新たな出会い〜気づかぬ恋心〜
「佐々木くん、ちょっといい?」
入学式から約二週間。昼休みに見知らぬ長身の女の子が教室の外から隼人を呼んだ。
「おう、どうしたんだ?」
女の子の元へ隼人が歩いていく。制服姿でも運動が好きそうって思える短めの髪に少し日焼けした肌。サッカー部のマネージャーか?
「監督がこれ今日中に書いて提出してくれって」
「了解、ありがとう」
なにやら紙を受け取る隼人。
「う、うん。じゃあまた部活で」
なんか少し照れてる気がする。
「おう」
隼人が席に戻ってくる。
「なあ隼人、今の子は?」
「ああ、同じサッカー部の東李璃」
「同じサッカー部って、うち女子サッカー部もあるんだ」
「あ、そうか。俊は部活入る気なかったから何部があるか把握してないんだったな」
意味ありげな笑みを浮かべる隼人。
「悪かったな」
「別に悪いとは言ってねえよ。彼女との時間を取るのはいいことだろうし」
「嫌味な言い方だな。今の子結構可愛いし、隼人も彼女作ればいいじゃん」
「そんな簡単に彼女って作れるもんじゃねえんだよ普通は。ってかなにどさくさに紛れて言ってんだよ!」
「あれ?意外と悪くないかもって感じか?」
「そ、そんなわけねえだろ!別に同じサッカー部ってだけだ」
「案外向こうはそう思ってないかもしれないけどな」
「な、そんなわけねぇだろ。まだ会って二週間しか経ってないんだぞ」
「ちょっと、なに喧嘩してるの?」
俺と隼人の会話に呆れ顔の葵が加わる。
「別に喧嘩はしてねぇよ。さっき隼人と同じ部活の子が来てたんだけど、隼人に気があるんじゃないか?って話をしてただけだ」
「あー、さっきすれ違った子かなぁ?なんかぶつぶつ独り言言ってた」
「独り言?」
「うん、声かけちゃったとかなんとか」
「それ、もう確実に隼人のこと好きじゃん」
「うん、確実に好きだと思うよ」
悪戯っぽく笑う葵。
「いやいやいや、そんな急に言われても……。俺別に彼女のこと何とも思ってないし」
驚きながら否定する隼人。
「そんなこと言って、満更でもないんじゃないのか?」
「そ、そんなことねえよ!東はサッカーは上手いし、明るい性格で人当たりもいいけど、天然だから会話のテンポが良くないし……」
「隼人くん、あの子のことよく見てるじゃん」
「な……同じ部活なんだから、相手のことをよく見るのは普通だろ」
普段茶化しタイプな隼人だが、サッカーになると真面目で周りがよく見えている。中学の時、主将任されてたっけな。
「まぁ、三年間同じ部活なんだし、じっくりお互いのこと知っていけばいいんじゃない?」
「それは……そうだな。そういや、葵は俊以外に好きな人出来たのか?」
「へ?」
葵が俺以外にって、そもそも葵って俺のこと好きだったの?
「ちょ、ちょっとなに言ってんのよ!私は別に俊くんのこと好きじゃないわよ!ただの幼馴染なんだから」
「ムキになりすぎ」
茶化すように笑う隼人。
「え……葵って俺のこと好きだったの?」
想定外すぎる言葉に、俺は少し放心状態になる。
「俊くんまでなに言ってるのよ!だいたい、俊くんには芽依がいるでしょ!」
必死に否定する葵の顔は赤くなっていたが……たぶん隼人に茶化されて怒ってるんだろう。
「それもそうか……。隼人が変なこと言ったのが悪い」
「俺が悪いのかよ」
「うん、隼人くんが悪い」
葵も同調する。
「そもそもは俊が東さんが俺のことを好きだと思うとか言い出したのが始まりだろ」
こっちに怒りの矛先を向けないでくれ。
「でもそれは事実みたいだし、俊くんは間違ったことは言ってないんじゃない?」
「まぁ……そうなのかもしれないけど」
葵の正論に隼人もぐうの音も出ないようだ。
「じゃあ隼人が全部悪いってことで」
「はいはい、俺が悪うございました」
謝る気ゼロの状態で言う隼人。
しかし、隼人を好きな同じ部活の東さんか。
隼人は彼女いたことないだけに、初彼女選びに慎重なんだよなぁ。
それで結局中学でも彼女出来なかったわけだけど、高校では案外あの子と隼人が付き合うことになるかもなぁ。




