『女子会』
コバヤシとザッチョの打ち合わせ、というよりもはや作業は、まだずいぶんとかかるみたいであったので、女性陣たちはギルドを出て一度休憩がてらどこかで軽く食事でも食べようという事になった。
リーシアは、自分が先ほど見つけたお店へとみんなを案内する。ドラコはこの提案を聞いた瞬間から必死によだれを押さえこんでいた。
「良いわねっ、この店!」
お店の前で、そしてお店に入ってから、そしてそしてお店の中にあるテーブル席へと着いてからの計三回、リーシアの前に腰かけたルゥがそう叫ぶ。どうやらよっぽど気に入ったみたいだと、こちらも嬉しくなる。
「じゅるん!」
すると隣に座っているドラコがそう言って(?)頷く。
「こんなお店あったかしら」
そしてメイはお店の内部を落ち着いた様子でぐるりと見渡しながら呟く。しかしそんな彼女の目が一番きらきらと輝いていた。リーシアはメイの、こういったわかりやすいところがとても可愛らしくて好きだなと思うのだった。
「ふふっ」
思わず笑みをこぼしてしまう。そんなこちらの視線に気づいてか、メイが頬をぷくぅっと膨らませて「なによぉリーシアー」と言ってくる。
「ふふっ、なんでもないですよっ」
その仕草もまた可愛らしいエルフの仕草であるように自分には感じられてならない。といってもリーシアはメイ以外のエルフとはほとんど話した事も会ったこともなかったが。
このお店で取り扱っている食事は、どうやら甘味系統のみというずいぶんと変わった場所のようであった。少なくとも自分はこういったお店を見たことが無いと、リーシアもメイのように店内を見回しながら思う。
「こんな“カフェ”が出来たなんて、嬉しいわっ」
するとルゥがそんなことを言う。彼女はどうやらこういったお店を知っているかのようである。
“かふぇ”とはいったいなんなのだろうか、、
「さーてと、何を頼もうかしら」
テーブルに置かれているメニューをドラコとルゥの二人は凝視している。この二人は外見や年齢こそ違えど、どことなく似通ったものを感じさせる。そしてそれはコバヤシやあのセイドウにも同じものがあるようにリーシアは考えていた。
「う~ん、、、」
ルゥが持つメニューを覗き込みながらメイが唸っている。どうやら彼女も彼女で真剣に何を頼むか迷っているようだ。
「ドラコ、これ!」
隣に座っている少女が、どうにかよだれを引っ込ませ、そしてメニューの一つを指差しながら告げる。しかし、、
「それ、飲み物だけど本当に良いの?」
リーシアがそう尋ねるとドラコはものすごい勢いでこちらを振り向く。その大きな目をさらに大きくさせ、驚いて声も出ないといった表情である。
「…ドラコ、たぶん文字読めない、、」
赤い髪をたらしながら少女は下を向いてそう告げる。
「じゃあ、私が教えてあげるね」
そんなドラコを見かねて思わずそんなことを言う。それにしても“たぶん”とはどういう意味だろう、、
目の前でその瞳をきらきらとさせ始めたドラコに微笑みかけながら、彼女はその意味を図りかねるのだった。
・・・
「それにしてもあれよ、、アキラは突然すぎるのよ。色々と」
各自がそれぞれ注文を終えてから唐突に、メイがそのようにして話し始める。
「まぁそれもダーリンの素敵なところでもあるわよね」
そう言ってどこかうっとりとした顔になっているのはルゥである。
「コバヤシ、優しい」
ドラコはどこか少しずれたことを言いながら、グラスに注がれた水をこくこくと飲んでいる。ここで使われているグラス類はどれも珍しい種類みたいだとリーシアはそこで気がつく。
「ぜんっぜん何も話してくれないし、、鈍感だし、、」
「でも、ちゃんと色々考えてくれているのよねぇ」
「……まぁ」
二人はまだアキラさんのことを話しているみたいであった。リーシアはふと彼の、あの鋭い目つき(人によっては恐ろしくもあるのかもしれない)を頭の中で思い描く。
「あんた、ほんとにアキラの事大好きなのね、、」
リーシアはびくっとするも、メイのその言葉はどうやらこちらではなくルゥへと向けられたものであったようだ。自分の顔が熱くなっていることに気がつき、リーシアは手で顔をぱたぱたと扇ぐ。
「ドラコもっ、こばやしらぶぅ」
少女が急に手を上げてメイに主張し始める。しかし相変わらずいまいち要領を得ない言葉なのは、もはやこの子の特性ともいえる。
「そうよねー、ドラコー」
しかしルゥにはドラコの言わんとすることがよく分かっているようで、こういった光景を見かけることはしばしばあるのだった。
「リーシアも、コバヤシ好きー」
そこでドラコからいきなり矛先をこちらに向けられて動揺してしまいそうになる。
「え!? そりゃ、その、素敵な人だな、とは、最近思ってたりは、、して、、その、、うぅ、、」
自分の顔が更に熱くなっていくのがわかる。
「ちょっと、リーシアをいじめるのはやめなさいドラコ」
するとメイが助け舟を出してくれる。
「そうよドラコ」
意外にもルゥもそう言ってくれる。
「リーシアがアキラさん好き好きなのは分かりきっているじゃないの」
彼女はそう言ってこちらにぺろりと舌を出す。自分の顔から火が出るのではないかと、いやすでに出ているのではないかと思うほどに顔が熱くなっていくのがわかった。
「うぅ、、」
しかし何も言い返せずに彼女は両手で顔を覆うようにして隠す。
「ここにいるみんなはあの人のことだーい好きだもんねー」
今度はメイの方を向きながら悪戯っぽく微笑んでいるルゥである。
「ハーレムー」
ドラコは相変わらずよくわからない単語を発している。
「わ、私は別にアキラのことなんか、、」
メイの耳があっという間に真っ赤になっていく。きっと自分の顔もあんな色になっているのかもしれないとリーシアは考えてしまう。
「メイ、ツンデレー」
ドラコが再び不思議な単語を続ける。つんでれ?
「皆さんお待たせいたしました」
しかしここで一同の会話が止まる。隣でドラコのよだれが再び流れ始めるのをリーシアは見た。思わずうっとりとするような、見るだけで暴力的な甘さが想像できるようなお菓子類が目の前のテーブルへと並べられる。
「すごいですね、、」
「おいしそー!」
「…ごくり、、」
各々がそれらを見て一様に感想を述べる。ドラコはすでに食べ始めようとしていた。
「あんまーいぃ!!」
いや、すでに食べ始めていた。




