【My馬車でgo 1】4-32
馬車を組み立てる際に必要な木材のほとんどを、コバヤシが一人で、しかもたった一日で用意してきてしまったことに、ザッチョは驚きを通り越して呆れているようであった。
「おまぁさんぁいったいどぉんあ魔法つかったんじゃぁ?」
コバヤシとザッチョの二人は今日もお化け屋敷にて密会を重ねていた。
「いや、これはたまたま知り合いの商人からちょうどよく安く手に入れることが出来たんだよ」
さすがにこれは厳しいかとも思ったが、ザッチョは目の前に積まれた木材の山を目にして呆けている。
お化け屋敷の庭に積まれた木材の山々は、言うまでもなくコバヤシが自身でこっそりと確保したものである。昨日の夜に街から遠く離れた山の木々を“多少”拝借したものである。少しばかり骨が折れたが、伐採中に手に入れたいくつかのスキルによるサポートとアイテムボックスのおかげで、コバヤシが想像していたよりもとんとん拍子に仕事は進んでいったのだった。
「ザッチョ、悪いんだけど先に馬車の設計から頼めるかな」
「んぁ、あぁ、そいつぁ構わねんけんど、、」
いまだ目の前に山積みの木材から目を放さずにザッチョが応える。
「俺はちょっとギルドに行かなきゃならないから」
コバヤシはそれだけ言うとその場を後にする。
そう、マイホーム建設費用によってほぼ全ての財を尽くした今の彼には、もはや今日の昼ごはん代すらも心配になるレベルの金欠なのであった。
さすがに今日はなんとしても稼いでおかなければ、、
なにか割りのいい依頼があればいいんだがと思いながらも彼はその足をギルドへと向ける。女性陣は一足先にそちらへと向かっていた。
いずれは商売でもしてお金を得る手段を考えてみるか、、
・・・
次の日の朝、コバヤシはなんだかんだで再びザッチョの元を訪れていた。
さすがにまだ馬車の設計は終わっていないだろうとは思っていたが、どうにも居ても立ってもいられずに来てみたのである。
おかげで昨日の依頼では集中力を欠き、みんなから少し心配されるありさまであった。。
「おおぅ!」
こちらの姿を確認すると、ザッチョはいつものように声を張り上げてこちらに挨拶を向ける。
そんな彼にコバヤシは手を上げて応える。
「馬車の設計図なぁもうかけっとぞぉ」
・・・なんと、、
「…早いな、、来た甲斐があったよ」
ありがとうと、コバヤシは思わず笑顔になる。
「まぁ簡単なもんやから、あとぁおまさんが自由にいじってくれい」
彼はそう言うとこちらにくしゃくしゃの紙を渡してくる。やはりこちらの世界ではこのくしゃくしゃな紙が基本なのだろう。
コバヤシはそんなことを考えながらもその紙を受け取る。その紙には実に細かくも分かりやすく馬車の設計図が描かれていた。
普段の彼の言動や態度などからでは考えられないような細かいその設計図に、コバヤシは思わず感嘆の声を上げる。
「…すごいね、、」
それから再びザッチョに対して礼を述べると、コバヤシはさっそくその設計図を詳しく読み込むために宿屋へときびすをかえすことにするのだった。
・・・
「だーあーりーんー」
「…ん」
宿へと戻り、一人で先ほどもらった設計図を眺めているとルゥが声を掛けてくる。
「それなぁに?」
すすすとこちらへ近づきながら彼女が尋ねてくる。
「これは、馬車の設計図、だな」
コバヤシはそんな彼女の方へは目を向けずに応える。他の女性陣はまだ起きていないのだろうかとふとマップを確認してみると、どうもメイ達はまだ自分たちの部屋に居るようであった。ルゥだけがコバヤシの居るこの食堂の方へ来たようである。
「ばしゃ?」
ルゥはきょとんとした顔でそう言う。そうするとずいぶん幼い印象にも見えるが、相変わらず彼女からはどこか“艶かしい”魅力のようなものを感じる。
こいつ、サキュバスとしての能力とか使ってないだろうな、、
「…自分で作ってしまったほうが安上がりってことに気が付いてね」
もうコバヤジェットはあまりやりたくないしなという思いは胸に秘めておく事にする。
「はー、、」
彼女は感心しているのか呆れているのかそれともなにも考えてないのか分からないような返事をかえす。
「だから、俺はとりあえずこれの作業を今日はすることにするよ」
そう言ってからコバヤシはようやく彼女の方を見る。今日も彼女はなるべく自分の素肌を見せないようなスタイルのゆったりとしたロングワンピースであった。フードのようなもの被っているが、コバヤシからはそのフードの奥にある瞳がきらきらと輝いているのが分かる。
「じゃあ私もそうしようかなっ」
こちらへと実に魅力的な笑顔を向けながら彼女が言う。
「…まぁ、好きにしたらいいんじゃないか、、」
何故か少し気恥ずかしくなって彼女から目を逸らしてしまう。このサキュバスは時々こういった破壊力のある笑顔をむけてくるのである。
・・・うちの女性陣は、みんな戦闘力が高い気がしてならない、、いろんな意味で、、
少しため息をつきながら、コバヤシは再び設計図へと向かい合うのだった。




