↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

168/198

【“マザー・ブレンダ”】4-17

「どうぞ中にお入りください」

その木造一軒家の前にたどり着くと、老婆は入り口のドアを開けて中に入りコバヤシ達を促す。

家はずいぶんとしっかりとした造りに見えたが、かなりの年季が入っている。隣に立つ学校(または病院)のようなものも同じぐらいの年代に建てられたものではないだろうかとコバヤシは思った。

二つの建物の周りには、家庭菜園と言うにはいささか大きすぎる畑のようなものがいくつも存在している。そこで栽培されているもののほとんどがコバヤシでも知っているもの、トマトやきゅうりなどといった野菜に似ているように思えた。


それにしてもどれもよく育っている、、

まさかあの子供たちやこの老婆が育てているのだろうかとコバヤシは思ったのだが、それを聞く前にこの木造の家へとたどり着いてしまった。

少しだけ警戒しながらも、一行はこの家の中へと入っていく事にする。《索敵》にはさっきから全くと言っていいほどに反応がなかったのだが、それでも一応警戒は怠ってはいなかった。

しかしこの村、集落?はどこか平和というか、牧歌的とでも言ったら良いのだろうか、、

コバヤシはそんなことを思いながらセイドウに続き家の中に入っていく。


・・・


外から見た感じだと、かなり古く手狭な一軒家といったイメージだったのだが、玄関へと入った瞬間にそのイメージは覆される。

「わぁ、、すごい、、」

コバヤシの後ろでリーシアがそんなことを呟くのが聞こえた。

これはおそらく、いや間違いなく何らかの魔法の力によるものだろうと彼は真っ先に考える(それがどんな魔法であるかは知る由も無かったが)

その家の内部は、外から見た場合のものに比べて明らかに広々としておりまた、内側はまるで新築なのではないかと思えるほどの綺麗さを誇っていた。

玄関を上がるとそこは“ホール”のようになっており、二階へと続く階段は、これまた木造の見事な螺旋階段が設置されていた。少しだけ、メリエにあるあの宿屋『おりえんと』と似ているなと感じ、コバヤシは看板娘レミの顔を懐かしく思い出す。

「これは、すごいですね、、」

コバヤシはリーシアに対して素直に同意の声をあげる。セイドウは少しだけ神妙な面持ちで家の内部をつぶさに観察していた。


「皆様、こちらです」

すると老婆が、いつのまにかするりと再び一行の前に立ち、玄関を上がってすぐ横の場所にある部屋へと歩いていく。

一同は彼女に従いその部屋へと入っていく。

そこは、リビング、いや“応接間”とでも言った方がいいかもしれない、のような大きな部屋になっていたが、インテリアの類いのものは大きなテーブルとイスがいくつか人数分あるだけの、ずいぶん殺風景な場所であった。

それ以外には壁にかけられている絵(油絵の抽象画に見える)が一つのみ、それと今は使われてはいなかったが、テーブルの近くの壁に暖炉が設置されている。そういえば煙突もついていたなとコバヤシはこの家の外観を思い出す。

まぁ、これだけ外と中とで大きさが違うと、いったいどこまであの外観の情報が信用できるのかは分からないが、、


「ではこちらで少々お待ちください」

そんなことを考えていると、老婆がそう一言だけこちらに告げてどこかへと消えていってしまった。ここに誰か他の人間が来るという事なのだろうか、、

それにしても結局あの老婆のことについては何一つよくわからなかったなと、コバヤシは部屋にあったイスの一つへ座りながら思い返し考える。

「…鬼が出るか蛇が出るか、、」

すると隣にセイドウが腰をかけそんなことを言う。

「いったいどんな人がこんな場所に住んでるんですかね~」

こちらはリーシアである。どうも二人の反応が正反対なのがコバヤシには少し面白く感じられてならない。

「そこまで警戒しなくても大丈夫じゃないかな」

コバヤシはセイドウに対してそう告げる。なんとなくだが、悪くなるような予感はしなかった。もちろん、索敵に敵意のある存在を何も感じなかったというのもあっただろうが、、

