【plan & build 2】4-30
次の日の昼頃、コバヤシ達一行は再びあの“お化け屋敷”へと向かう。
しかしそこへ到着してみると、ザッチョがすでにこの建物の確認を行っていたみたいであった。どうもこのドワーフ,仕事をする時としていない時とでかなり印象が変わってくる。
「おおぅ!」
お化け屋敷をじっくりと観察していた彼はこちらに気がついたらしく、再び大きな声で挨拶をしてくる。
「おっす」
それに対し各々挨拶を返す。赤毛のドンゴン少女は戦闘民族のような挨拶である。
「おはようございます」
どうも彼は朝早くからこの建物と敷地などの確認を行っていたとのこと。まだ報酬の件なども話していないにも関わらずそこまでしてくれているとは、、
職人の性とでもいうものだろうかとコバヤシは半ば冗談交じりに考えるも、少し申し訳なく思ってしまう。
「それじゃあ、俺はザッチョとこの仕事についてこれからちょっと打ち合わせするから、みんなは自由にしてていいよ」
コバヤシはみんなにそう言い残すと、早速ザッチョと二人で“マイホーム計画”について話し合い始める。ついでに馬車作りについても彼に相談してみよう、、
「ちょっとちょっとダーリン!」
そんなことなどをコバヤシが色々考えめぐらせていると、ルゥがその思考に割って入ってくる。
「この家って私達も住めるんでしょ!? それなら私も設計に参加したいわ!」
…。
そう、確かにコバヤシはこのお化け屋敷を改装した後は、みんなでここをシェアしようと考えていた。
この世界に“シェアハウス”の概念があるのかは分からなかったが、少なくとも彼はこれを試みようと考えており、昨日の時点で仲間達にはその旨を伝えていた。
せっかくのこんな広い家、というより敷地なんだからな、、
「まぁ、別に良いけど、、」
ルゥの方を見てコバヤシがそう応えると、どうやら他のメンバーもみんな打ち合わせに参加するようであった。
「やったー!」
「よろしくお願いしますっ」
「ドラコも会議るる」
「ドワーフの実力見せてもらおうじゃないの」
…不安だ、、
・・・
打ち合わせの初めに、まずコバヤシは予算を提示する。
予算といっても、この世界で彼が現在所持しているお金の総額であった。果たしてこれで家を造れるのかどうかは定かではなかったが、最悪どこかからお金を借りるという手段ももちろん考慮はしていた。
「ふーむ、、、」
ザッチョはその額を見て真剣な表情になる。しかしすぐその後で
「がっはっはっは! 兄ちゃん! これじゃ犬小屋ぐれしか造れんぞぉ」
彼は爆笑しながらそう告げてくる。…犬小屋、、
しかしどうするか、、
「あ、あの、、私も多くはないのですがいくらかなら、、」
「私もそれなりに出せるわよ」
「ついに私のへそくりが火を吹くわねっ!」
「ドラコも!」
コバヤシが考えていると、しかしすぐに彼女達が各々援護射撃をしてくれる。ドラコがなにやら綺麗な石ころをおもむろに差し出してくるのには気がつかなかったことにしよう、うん。
「みんな、、」
彼は心の底から自分の仲間たちにお礼を述べる。
そして全員分のお金を合わせてから、今度はそれをあらためてザッチョへと再提示する。その額は(おそらく)かなりのものであったとコバヤシは思ったのだったが、それでも目の前の職人ドワーフは厳しそうな顔をしていた。
「うーむ、、正直これでもまだぁかなり厳しいが、、」
彼はそう言ってからちらりとこちらを伺う。
「…いや、こぃもなんかの縁だぁ」
後は任せときなぁと、彼は大きな声で言うと自分の胸を強く叩く。どうやら仕事を引き受けてくれるようであった。
ようやく家を建てることが出来るという喜びが大きかったがしかし、再びの(ほとんど)無一文に戻ってしまった悲しさもまた大きい。
またぼちぼち依頼でもこなしていかないとな、、
コバヤシはザッチョにお礼を言ってから少しのため息をもらす。それからは更に詳しい事を打ち合わせるため、再びこのお化け屋敷の中へと足を踏み入れていくのだった。
・・・
ザッチョが考えていたのは、この家の“基盤”以外は全て取り除いてしまい、そこからその上に全く新しい家を建てるというものであった。
彼曰く、この屋敷の土台とも言える部分以外は、腐食などによって使えない部分が多いために全て取っ払ってしまうべきだとのこと。しかし土台の部分だけはなかなかに優れたものらしく、彼としてはこのまま使った方が良いものになるのだとか。
コバヤシ達一同は建築に関する技術など皆無だったので、基本的にはザッチョお任せコースを選ぶ事にするのだった(メイだけはかなり文句を言っていたが)
「そんじあまぁ、後は間取りとかだなぁ」
ザッチョは真剣な表情でこちらを見る。口調は相変わらずだったが、その眼差しは間違いなく職人のそれである。
それにしても間取りの話になった瞬間、ルゥがばんばんと口を挟んでくる「まず私とダーリンの寝室は―」
そしてメイや、なんとリーシアさんまでもがおずおずと意見を出し始める始末であった。ちなみにドラコはもう飽きたのかこの屋敷内をぶらぶらと冒険しに出かけている。
「ドラコ、あんまり遠くには行くなよ」
そんな少女にコバヤシは一応声をかけておくと、ドラコは少し遠くからこちらを振り向いて、こくりとうなずく。
「んじゃあちょいとおまんらの意見をまとめさせてもらぁな」
女性陣から怒涛の勢いで迫られていたザッチョは、頭をかきながらもそう告げる。
というか、まだ俺の希望は伝えていないんだが、、
コバヤシはとりあえず後で自分の意見もちゃんと伝えておこうと思いつつ、ドワーフの話に引き続き耳を傾けるのだった。




