告白
突然の終了です。結局、北里と映見君が空気読んだ感でした。
もう少しグチャグチャ楽しげにしたかったんだけどそうもいかなかったな。
設定生かしきれてないし。(^_^;)
それではまた〜次の機会に
「縁」
私は声をかけていた。それほど大きくはない声。でも聞こえたのか、縁は少し驚いたようにして目を見張ったんだ。
パタパタ近づいていくと拒絶される様子なんてなくて、少しだけ不機嫌に迎え入れてくれた。
第一関門突破……かな?
「あのーーえっと。北里さんは?」
「……レンこそ。あいつと上手く行ったわけ? デートしてたんだろ?」
「上手く? ーー遊んでただけだよ。マリちゃんも誘ったんだけどこれなくてーー」
「ふうん?」
納得行かないのかよくわからない返事をすると縁は私から目を逸らした。
なんとなく重苦しい沈黙。
ーー言わなきゃ。わかってるんだけど、なかなか口元から言葉語でない。
言わなきゃ。そう、考える度口が鉛のように重くなっていく気がした。
でも。
「「あのさ」」
それはどっちが先立ったんだろう。重なった声。驚いたのは私だけではなく、縁も少し目を見開いていた。
どっちが先か迷ったので『先に』そう言えば縁は怪訝そうに私を見たが仕方ないと言うようにため息をひとつ漏らした後で。苦笑を浮かべてみせる。
「俺、なんか北里に振られたみてぇ。……『頑張った』とは思うんだけどな」
「頑張るものなの?」
なにか、違うような気がするんだけど。でも、必要以上に幸せオーラを出していたから『頑張って』いたのかもしれない。
にしても。別れたんだ。
少しだけ安堵する自分が嫌だな。この裏で北里のことを考えると少し悲しいのに。縁だって。
「慰めたほうがいい?」
言うと縁は喉を鳴らした。私を小馬鹿にするように。……変なこと言ったつもりはないし、心配してるんだけど。
眉を潜めるとぽんぽんと頭に手を置かれる。
「レンみたく子供じゃねえし」
子供扱いって。……子供扱い。悔しくて手を払いのけると縁は楽しそうに笑う。さっきまでとはまるで別人のようだった。
久しぶりだな。こんな顔の縁を見るのは。それがとても嬉しかった。だって今まで私を見ると不機嫌そのものになってたから。
振られたっていうのに。おかしな話だよね。
「私子供じゃないし。ってか、人が折角ーー」
「で? レンは何を言いかけたんだよ?」
私の抗議を無視するようにして縁は何かを探すようにして視線を泳がせた。
……目的は風船か。私に風船が似合うと思ったのか、そして高校生にもなってわたしが喜ぶと思ったのか。
縁は近くにいたおねーさんから風船を貰うと私に差し出した。
子供扱いすぎるし。
微妙な引きつり笑いしかできないんだけど。
「好きだろ?」
子供の頃はね。と心の中で突っ込みを入れてみる。でも折角持ってきてくれたんだし嫌とは言えないよね。
赤い風船。プカプカと浮かぶそれを見上げれば青空によく映えて見えた。
「で?」
なぜ満足そうに笑ってるんだろう。何だったんだろう。今までの縁は。壊れてたのかなぁ。なにか吹っ切れた表情をしてるから、今が壊れてるのかもしれない。
これなら言わなくても良くない? なんて考えたけれど。
それは違うような気がした。
グッと喉の奥で言葉が引っかかる。まるで蓋をしてあるように。それをこじ開けるのはかなりの気力を要した。
はあっと息を吸い込んでから真っ直ぐに縁に向き直る。
「あのさ。あのね。私」
ぐっと真一文字に唇を結んだあとで私はゆっくりと言葉を紡ぎ出していた。
「悪かったと思ってる。縁を都合よく使って。絶対。って思ってたんだ。それでね、それに甘えてた。縁はいつだって私の味方。そこにいるって思い込んでたから。だから、私は縁のことを考えてなかったんだ。何をしても絶対ここにいてくれるからって。……よく考えたらさ。絶対なんて無かったんだよね」
少し困惑気味に縁は視線を私に返している。無理ないかも。こんな話。唐突に言われてーーしかも、私だって何を言っているのか理解できてない。
つまりは。
言いたいことは一つなのになかなかなか喉から出なかった。ドクドクと心臓の音が早鐘のように耳に届く。
「レン?」
「あのっ!!」
突然の大きな声に驚いたらしく縁は肩を弾き、目を大きく見開いている。
「えと、つまりはーー……わ、私には縁がいないとダメってことで。あの、縁に嫌われた日からずっと考えてたんだ。縁が居なくなったら寂しいって。苦しいってーー縁がさ。誰を好きでもいい。だからさ。だから。ーー今まで通りでーー」
ポロリと涙が再びあふれたのが先か、それとも『温かいもの』が頬に触れたのが先立ったのかはわからない。グッと私は引き寄せられると縁の胸に顔を埋められていた。
温かなお日様の香りと柔軟剤の軽やかな匂い。その向こうからドクドクと規則正しく心臓の音が聞こえてくる。
暫く何が起こったのが分からなくて目をぱちぱちさせていると、『ママーーあの人たち』耳に入る言葉で状況を理解した。
ばっと頬が朱に染まるのを感じる。
恥ずかしい。遊園地でこの状況は……恥ずかしすぎる。けど、しっかりホールドをされているので動けないんだけど。ちらりと隙間から辺りを見れば写メ取るのやめてもらっていいですか?
とも言えない。とにかく、犯罪ではないからお巡りさんを呼ぶのだけはやめてください。と願う。
「え、縁?」
言うと背中に回された手が更にきつく力を伴った。
苦しいです。
「レン。ゴメンなーーごめん。俺。苦しかったから。あまりにも苦しかったから逃げ出しただけなんだ。ゴメンな。レンの苦悩も、泣いてたことも知ってたけど。無視して、知らないふりをしてればーーいずれ忘れるかと思ったんだ」
「縁」
ようやく離してくれたのではぁっと私は息をついた。でもーー苦しいってさなにが苦しかったんだろう。
縁は自嘲気味に口角を上げる。
「でも。言われた。北里に」
「え?」
「相手が気付いてくれるのを待ってても意味はないって。伝えなきゃ何も始まらないって、さ」
北里さん。ごめん。なんだかどっかのコマーシャルのようだなんて少し思った。
けど。そうかもしれない。
縁は私に手を差し出した。
「五木 恋。俺はお前が好きだ。付き合ってください」
「……」
……。
やだ。また涙が溢れる。嬉しくて。嬉しくて。声にならなくて。私は声の代わりに笑顔を見せた。
とんと私は縁の掌に自分の手を重ねて見せる。
子供の頃にはあんなに小さかった手はとても大きくて。思わず手から外していた風船はふわふわと風に流れて天高く登っていた。




