【plan & build 1】4-29
彼のことを知らないリーシアとルゥに、このひげもじゃドワーフのことをざっと説明する。
「ザッチョさんですね、よろしくお願いしますっ」
「ドワーフって初めて見るのよね、よろしくお願いするわ」
二人はそれぞれものめずらしい顔で彼のことを観察している。ドワーフが珍しいのか、この異常な量の体毛が珍しいのかは定かではなかったが。
どうも彼はこの街の“再建作業”を手伝いに来ていたとのことであった。
「人里なんてほんにひさびさぁでなぁ」
再びがははと笑いながら彼はそう言う。それにしてもどうやってこの街についての情報を得たのだろうかとコバヤシは不思議に思うのだったが、しかしそこでコバヤシはふとあることをひらめく。
「あの、ザッチョさん、、作業はまだしばらく続くのですか?」
「んぁ? いやぁ、そいがもうとっくにおわっちまったでぁ」
他にも何かやれる事がないかと街をぶらぶらしていたとのことであった。
「…もしよかったならなんですが、一つ仕事を頼まれてはくれないでしょうか」
コバヤシはそんなことを言って、目の前の腕利きドワーフを見つめる。
・・・
「ほんと、、何もあいつに頼まなくても良かったんじゃないの、、」
あの“お化け屋敷”から宿へと帰っている道中に、メイが少し拗ねたような顔をしながらそんなことを言う。
まぁ確かに腕は良いんだろうけどさぁと、彼女は頬を膨らませる。メイとしてはどこか納得できない事のようであった。
コバヤシはザッチョに「自宅の建設作業」を依頼したのだった。そう、あのお化け屋敷をどうするかも含めて彼に一つ頼んでみようと思い立ったのである。
「メイだって鉱山の中にあった彼のあの居住スペースは見ただろう?」
そう言うとメイは「まぁ、、そうだけどぉ、、」と言葉を濁らせる。やはりまだドワーフの事が少し苦手なのだろうか、、
ザッチョとは明日の昼にまたあの場所で(お化け屋敷で)待ち合わせをすることになった。そこで詳しく打ち合わせる予定である。
それにしても二つ返事でオーケーをもらえるとは、、
彼は相変わらずあのテンションで快く仕事を引き受けてくれたのであった(「おおぅ! そいつぁ腕がなるぅぜぁ!」)
それにあれだけの敷地面積があるのなら、もしかしたら自分が考えているプランがいくつか実現可能かもしれないと、コバヤシは少し心を躍らせる。
「まぁどちらにしろ明日また彼と話して色々と決めていこうと思う」
メイに言い聞かせるようにしてコバヤシはそう告げる。
「せっかく久しぶりのメリエなんだし、今日は夜もみんなでどこかに食べに行こうか」
まだ日は暮れていなかったが、とりあえず今後の予定について少し考えながら話す。
すると真っ先に赤毛の少女が「ドラコ、お肉!」と告げてくるのでコバヤシは思わず笑ってしまう。
あんなにパンをたくさん食べたにもかかわらずこの子はすでに戦闘体勢(お腹の)が整っているようであった。
リーシアとルゥの二人も大賛成らしく、揃って賛同の声をあげる。どうやらメイもザッチョの件はあきらめたのか、それ以上は何も言わずにただ頬を膨らませているだけであった。
コバヤシとリーシアにとっては少し久しぶりとなるこの宿『おりえんと』へと帰ってくると、これまた少し懐かしく感じる女性が迎えてくれる。
「あ、二人とも~、おかえり~」
この宿屋の娘、レミである(そういえば彼女のフルネームは何と言うのだったか、、)
メリエ居残り組はみんなで一部屋を使っていたようで、コバヤシはどうしようかと少し迷う。やはりマイホームの建造を急がねばならないなと強く感じるのであった。
「アキラとリーシアも一緒なら、もう一つ大きい部屋にしましょうか」
そんなコバヤシの悩みをよそに、メイは淡々とした様子で部屋の変更をレミへと伝える。どうやら自分だけ別部屋という選択肢はないようである。
「みんないっしょ」
ドラコがコバヤシの手を握りながらこちらを見上げて言う。
今のところ手持ちのお金は有り余るほどあるにはあるが、果たしてマイホームを造るのにいくらぐらいかかるだろうかとコバヤシは少しばかり想像してみる。この世界の物価に関してはいまだそこまで詳しいとは言えない。
家を造るのに必要な材料や人員、そして経費など諸々は明日ザッチョに詳しく聞いてみることにしよう、、
「それじゃ、新しい部屋に荷物を置いて少し休んだら、外へ食べに行こうか」
コバヤシはみんなにそう告げる。
・・・
みんなが部屋で休んでいる内にと、コバヤシは宿の外へこっそりと一人出る。外ではそろそろ日が暮れかかる頃合いであった。
“call”
彼は久しぶりにその機能を利用する。
ちゃーんちゃんちゃんちゃーんちゃん、ちゃーんちゃんちゃんちゃーんちゃん、ちゃーんちゃんちゃんちゃーんちゃん、、、
何やら陽気な音楽が頭の中で再生され始める。学園が天国にでもなりそうな音楽であった。
ガチャ、
『はい、こちら異世界サポートでございます』
聞こえてきたのは若い女の人の声であった。どこかで聞いたことがあるような気もする。
コバヤシは、いくつか聞きたいことを尋ねようと思い、まずはどれから聞こうか考える。すると、
『分かってますよ、コバヤシ様が気になっていることは、、』
…ん?
『気になりますよね、やっぱり、、』
女性の声にはどこか興奮したものが感じられるのは気のせいだろうか、気のせいであって欲しい(残念な事に気のせいではなかった)
ひどく嫌な予感が彼の頭をよぎる。
『あ、あ、ああの、お、おじいさんに攻められる若きイケメン勇者とか、、ぶ、ぶはっ』
がちゃ
コバヤシは静かに通話を終了する。
切る直前に『ゼル×タケ、、ぶふぅ』というよくわからない単語が聞こえた気もしたが彼は即座にそのことを忘れて気持ちを切り替える。
というか、ホントこの機能って役に立たないんだよな、、
また今度気が向いたときにでも試してみるかと、コバヤシは悪態をつきつつも宿の中へと戻る事にするのだった。
…はぁ、、




