【再会の髭 ~マイホームへの道~ 】4-28
実は、ウチの父方の祖父が生前住んでいた家がこの街の東地区にあって、ここからは少し離れた場所になるのですが、、整備など特にしていなかったのと、もともとが古い建物だったというのもあって、かなり、その、、オンボロにはなるのですが、、それでもかなりの大きさだったと思うので、候補場所としてどうでしょうか
「今はもう誰も住んでいないですし、なんなら建物を壊してしまっても構わないと思うので」
リーシアはそう言ってからコバヤシの方をのぞき見る。彼女の口元にはいつもの柔らかな笑みが戻っていた。
「…それは、大変嬉しい話ですけど、、」
でも本当に良いんでしょうかとコバヤシは尋ねる。
「ええ、誰かが使ってくれれば良いなと前から父も言っていたので」
彼女はこちらに微笑みながらそう告げる。
これは思いがけない幸運だぞとコバヤシは少し心を躍らせる。リーシアは後で父に事情を説明しに行くということだったので、どうせならと全員で向かう事にする一同であった。うとうととしているドラコを抱っこしてリーシア父の元へと向かうことにする。
・・・
リーシア父はこの大所帯に動揺してか、それとも娘の説得にはとことん弱いのか、コバヤシ達はすぐに彼の承諾を得る事に成功する。しかし「く、、娘はまだ嫁には、、」などとぼやいていたところを見るとどうも彼は何かを勘違いしている気がしてならない。
「…これで私達の愛の巣ゲットってわけね、ダーリン!」
「楽しみねー、どんな家なのかしら」
「あの、、あんまり期待しないで下さいね、ホントに古い建物ですから、、」
「ドラコ、はうす」
みんな思い思いに好きな事を口走りながらも、今度は一行でその家へと向かう事にする。コバヤシもコバヤシで、思わぬ掘り出し物が幸運にも手に入り、マイホームへの道のりがだいぶ短縮された事に喜びを隠せないのであった。
その家は『焼きたてパン ~ クウォーツ ~ 』からだと、徒歩で体感30分かからない程度の場所に位置しており、コバヤシにとってはメリエの中でもあまり来たことの無い地域であった。
辺りは静かな住宅街(?)が広がっているが、所々使われていないような家も多く立ち並んでいるように見えた。人通りはあまり多くなく、夜は治安が少しばかり心配にも思えたが、この面子ならあまり心配することもないかとコバヤシは考える。
「あ、あれですっ」
見えてきた“それ”は確かにとても大きな建物であった。屋敷とまでは言わないでも、一軒家にしては相当に大きな建物である事は疑いようが無かった。しかし、、
「おっばけやーしきー」
ドラコが有名な台詞をつむぐ。いや、これは本当にただの感想だろうとコバヤシは思いなおす。
その建物は、一言で表すならば「豪邸の大きさの廃屋」というような“おんぼろ屋敷”であった。そのあまりの錆びれ具合に、リーシアもあらためてショックを受けているらしく「あぁ、、」と自分の隣で嘆いていた。
「…すごいわね、、」
メイはメイで目の前のお化け屋敷を眺めながらそんなことを呟いていた。
「あら、素敵な家じゃない!」
…え?
コバヤシは、そんなルゥの感想に思わず彼女の方を振り返る。どうやら嫌味で言ったというわけではないようで、彼女はこの家をきらきらした目つきで見上げていた。
そういえばルゥって森の中にある小屋か何かで暮らしていたのだったけか、、
前に彼女から聞いた話をコバヤシは思い出す。
「まぁ、まずは中の方も見てみましょう、、」
メイがそう言って先陣を切り中へと進みだす。
「ぼーけんごー」
続いてドラコもてとてと歩き出す。
その後ろからコバヤシ、ルゥ、リーシアも続く。
・・・
内部も、外観から予想できたどうりのレベルであった。いや、家具などの道具類が一切無かったので動きやすくはあったかもしれない。しかし所々で壁に穴があいていたり床が抜けていたりといった有様であった。
「…それにしても広かったですね、、」
コバヤシ達は建物の探索を終え、現在はこの家の中庭のような場所に集まっていた。中庭といっても、もちろん手入れなどは一切されていない。
「もう今日からここに住んじゃう?」
ルゥだけが一人ノリノリである。いや、ドラコもかもしれない。
「ドラコ、まっくろくろ○け探す」
ふんすと意気込んでいるドラゴン少女。この世界にはそれ居ないと思うぞ、ドラコよ。
リーシアはかなり落ち込んでいる様子で、メイはなにやら考え込んでいるようであった。
「…修繕か、建て直し、でしょうね、、」
彼女はふとそんなことを呟く。この家をどうするか、ということなのだろう。コバヤシも同じようなこと考えていたからだ。
しかし、、、
この中の誰もがそういったこと、つまり建築などに詳しい人間は居ない。どうしたものだろうかと彼は思考をめぐらす。こういったことは専門家に任すべきだろうが、それとも、、
“market”でどうにかならないだろうかと、コバヤシは久しぶりにこのふざけた『ナーロゥ商店』を見てみようとしたところで、こちらに向かって声をかけてくる存在に気がつく。
中庭から見えたその“人物”は、遠目にはそれが動く毛むくじゃらにしか見えず、何らかの動物なのかが分からなかったが、その生物から発せられた言葉(正しくは声量)によって、コバヤシは“それ”が自身の知り合いであるとなんとか理解する事ができた。
「おおぃ!!」
その人物から発せられた声には聞き覚えがあったが、まずはその声の大きさに一同(ドラコ以外)は飛び上がる。
「ひげもじゃー」
ドラコがその人物を指差しながらそう告げる。コバヤシもその言葉で正体に気がつく。メイの目じりがぴくりと動いたのにも気がつく。
「こぉんなとこにおっとわなぁ!」
久しぶりだぁと、その“ひげもじゃ”はこちらへと更に近づいて来る。何も知らないリーシアとルゥの二人はいぶかしげにその動くひげもじゃを少しばかり警戒しているようであった。
「ザッチョさん、お久しぶりです」
コバヤシはそのひげもじゃドワーフに挨拶する。
「おおぅ!」
彼もまた(おそらくは彼なりの)挨拶を返すのだった。
「ザッチョ~」
ドラコが、近くまで来た彼と拳をこつんとぶつけあう。ホントになんなんだろうかこの挨拶スタイルは、、
「ちっこいのとエルフ娘もかぁっ!」
ぐぁははと大きく口を開け、そのドワーフは豪快に笑う。




