初めてのデート〜変わり始めた日常〜
「そろそろ行かないとな」
今日は高校に入学してから初めての土曜日。
高校入学後、初めての芽依とのデート。
芽依とお互いの入学祝いの予定。
俺はいつも通り待ち合わせ場所に、時間より少し早めに到着。
待っていると――
「俊太〜」
芽依が手を振りながら駆け足で走ってきた。
「おはよう芽依。別に走らなくてもいいのに」
「いいじゃない、少しでも早く俊太に会いたかったんだから」
嬉しいことを言ってくれる。
「俺が芽依と同じ高校行けてれば、平日は毎日会えたんだけどなぁ……」
「済んだことを愚痴愚痴言っても仕方ないわよ。平日会えない分、週末に会える楽しみがあるでしょ?」
「確かに。じゃあ楽しい週末を過ごすとしますか」
「うん」
満面の笑みを浮かべる芽依。
ほんと可愛いなぁ。
「私の顔ばっか見て……私の顔に何かついてる?」
「いや、今日も可愛いなぁって思って見てただけだよ」
「もう、何言ってんのよ……」
照れてる芽依も可愛い。
「とりあえず、昼飯食べに行くか」
「うん」
俺たちは駅前に新しくできた喫茶店でお昼を食べた。
「次はどこ行く?」
「買い物したいから、サカキ行かない?」
サカキとは駅の近くにあるショッピングモール。
「なに買うんだ?」
「春服と後は先取りの夏服がないか見ようと思って」
女の子はファッションにこだわりある子が多いから、おしゃれな服を毎年欲しくなるもんなんだろう。
「いい服あるといいな」
俺たちはサカキに移動。芽依が服を選んでいる間は時間を持て余す。
そんなとき――
「俊くん、こんなとこでなにしてるの?」
葵もサカキに来てたのか。
「おう、芽依の服選び待ってるんだよ」
「あ、デート中だったんだ……。話しかけてゴメンね」
「いや、俺は全然構わないけど」
そのとき――
「俊太、お待たせ」
芽依が戻ってきた。
「あ、葵じゃん。久しぶり」
「久しぶり」
なんか微妙に空気が悪い。
「芽依、悪い。俺ちょっとトイレ行ってくるわ」
「分かった、ここで待ってるね」
二人を置いて俺はトイレに向かう。
「葵って今でも俊太のこと好きなの?」
「え?好きというか幼馴染だし……」
「はぐらかさなくていいわよ。葵が俊太のこと好きなのは分かってるし」
「ご、ごめん」
「葵ももっとグイグイ行ってれば、今俊太の横にいたのは葵だったかもしれないのに」
「そ、そうかなぁ……」
「幼馴染だからってアピールせずに付き合えるわけじゃないわよ。まぁ、私は葵に勝てたから満足よ」
「え!それってどういうことよ」
「私は俊太のこと好きで付き合い始めたけど、いつも俊太の近くにはあんたがいた。幼馴染って便利よね」
「便利って……」
「そしてあんたも俊太のことが好き。ウザったいのよそういうの」
「あんた、俊くんをなんだと思ってるのよ!」
「うるさいわねぇ。あんた俊太と高校まで同じって、どんだけ俊太のこと好きなのよ。あなたは選ばれなかったんだから、高校ぐらい新しい出会いを求めればよかったのに」
「そんな言い方しなくてもいいじゃない!」
「なに熱くなってるのよ。それだけ好きだったなら、ちゃんと告白すればよかったんでしょ?それをしなかったあんたが悪いのよ」
「それは……そうだけど……」
「俊太は私のために色々してくれる。私のことを一番に考えてくれる。私に本気で惚れてくれてるんだもの。幼馴染のあんたに近くにいられると迷惑なの」
「俊くんはあんたのおもちゃじゃないんだよ!」
「お待たせ〜ってどうした?」
「あ、俊太おかえり。なんでもないの。ちょっと葵と服の好みで言い合いになっちゃっただけだから」
「な、なに言ってるのよ!全然違うでしょ!」
「葵、落ち着けよ。他の人の目もある場所で熱くなりすぎだぞ」
道ゆく人の視線が集まっていた。葵は負けず嫌いなとこあるし、また感情的になりすぎてるのだろう。
「そうよ葵。公共の場で大声を出すのはやめた方がいいわよ。行きましょ、俊太」
「お、おう。またな葵」
「う、うん、大声出してゴメンね」
「俺は全然大丈夫。あ、待ってくれよ芽依」
早歩きでその場を去る芽依を俺は慌てて追いかけた。
それにしても、二人は何の話で言い合いをしていたのだろう?
「芽依、葵との口論は、本当は何の話だったんだ?」
「え?本当はもなにも、服の好みで少し熱くなってしまっただけよ。女の子って自分のファッションにこだわりあるから、それを否定されると怒りたくなることもあるものよ」
「葵のファッションを否定したのか?」
「私は否定までしたつもりはないけど、葵にはそう聞こえたのかもしれないわね……。後で葵に謝っとくわ」
「ああ、そうしてくれ。学校で葵に愚痴愚痴言われるのも困るし」
「迷惑かけてごめんね俊太」
申し訳なさそうにこちらを見る芽依。
「全然大丈夫だよ。俺は二人も仲良くしてくれたらいいなぁって思ってるだけだから」
「ありがとう」
その後俺たちはサカキの中にあるゲームセンターでプリクラを撮ったり、デザートを食べたりして帰った。
家に帰ると家の前には――
「葵、こんなとこでなにやってるんだ?」
「あ、俊くん。さっきのこと謝ろうと思って……」
「服屋でのことか?俺は気にしてないから大丈夫だぞ。芽依も言いすぎたって言ってたし、芽依から連絡来てるだろ?」
「え?う、うん来てたよ。私も言い過ぎたゴメンねって」
「俺はファッションのことはあまりよく分からないから、どういう感じで口論になったのか分からないけど、二人が仲直りできてるならそれでいい」
「あ、ありがとう」
「じゃ、葵も暗くなる前に帰れよ」
「う、うん。じゃあね」
「おう、また明後日な」
俺が家に入るのを見て、葵は家路へ向かう。
数歩歩いて、俺の家へ振り返る。
「俊くん、芽依のこと言っても信じてくれないだろうなぁ。連絡ってなにも来てないけど……。俊くんは昔から好きになるとその人の悪いところが全く見えなくなるし。なにより、芽依がそんな女のわけがないって怒られるだけだろうなぁ……」
俺はまさか芽依と葵の口論が俺に対することだったということを知る由もなかった。




