕を持って進めたことは喜ぶべきだろうなとコバヤシは考えながら仲間たちを見回す。
「なんだかけっこー大したことないわねー」
両手に装着しているグローブをはたきながらルゥが言う。
「おったから、おったから」
こちらも気の抜けた声である、、
「まぁ探索が終わっているところまではCランク冒険者でも行けてたとこらしいしね」
そうだったのか、、
メイの言葉に納得するコバヤシである。
「問題は、、」
そう言ってから彼女は前を見つめる。
「ここから先、、ということですね、、」
メイの言わんとすることを、リーシアが引き継ぐ。
一行の前には、薄暗い洞窟のようなこの迷宮の前に突如として現れた巨大な扉がたたずんでいる。
真っ白なその巨大な扉には細かい紋様や細工がいくつも施されており、この洞窟の中で明らかにそれだけが異様な雰囲気を醸し出している。“場違いな”という表現がしっくりくる。
「これが、ギルドの言っていた“扉”だろうね」
コバヤシは目の前の扉を見上げながらつぶやく。マップを見る限り、この扉の中へと突入しないことには進めなそうだ。
ここから先に進んだ冒険者たちは誰も帰って来ていないのだという。つまり、ここから先が本当の『Aランク冒険者指定依頼』ということなのだろう、、
そこでこの扉自体がうっすらと発光していることに気が付く。コバヤシが手を触れるとその輝きはさらに強くなり、鈍い音を立てて自動的に開き始める。
「それじゃ、気を付けて行こうか」
扉の先には、これまでと打って変わり光が溢れていた。




