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【迷宮ピクニック 1】4-34

 馬車が完成したからちょっと見てほしいんだとコバヤシから言われ、ザッチョは彼ら(コバヤシ達)が現在宿泊しているという宿へと向かった。ザッチョが彼らから仕事の依頼を受けて3日目のことである。


いくらなんでもこんなに早くあの馬車が完成するとは思えないんじゃが、、

彼はそう思えずにはいられなかったが、とりあえずコバヤシが指定した場所へと向かうことにする。


「ひげもじゃ~」

宿屋が見えてきた辺りでこちらを呼ぶ少女の声が聞こえる。こんな呼び方をしてくる人間は一人しか心当たりがない。

「おおぅ、嬢ちゃん元気かぁ?」

「ドラコ、ぱわふりぃ」

妙な雰囲気を持っているその美少女は、相変わらず無表情だったが発する言葉はなかなか的を得ない。というより不思議な言葉をよく使ってくる。

「ザッチョ、おはよう」

ドラコというその少女の隣には、彼女との関係性はわからなかったがとりあえずは保護者のような立場であろうと考えられるコバヤシが立っていた。

彼にも挨拶を返そうとしたところで、そのすぐ後ろにある“それ”に気が付く。


「こいつぁ、、たまげたぁ、、」


・・・


それからすぐあと、コバヤシ達一行は馬車に乗りメリエの街を出ていた。もちろん制作完了したあの馬車に乗って、である。

「いやーそれにしてもほんとにこの馬車いいじゃない!」

後ろでくつろいでいるルゥがつぶやく。そこには5人ぐらいなら入るスペースがある。そして現在御者をしているコバヤシとメイ、そしてコバヤシの隣にはドラコがちょこんと座っていた。

「しん、こばやじぇっとぉ」

…真(または新?)コバヤジェットという意味だろうか、、

「それにしても本当に全く揺れませんねっ」

ルゥと一緒に後ろでくつろいでいるリーシアがそう続ける。

「こんなに早いのにね、、」

今度はコバヤシの隣でメイがつぶやく。


そう、その二つこそがこの馬車の大きな特徴でもあった(他にも色々とありはするが)

この馬車には、ザッチョとコバヤシがそのスキルの全てをつぎ込んで作ったオリジナルなものであり、恐らくはこれまでに乗ったどんなものよりも高性能であるという自信が二人には、ザッチョとコバヤシにはあった。

まぁこの短期間で完成させたことに関してはザッチョも驚いていたが、、

しかし早いとこ完成させたかったという欲の方を優先したコバヤシであった。

ただでさえマイホームの方は時間がかかりそうだからな、、


「ザッチョと二人で色々工夫したんだよ」

みんなにそう説明すると、隣でメイがこちらをちらりと見てくる。

「色々、ね」

なぜか居心地悪くなってしまうコバヤシであったが、ぱっと見ではこの馬車の構造を隅から隅まで理解することはあのザッチョでも難しいはずなので、メイにはわからないはずである、、たぶん、、

「それにしても静かよねえ、この馬車、ふあぁ、」

「こんな素敵な馬車は初めて乗りましたっ」

ホントすごいです、とテンション高めなリーシアさんに対してルゥは眠気を催している。

このメンバーでは今のところ御者を出来るのが自分とメイだけだったので、二人にはとりあえず後ろでくつろいでもらっているのだった。ちなみに隣に居るドラコは「ドラコ、前」の一言により、本来ならば二人までの御者席に無理やり割り込んでいる。


「でもほんとに、この馬車なら目的地までかなり早く着くんじゃない?」

メイが微笑みながらこちらに向かってそう尋ねてくる。

現在、この一行はとある迷宮(ダンジョン)へと向かっていた。ギルドで見つけた割(・)の(・)い(・)い(・)依(・)頼(・)であり、そしてこの馬車の試運転も兼ねてである。

「この馬車を使えば野営もだいぶ楽になるんじゃないっ?」

すると急に眠気が去ったのか、ルゥが食い気味に前へと乗り出して尋ねてくる。

「そうだね」

それに、今回こそはアイテムボックスの中身をフル活用させてもらう、、

コバヤシは前回買った野営用のグッズを今回こそ試してみようと強く心に決めていた。


・・・


「それで、結局“あの屋敷”の改築?はどうなりそうなの?」

「ん? あぁ、あっちは結局メリエに居る職人たちとの協働でやってくれるみたいだね」

どうもザッチョは『その道』では有名なドワーフらしいよとコバヤシが言うと、メイは「ふんっ」と不満そうに鼻を鳴らすのだった。相変わらずである。

「楽しみですよねっ」

後ろでリーシアさんがそう言うのが聞こえた。ルゥはといえばその隣で大の字になって寝ている。こいつ、、


「…それはそうと、ほんとにこの馬たちってもらってよかったんですか?」

コバヤシは彼女の方を少し振り返りながら尋ねる。

「あ、えぇ、本当ならこのまま処分されてしまう子たちでしたので、、」

「え? この子達ってリーシアの馬だったの?」

少し驚いたようにメイが声を上げる。

「正確にはリーシアさんのお父さんのだね」

「昔は馬車も引かせることがあったみたいですが、、」

もうずいぶんと昔のことらしいですと、彼女は言う。

「これはもうリーシア父に頭上がらないわねえ」

メイが悪戯っぽくつぶやくが、本当にそのとおりであるとコバヤシは心の底から思う。

今度何かお土産を買っていくことにしよう、、


「メリエから馬車で四日ほどって言っていましたっけ」

目的地までの距離だろう。リーシアがふと尋ねてくる。

「そうですね。でも、たぶんそれより早く着くと思いますよ」

まだ確信というほどではなかったが、この馬車の性能は明らかに他のものを凌駕していると思われた。

もちろん馬車を引く馬の能力にも左右されるには違いなかったが、この年老いた馬たちでこのスピードとなれば少しは希望的観測が持てるなと、コバヤシは一人考える。

他の冒険者たちから不審な目で見られるのを避けるために、馬車の見た目は他の馬車などと比べてそこまでの違いが見られないように出来ている。


「迷宮ねぇ、、正直あまり良い思い出はないけど、、はぁ、、」

隣でそう呟くメイの声を聞きながら、そういえば彼女と出会ったのは迷宮だったかと思い出す。

現在向かっている迷宮はそこではなく、発見されてからすでに結構経っているというものであった。

「この迷宮には行ったことないのかい?」

コバヤシはふと気になりメイにそう尋ねると、彼女は、

「まぁ、ここは無いわね、、」

とだけ返す。その口ぶりからだと、どうも他の迷宮にはいくつか行ったことがあるのだろうか。

「私は初めてですよっ」

少しドキドキしますねと、リーシアがこちらに対していうのが聞こえた。

「このメンツなら、たぶん大したことないわよ」

だから安心してリーシアと、メイが彼女に微笑みかける。言いたいことを先に言われてしまった、、

それにしても爆睡しているルゥはともかく、ドラコが静かすぎるなと思っていたら、隣の少女はいつのまにかこちらに体重を許して夢の中であった。


危ないから後ろに寝かせといてあげよう、、

すやすやと眠るドラコの顔を見て、そう考えるコバヤシであった。


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