卒業式〜交わされた約束〜
結衣先輩に告白して約一週間が過ぎた。
なんの返事もなく、今日は卒業式。
「俊くん、結衣さんからの返事まだなの?」
「……ああ」
「結衣さんなに考えてるんだろ?」
「やっぱ俺じゃ無理なのかなぁ……」
「返事もらう前から弱気にならない!」
葵に励まされながら、俺は卒業式が行われる体育館へ向かった。
⸻
「俊くん」
卒業式が終わり教室に戻ったとき、葵に声をかけられる。
「どうした?」
「結衣さんから校門で待っててくれって連絡来てる」
「……分かった」
「何故だか分からないけど、私や隼人くん、それに李璃まで一緒に来てくれってさ」
それはもう告白の結果とか関係なくないか?
「最後だから、みんなで写真撮ろうってことかなぁ」
「……分からないけど、とりあえずホームルーム終わったらみんなで校門に行こ」
結衣先輩、一体いつ返事をくれるんだろう。
⸻
「待たせて悪いな」
放課後、四人で校門に集まっていたところに結衣先輩が来る。
「結衣さん、卒業おめでとう」
「おめでとうございます」
「みんなありがとう」
「私までいていいんですか?」
少し困惑気味の東さん。
「もちろんだ。李璃は隼人の彼女なんだから」
いつの間にか東さんのことを下の名前で呼ぶようになってたんだ。
「……ありがとうございます」
嬉しそうに笑う東さん。
「結衣さん、いつになったら俊くんに返事するの?」
葵のやつ、いきなりど直球な質問を……。
「今ここでするつもりで、みんなを呼んだんだ」
え?どういうこと?
「私は俊太のことが好きだ。葵ほど長くはないが、中学の時から俊太のことが好きだ」
え?そんな前から俺のことを……。
「言ったことなかったと思うが、私の理想は最初の彼氏が夫となることだ。そして、私とずっと一緒に歩んでいく人が、生半可な男であることは私のプライドが許さない」
「……」
俺は黙って真剣な表情の結衣先輩の話を聞く。
「私と同じ大学に入学出来れば、俊太と付き合う」
結衣先輩と同じ大学ってことは……俺も桜の門大学を目指すってこと!?
「結衣さんそれはさすがに……」
「俊にはあまりにも酷な条件じゃ……」
葵と隼人が俺を庇ってくれる。俺の今の成績では決して届かない高すぎる壁だ。
「我儘かもしれないが、私は俊太と同じ大学でキャンパスライフを送りたい。この一年、俊太の頑張りを見てきたが、しっかり勉強すれば俊太なら合格できる。そう信じている」
結衣先輩は俺のことをそこまで考えてくれているのか。
「分かりました。二年後の俺たちの卒業式に来てください。その時に改めて告白させてもらいます」
「俊くん……自分の言ってること分かってる?」
「俊、本気か?」
葵と隼人が心配してくれているが、俺は結衣先輩と同じ大学でキャンパスライフを送りたい。
「やります。約二年しっかり勉強して、俺も必ず桜の門大学に行くので、それまで待っていてください」
「もちろんだ。必ず来てくれると信じている。葵、隼人、李璃、俊太のこと頼んだぞ」
「う、うん」
「はい」
「分かりました」
今の俺では到底届かないことは分かっている。でも結衣先輩と付き合うためだ。この試練乗り切ってみせる。
「じゃあ私は後輩たちを待たせてるからこれで。俊太、約束破るんじゃないぞ」
「結衣先輩こそ、大学で彼氏作らないでくださいよ」
「当たり前だ。俊太こそ諦めて彼女作るんじゃないぞ」
「分かってます」
手を振りながら学校に戻っていく結衣先輩を俺たちは見送る。
「俊くん、本当にいいの?」
「なにが?」
「桜の門大学って、県内でもトップクラスの大学なんだよ」
「そうそう。そんな簡単に入れるわけないじゃねえぞ」
「分かってる。でも結衣先輩は将来のことまで考えて、俺にあんな条件を出してくれたんだ。その気持ちに俺は応えたい」
「藤岡くんって、ほんと真っ直ぐなんだね」
少し呆れ気味に東さんが呟く。
「好きになったら一直線。その子のためならなんだってする。それが俊だからな」
「そうだね。ここまで真っ直ぐな人、そうそういないと思う」
「葵はそんな俊が好きなんだもんな」
「私のことはいいの!俊くんには結衣さんがいるんだから」
「まだ正式に付き合えてないけどな。結衣先輩と付き合うためにも、俺頑張るよ」
「頑張れ俊くん」
「俺らに手伝えることはなんでも言ってくれ」
「私たちも勉強得意じゃないけど、サポートぐらいなら出来ると思うから」
「サンキュー。じゃあ俺帰って早速勉強するよ」
そう言って、俺は走って家路に向かった。
「ほんと、なんであいつはこう真っ直ぐなんだろうな」
「それが俊くんのいいところだからね」
みんなは心配してくれている。でも、やるしかない。
結衣先輩と付き合うためにも、行動あるのみ。