セイドウはこちらをちらりと見ると、少しだけ肩の力を抜いて息を吐いている。リーシアはというと壁にかけられているあの抽象画のようなものをぼんやりと見つめていた。


その時、部屋のドアが再び開き、一同の間には一瞬だけ緊張が走る。


がちゃ、


「待たせてすまないね」

いらっしゃい、皆さん


そう言って現れたのは、先ほどの老婆とは打って変わり、ブロンドの長髪をした若い(とコバヤシには思えた)女性エルフであった。いや、性格には「エルフだと思った」が正しいだろう。なぜなら彼女のその耳が、コバヤシもよく知るあのメイのものと全く同じであったからだ。


「ここの子達以外と話すのは結構久しぶりでね」

会えて嬉しいよ


彼女はそう言ってこちらに笑いかけると、向かい合うような場所へと座る。テーブルを間に挟んだ向かい側だ。

「僕はブレンダ」

ただのブレンダだよ

そんなことを続けて言ってから悪戯っぽく微笑む。コバヤシにはいまいち何が面白いのか分からなかった。

「…セイドウだ」

勇者が名乗ったのでコバヤシとリーシアもそれに倣うことにする。

こちらが全員名前を告げると、ブレンダと名乗るこの女性エルフは再びにっこりと笑みを浮かべる。いくつなのかは分からなかったが、その笑顔は人懐っこさを感じさせるには十分であるように思えた。

彼女はそのブロンドの綺麗な長い髪を後ろで束ねており、メイのように耳を隠しているといったことは無かった。瞳はどちらも薄い灰色をしており、この目だけを見るとどことなくミステリアスな雰囲気を感じさせる。実際に、彼女からはなんとも不思議な気配とでもいうべきものがあると、コバヤシは彼女を観察しながら思う。

やはり彼女からも“敵意”のようなものは感じないが、、

ふと隣を見ると、リーシアはブレンダのことをじっと見つめている。セイドウはいまだ少し警戒しているようであった。


「さて、、何から話したものか、、」

ブレンダが話し始める。彼女の口調は、一人称もそうであったがどこか“少年ぽさ”を思わせる。

「まずは、突然驚かせてしまってすまなかったね」

キミと少し話しがしたいと思っていたんだと、彼女はセイドウの方を見つめながら話す。

「キミたち二人は何故か巻き込んでしまったみたいなんだよ」

今度はそう言ってからこちらとリーシアさんを交互に見る。コバヤシはブレンダの言葉を一つ一つ頭の中で確認していくも、リーシアさんが話を理解しているという事はこのブレンダという女性が使っている言葉は“日本語”ではないのかということにそこで気がつく。

「ここは本来、よっぽど強い実力が無ければ入れない見えないはずの場所なんだけどね」

“勇者様”はともかく、キミら二人はちょっとなんでだろうね、

彼女の灰色の瞳が、こちらを興味深そうに見つめていた。


「あなたは私のことを知っているのですか」

するとセイドウがブレンダへ尋ねる。これはコバヤシも気になっていたことであった。他にもたくさん聞きたいことはあるが、、

ブレンダはセイドウの方に再び振り向き、その顔をじっと見つめる。セイドウも彼女の顔を見つめ返す。

「…もちろん、知っているとも、、」

彼女はどこか遠くを見つめるような目でセイドウの顔を見つめている。

「そして、キミも、、いや君たちもか、、」

彼女は考えをまとめるようにして話し続ける。

「キミたちも私のことを知っている、いや、聞いているはずだよ」

一同の空気が一瞬にして張り詰めるのが分かった。


「ボクの名はブレンダ」


マザー・ブレンダ


「キミたちが“いにしえの魔女”とかって呼んでいる存在だよ」


彼女は、その灰色の瞳をこちらに向ける。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。