【タウン 1】4-15
「アキラ!」
“その場所”へと足を踏み入れるとすぐに、聞き覚えのある声がこちらへと飛んでくる。
「…セイドウ」
コバヤシはその声の主に対しそう応える。
「リーシアさんも、無事でよかった」
セイドウはそう言った後に、今度は付き人二人の安否について尋ねててきたので、コバヤシは“向こう”でセイドウが消えてからの一連の経緯を説明する。
「なるほど、、」
彼はコバヤシの説明を聞くと一人頷き、再び考え込むように険しい顔になる。
それにしてもここは一体どこなんだろうか、、
「ここは、、一体なんなんでしょうか、、」
リーシアも同じことを考えていたらしく、こちらに対して小声でそう呟く。
コバヤシはいくつもの疑問が頭の中でめまぐるしく駆け巡っていたが、とりあえずは辺りをぐるりと一通り見回すことにする。
周辺は、自分たちがこれまで居た場所とはどこか似ているようでしかし全く異なるような場所であった。同じなのは、ここがどこかしらの山の中にある開けた場所ということぐらいだろうか。しかしこんなに草木が生い茂ってなどいなかったのだが、、
「これは、、」
そしてもう一つ、これがコバヤシの興味を一番惹いた。
「これって、あの“アーチ”ですかね、、」
リーシアが隣で“それ”を見ながら呟く。
彼女が不思議に思うのも無理はないとコバヤシは思った。実際、彼も“それ”があのアーチと同じものなのかいまいち自信が持てなかったからだ。
それは確かにあのアーチと同じ形をしているように見えた。しかし、向こうで見たものとは大きく異なっている点が一つある。
そのアーチには、くぐるようなところ、空間が無かったのだ。
いや、その言い方は正確ではないなとコバヤシは思う。
具体的には、そのアーチのくぐれる様な場所には全て、何やら白い粘土のようなものによって覆い尽くされていた。警戒しつつそれを確認し触ってみると、粘土というよりはもっと柔らかくふわふわした不思議な感触であった。
どうもこれと似たようなものを、最近見たことがある、、
…そうだ、メリエに閉じ込められた時に見たあの“白い蓋”のようなあれかと、コバヤシはその記憶を思い起こす。
あの時のものと全く同じという訳ではなかったが、それでも十分に似ているといえる。
ということはあの時と同様、ここに閉じ込められたような状態なのだろうかとも考えたが、それにしてはこちらに対して敵意を向けているような存在が近くに居るようには感じられなかった。
「アキラ、少し下がっていてくれ」
アーチを調べていたコバヤシの後ろから、セイドウが声をかける。
後ろを振り返ってみると、彼は何故か自分の太刀を抜いていた。
「おそらくだが、そのアーチが何らかの役割を果たしていることには間違いないだろ?」
セイドウはそう言うと構えを取る。
確かに俺もそうだとは思うが、、
コバヤシはそんなことを思いながらもアーチから距離を取る。どうやらセイドウはこのアーチに攻撃(いや衝撃というべきか)を与えてみるつもりのようだ。
リーシアもコバヤシのすぐ傍へと近寄ってくる。
あまり効果は無いような気がしてならなかったし、そもそもこのアーチが本当に原因かも分からない。そして何よりこれを万が一にも破壊してしまった場合、元の場所へと戻れるのだろうかなど、様々な考えがコバヤシの頭をよぎったが、彼はセイドウを特に止めることはしなかった。
何故だかはわからなかったが、セイドウがこのアーチを破壊できるとはコバヤシには思えなかったのである。
再びあの“居合い斬り”の型をセイドウは取る。その時だった。
「お迎えに参りました」
一行の背後から誰かが声をかける。
コバヤシ、セイドウ、リーシアの三人は、一斉にその声がした方へと瞬時に振り向く。その声の主は、あまりに気配を感じなさすぎた。
敵意が無ければコバヤシの索敵スキルは機能しないといっても、それにしてもここに近づいてくるまでに一切の気配を感じさせなかった。
そこに立っていたのは、小柄な老婆であった。
最初に見たとき、その老婆の着ているものが“着物”のように見えたコバヤシであったが、よく見ると似てはいたものの全く同じものという訳ではないようである。
彼女は背筋を正してこちらをしっかりとした眼差しで見つめている。その力強さには敵意こそ感じさせなかったものの、何か強力な“意思”がひしひしと伝わってくる。
「こちらへどうぞ」
老婆は、警戒しているこちらの意など介さぬといった様子で、すたすたと先へ先へ進んでいく。




