【ある場所】4-14
異変に気づいてか、他の人間たちがコバヤシの元へと駆け寄ってくる。
「何かありましたか?」
ゼル爺が落ち着いた声でそう尋ねてきたので、コバヤシは先ほど自分が目撃したものについてざっと話す。
「…消えた?」
コバヤシの話を聞き終えると、シエナ嬢はいぶかしげな様子でこちらを睨み、そして次にセイドウが消えたあたりを見つめる。
全員でセイドウの名を呼んでみても何の反応もない。もっとも、コバヤシは《マップ》のスキルによってセイドウ・タケルの存在がこのあたりから一瞬にして消えてしまった事を分かってはいたが。
索敵やマップにも何の反応がない、、
本当に、いったいどのようにしてここまで跡形もなくなってしまったのかとコバヤシは少なからず混乱する。
するとシエナ嬢とゼル爺の二人が、先ほどの“アーチ”に向かっていく事に気づく。
「あの、それは少し危険なのでは、、」
コバヤシはためらいつつもそう口にする。理屈などは全くわからなかったが、もしかしたらその付近には何らかの“仕掛け”のようなものがあるのではないかと考えていたからだ。
「ふむ、しかし調べない事には何も分かりませんのでな、」
ゼル爺はこちらに対しそう言うと、再びあのアーチへと向かって歩いていく。リーシアはコバヤシの隣に控えていた。彼女も少し心配そうな様子であちらを見つめている。
…確かに一理はある、と彼は思ったものの、自分もそちらに行くことはまだしなかった。とりあえずは先に二人の、ゼル爺とシエナ嬢の様子をうかがう事にする。
今度はしっかりと確認しておこうと、コバヤシは何一つ見落とさないように目をしっかりと見開いていた、がしかし、、
彼らは特に何か起きるわけもなく、そのアーチをくぐり向こう側へとたどり着いてしまう。
あの変なアーチが原因ではないのか、、?
コバヤシはいぶかしげに思いながらも、ゼル爺とシエナ嬢がこちらへ帰ってくるのを待つ事にする。
「特に、何もないですな、、」
うーむと考え込みながら二人はこちらへと帰ってくる。女性騎士の方は、どこかいつもより困惑の色が強く見える気がした。
「…自分も確認してきます、」
コバヤシはそう言うと自身も足を踏み出す。実は先ほどあの“アーチ”を確認(《鑑定》)してみたところ『????』という表示が出てきたのである。そして、そんな表示を見たのはこの世界ではこれが初めてのことであった。
「私もついていきますっ」
隣でリーシアがコバヤシの裾をぎゅっと握りながら言う。
少しためらったものの、結局「それではなるべく自分の元を離れないで下さい」とだけ言って一緒に進みだす。
いくつか考えはあったものの、もしここに何らかの“トラップ”があったとして、それがセイドウだけに発動するものだとはどうにも思えなかった。
さすがにそんなのは不思議すぎる、、
ゼル爺とシエナ嬢の二人には特に何の異変も見られなかった。もしかしたら『一人の時にのみ発動する』ようなものなのかもしれないと、そんな考えがコバヤシの脳裏をよぎる。
そもそもがトラップという類いですらないという可能性もある。
ふと気がつくと、すぐにあのアーチのすぐ下まで来ていた。このまま特に何も起きないのだろうかと、彼はリーシアと共にその下をくぐる。
その時、耳の近くで何かが「ジジッ」と弾けるような音(つい最近どこかで似たようなものを聞いたことがあったような、、)を聞いた気がしたかと思うと、突如大きな立ちくらみに襲われる。
「ぐっ、、」
コバヤシは倒れそうになりながらもなんとか踏みとどまる。思わず隣に居るかどうか不安になり、リーシアの手を探し強く握り締める。
良かった、ひとまず彼女はちゃんとそこに居る、、
眩暈がおさまりながらも、コバヤシは彼女の手を探り当て、先ほどのは一体なんだったのだろうかと、とりあえず周りを確認してみる。
「…これは、、」
彼は、自分が今目にしているものがにわかには信じられなかった。
隣でリーシアも目を大きく開けて、眼前の光景を凝視している。
“そこ”には、これまで延々と見てきたような岩ばっかりの景色とはまるで違った光景が広がっていた。
あの“アーチ”をくぐった瞬間、まるでどこかに“瞬間移動”でもしてしまったのではないだろうかとコバヤシには思われた。
そこは、一面に草木の生い茂る、ある一つの集落のようなものが、目下に広がっていたのだった。




