入学式〜はじまりの春〜
名前と高校名のふりがな、微妙にズレてます……。
桜舞い散る春。
今日は高校の入学式。
俺、藤岡俊太は今日、大和台高校に入学する。
半年前から付き合っている彼女の宮下芽依は、私立の桜ヶ丘高校に入学。
同じ高校を目指したが、俺は受験に失敗……。
公立の大和台高校に合格し、今日入学する。
「芽依と同じ学校行きたかったなぁ……」
どれだけ後悔しても現実は変わらない。とはいえ、やっぱり同じ高校に行きたかった……。
「俊くん、遠距離の方が絆が深まるかもよ?」
俺に優しい言葉をかけてくれたのは長谷川葵。
幼稚園から一緒で、運動神経抜群の幼馴染だ。
「葵は希望校入学だから前向きに考えられるわな」
「大和台高校は陸上部の強豪だから、高校はここしか考えてなかった」
「葵はいつでも目標にまっすぐだもんな」
中学でも全国大会を経験している葵。強豪でも結果を残しそうだな。
「俊くんは部活どうするの?」
「俺?部活はしないかな……芽依と会う時間減らしたくないし」
「彼女優先か」
「平日は学校で会えないだけに、せめて週末は一緒に過ごしたいからな」
「それだけ芽依のこと考えられるなら、遠距離でも大丈夫でしょ」
「そればっかりは初めてのことだから分からない」
俺たちは大和台高校の校門をくぐり、クラス分けの掲示板を見に行く。
「私は一組みたい」
「俺も一組か……隼人も一組か」
隼人とは佐々木隼人のこと。小学校からの親友だ。
「隼人くんはもう来てるのかな?」
「あいつはもう来てそうだな。こういう行事の時は早めに来るやつだし」
俺と葵は一緒に教室に向かった。
――ガラガラガラ
教室へ入ると、思った通り隼人はすでに来ていた。
俺たちは黒板に張り出された席順を確認し、席に着く。
「俊、久々に同じクラスだな」
「ああ、小六以来だな」
仲がいいと違うクラスになるのか、中学では隼人と同じクラスになったことがなかった。
――ガラガラガラ
担任と思われる人が入ってきた。
「新入生の諸君、入学おめでとう。今日から一年間君たちの担任となる乾一馬だ、よろしく。今から体育館で入学式が行われるので、全員廊下に整列」
見知った顔と見知らぬ顔、入学式ならではの光景。
新しい制服だからか、少し大きめのサイズを選んでいる人が多い。
卒業する頃にはちょうどいいサイズになってるのかもな。
そんなことを考えながら、俺たちは体育館に移動した。
⸻
体育館では校長先生や来賓の挨拶が続く。
挨拶ばかりで眠くなりそうだ。
そう思っていた時――
「続いて在校生からの祝辞。在校生代表、生徒会長・小木曽結衣」
「はい」
聞き覚えのある声。
壇上に上がった生徒会長の姿を見て、俺は気づいた。
「結衣先輩じゃん……」
思わず声が漏れてしまった。
小木曽結衣。彼女は二つ年上の先輩だが、小学校の頃から知る幼馴染。
中学から剣道を始め、高校でも剣道をしていると聞いていたが、まさかこの学校でしかも生徒会長とは……。
⸻
「俊くん、結衣先輩のとこに挨拶行く?」
入学式終了後、葵に声をかけられる。
「あ、ああ……。隼人も一緒に行くか?」
「ああ。久しぶりだし挨拶ぐらいしとかないとな」
俺たち三人は結衣先輩がいるであろう部活勧誘が行われている中庭に行く。
部活勧誘のためにいろんな部活の人がいるが、一人だけ目立つ凛とした立ち姿。
「結衣さん!」
結衣先輩はこちらに気付き、少し笑顔になる。
「葵、入学おめでとう」
「ありがとう」
女の子同士だからなのか、葵はすごく話しやすそうに結衣先輩と話していた。
「俊太と隼人も、入学おめでとう。まさか三人ともこの学校に来るとはね」
「ありがとうございます。俺は私立落ちたんで、この学校に進学しました」
「結衣先輩は文武両道って感じで凄いですね」
「感じとはなんだ。文武両道でしっかり剣道にも生徒会にも励んでいる。もちろん、勉強もな」
「結衣さん、テストも常に学年トップクラスだもんね」
「葵、学校ではちゃんと敬語を使え。幼馴染とはいえ、規律を乱しては私の立つ瀬がなくなる」
「あ、そうだった……ごめんなさい」
少し罰の悪そうな顔になる葵。
「お前たち、部活は何にするか決めたのか?」
「私は陸上部」
「俺はサッカー部のつもりです」
二人とも中学からやってる部活をそのまま継続か。
そういう青春もあるんだろうけど、俺は……。
「俊太はどうするんだ?」
「俺は部活しないつもりです。少しでも彼女との時間作りたいので」
「俊太、彼女出来たのか」
少し意外そうな顔をする結衣先輩。
「昔は異性と話すらまともに出来なかったのに」
「結衣先輩、何年前の話してるんですか!」
「ふふ、俊太ももう子供じゃなくなってきてるな」
意味ありげな言い方をする結衣先輩。
「半年ほど前から付き合ってますよ。こいつ、彼女と同じ私立受けたのに落ちたんですよ」
隼人のやつ、人の傷口に塩を塗るようなことを。
「さっきの言葉はそういう意味か。彼女と大学一緒に行けるようにしっかり勉強しろよ」
「……頑張ります」
芽依が大学行くつもりなのか分からないから、今度聞いておかないとなぁ。
「陸上部は向こうで、サッカー部はあっちで勧誘やってるから、早めに行ってきな」
「はい」
葵と隼人は入部するためにそれぞれの勧誘場所に移動する。
「結衣先輩、俺はこれで」
「ああ、またな俊太」
結衣先輩に一礼し、俺は帰宅した。
帰り道に携帯を確認すると、芽依からメッセージが来ていた。
『入学式お疲れ様。新しい出会いがあるからって、浮気したらダメだよ!』
思わずニヤけそうになりながら、俺は芽依に返信した。
『芽依も入学式お疲れ様。浮気なんてするわけないじゃん。芽依が一番可愛いんだから。デートは土曜日で大丈夫?』
部活もいいものかもしれないが、今の俺には芽依との時間の方が大切だ。
しかしこの時の俺は知らなかった。この先に待っている俺の人生を大きく変える出会いと別れを。




