放課後のカラオケ〜変わり始めた距離〜
「ようやく終わったな」
「後は赤点なしなら大丈夫だな」
入学してから約一ヶ月半。中間テストがようやく終わった。
テスト前は当然テスト勉強をしないといけなかったので、芽依とのデートもお預けとなっていた。
お互い赤点を取らないためにも仕方ないことだったが、数週間会えなかっただけに、週末のデートが楽しみになっていた。
「俊くん、今日時間ある?」
「あるけど、葵は部活じゃないのか?」
「テスト最終日の部活は自主練だから、参加は自由なんだって」
「あ、それサッカー部だけじゃないんだな」
どうやら、隼人のとこも同じらしい。
「たまにはみんなで出かけない?」
「俺は別にいいけど……どこ行くんだ?」
「俺は久しぶりにカラオケに行きたい」
そういえば隼人って、カラオケ好きだったな。
「カラオケか、たまにはいいかもな」
「たまにはって、俊くん芽依とカラオケ行かないの?」
「ああ、芽依とのデートは買い物や映画に行くことが多いから、カラオケに行くことは滅多にないぞ」
「なんかカラオケってデートの定番ってイメージだけど、そうでもないんだな」
「まぁ、そういうのは人によるんだと思うぜ」
「どうせなら、結衣さんも誘う?」
「あの人は、自主練しっかりやるイメージだけどなぁ」
「誘うだけ誘ってみるね」
葵は携帯を取り出し、結衣先輩に連絡する。
生徒会長もしてるし、忙しいだろうから多分来ないだろうなぁ。
「結衣さんも来るってさ」
「え?来るんだ」
「なんだよ俊。結衣先輩に来てほしく無かったのか?」
「いや、そうじゃなくて、結衣先輩は自主練するもんだと思ってたから」
「たまには息抜きも必要だし、久しぶりにカラオケ行くのはいいかもってことみたいだよ」
「じゃあ、四人でカラオケだな」
こうして、俺たちは四人でカラオケに行くことになった。
このメンバーで遊びに行くのって、いつぶりだろ?
⸻
「お待たせ」
放課後、俺たちは校門で結衣先輩を待っていた。
「お久しぶりです、結衣先輩」
「俊太は久しぶりだな。葵や隼人は部活終わりに会うこともあるが、俊太は部活していないから会うことないもんな」
「そうですね……」
「あ、別に責めてるつもりはないんだ。彼女とは上手くいってるのか?」
「はい、テスト前は勉強するために会ってなかったので、今週末が久々のデートの予定です」
「そうか。何かあればいつでも連絡して来ていいからな。話し相手ぐらいにはなれると思うから」
「ありがとうございます」
「学校の外でぐらい、昔みたいに話せばいいのに」
「制服着てる間は、先輩後輩として接した方がいいと思って……」
「葵がフレンドリーすぎるんだ。学校でもこんな感じで話しかけてくるから、私のイメージが崩れそうになる」
「結衣さん生徒会長もやってて、剣道部の主将だから、お堅いイメージ持たれてるもんね。全然そんなことないのに」
「結衣先輩は、彼氏作らないんですか?」
隼人のやつ、えらく踏み込んだ話を結衣先輩にしたなぁ。
「生徒会の仕事に部活と忙しいからな。恋愛なんて言ってる暇なんてないさ。それに、生徒会長に恋人がいたら、学校の風紀が乱れる心配があるだろ?」
「うちの学校って別に恋愛禁止じゃないんだし、そこまで気にしなくてもいいと思うけど……」
葵の指摘はもっともだが、結衣先輩の言いたいこともわかる。
まぁ、彼女がいる人間の言えたことではないが……。
「恋愛禁止ってわけではないが、私は今年受験生だからな。受験勉強もあるから、デートなんて行く時間がない。だから彼氏を作ろうとすら思わないんだ」
まあ確かに、恋人がいても一緒に過ごせないんじゃ意味ないけど……。
「でも結衣先輩、それなら同じ学校なら学校で一緒に過ごせません?」
俺は思った疑問をぶつけた。
「確かにそれはそうだが、私のお眼鏡にかなう男がいないってのが本音だ。この話題はもういいだろ、カラオケに着いたし、思う存分歌おう」
いつの間にかカラオケ屋に着いていた。冷静に考えたら、結衣先輩って遊びに行く時間もほとんどないんだろうなぁ。生徒会に部活に受験勉強、貴重な休みを俺たちと過ごしてくれるってことは、昔みたいに話せるようになることもあるかもな。
⸻
「今日は誘ってくれてありがとう。気をつけて帰るんだぞ」
俺たちは四人で五時間ほどカラオケを楽しんだ。
アニメ好きの隼人はアニソンしか歌わない。
流行りの曲を一生懸命歌う葵。歌い慣れると上手いんだけど、歌い慣れるまでは少し音がズレる。
結衣先輩は意外とアニソン好きだけど、流行りの曲も結構知っていた。
昔と変わらず音痴だったので、誰にでも苦手なことはあるんだと再確認できた気がした。
時間は六時前だが、まだ明るい。
陽が長くなりつつあるなぁ。
「またね結衣さん」
「お疲れ様でした」
俺や隼人と違ってフレンドリーな葵。
まぁ、幼馴染の女の子同士ならフレンドリーにするなって方が無理なのかもな。
「俺ちょっと本屋に寄って帰るわ」
「ああ、またな隼人」
「また明日」
隼人とも別れ、葵と二人になる。
「久しぶりの四人でのカラオケ楽しかったね」
「ああ、四人でカラオケなんて、久しぶりだったもんな」
「結衣さんが中学の時が最後だったと思うから、三年ぶりかもね」
「そんな前か……。にしても葵って昔から歌上手いよな」
「そ、そんなことないよ」
「そんな照れるなよ」
「照れてない」
「顔赤いぞ?」
「夕日のせい」
こういう意地っ張りなところも昔から変わらないな。
「俊太!」
聞き覚えのある声。もしかして――
「芽依!芽依もどっか行ってたのか?」
「私は友達と買い物行った帰り。俊太は?」
「俺は葵たちとカラオケに行ってた」
「そ、そうなんだ」
心なしか芽依の表情が少し固くなる。
「私と俊くんと隼人くん、結衣さんの四人でカラオケに行ってたの」
「結衣さんって……小木曽先輩のこと?」
俺がたまに話していた先輩ってこともあるけど、中学も同じだったのもあって覚えてたんだな。
「そうだけど?」
「小木曽先輩って大和台高校なの?」
「ああ、しかも生徒会長」
「そうなんだ……俊太、明後日のデートはお昼過ぎの十三時からでいい?」
「芽依がその時間でいいなら、俺は構わないぞ」
「ありがとう、じゃあまた明後日ね俊太」
「ああ、気をつけて帰れよ」
「分かってる」
俺の前では笑顔の芽依だったが、葵とすれ違いざま――
「いい加減諦めたらいいのに」
「……」
「?どうした葵」
「う、ううん、なんでもない」
「芽依になんか言われたのか?」
「な、なにも言われてないよ?」
少し表情が固い気がする。
「そっか、じゃあ俺たちも帰ろうぜ」
「う、うん」
芽依とすれ違ったときに葵の顔色が変わった気がしたが、俺の気のせいなのかもな。




