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Invisible to the Eye 〜目には見えない大切なもの〜  作者: ダークキング


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決意〜本当に好きな人〜

「隼人、ちょっと相談があるんだけど……」

葵が俺に告白して一週間経った放課後の部活終わり、東さんが隼人に声をかける。

「どうしたんだ、そんな深刻《しんこく》そうな顔して……」

「葵のことなんだけど、藤岡くんから何か聞いてる?」

「……何も聞いてないけど?」

不思議そうな顔をする隼人。

「……そっか」

「やっぱなんかあったのか?あの二人」

「葵、バレンタインデーに藤岡くんに告白したの」

「え!で、結果は?」

「少し考えさせてくれって言われたみたいで、その返事がまだみたいなの」

「バレンタインデーってことは、一週間か。俊のやつそんなに待たせてるのか……」

「お節介かもしれないけど、隼人から藤岡くんに話してみてくれない?」

「……あいつ、素直に話してくれるかなぁ」

「隼人は親友なんだから、話してくれるんじゃないの?」

「あいつはあんまり俺に恋愛相談はしてこないからなぁ……。俺が経験なかったってのもあると思うけど」

「隼人って私が初めての彼女だもんね」

「……それはお互い様だろ」

二人して赤くなりながら微笑む。

「とりあえず、電話してみるよ。俊は一人で抱え込むタイプだから、多分ずっと悩んでるんだと思うし」

「葵には様子見するって言われてるけど、葵もそろそろ返事聞きたいだろうし……」

「分かった。帰りに電話して場合によっては公園にでも呼び出すよ」

「私は……いない方がいいよね」

「李璃には悪いけど、俊が気を遣《つか》わないようにするには俺と二人の方がいいだろうな」

「……だよね。じゃあ、隼人お願いね」

「了解」

⸻

「俊、今ちょっといいか?」

一人部屋でボーっとしているところに、隼人から電話がかかってきた。

「あ、ああ。どうした?」

「ちょっと話あるから、出てきてくれね?」

「桜公園でいいか?」

「ああ」

「今から向かう」

「おう、悪いな」

電話じゃできない話だから出てきてくれってことなんだろうけど、東さんと喧嘩でもしたか?

そんなこと考えながら桜公園に向かう。

「俊」

桜公園に着くと、すでに隼人が待っていた。

「おう、どうしたんだ?」

「……李璃に聞いたんだけど、葵に告白されたんだってな」

あ、そっちの話か。とりあえず別れ話とかじゃなくてよかった。

「あ、ああ」

「一週間も返事待ちって、何そんなに悩んでるんだ?」

相変わらず単刀直入なやつだ。

「……分からないんだ。誰のことが好きなのか」

「小野田さんのこと、諦められないのか?」

「……どうだろ?それも多少はあると思う」

「多少って……。後誰がいるんだよ?」

「……結衣先輩」

「なっ……」

意外そうな顔をする隼人。まぁそりゃそんな反応になるわな。

「葵の次に付き合いの長い相手だもんな。結衣先輩が恋愛対象に加わってるんじゃ、そりゃ悩むわ」

「結衣先輩は完璧人間だから、俺なんかがつり合うわけないって分かってはいるんだけどさ……」

「……そうか?」

「え?」

予想外の言葉に、俺は少し動揺《どうよう》してしまった。

「確かに結衣先輩はスタイルもいいし、美人だ。それに文武両道だけど、心配性で音痴だ」

隼人から見ても、結衣先輩は美人なんだ。

「俊も運動神経はいいし、勉強はやれば出来るタイプだ。背も高い方だし、つり合わないことないだろ」

「……そんなわけないだろ」

「俊も結衣先輩と同じお節介で、困った人を放って置けないタイプだ。十分似たもの同士だろ」

言われてみればそうなのか?

「俊は昔から自分のことを過小評価しすぎだ。お前がいい男なのは俺が保証する」

「隼人に保証されてもなぁ……」

思わず心の声が出てしまう。

「なんだとこのやろう」

笑いながら小突《こづ》いてくる隼人。

こいつのこういうなんでも思ったことを言える性格は、尊敬しかない。

俺はただ最もらしい理由を作って、自分が傷つかないように逃げていただけだったんだな。

「サンキュー隼人。おかげで決心がついたよ」

「お、いい顔になったじゃん。李璃的には葵とくっついて欲しかったんだろうけどな」

「葵のことばっか考えてた時期もあったけど、自分の気持ちに嘘はつけねえ」

「それでこそ俊だ。辛いだろうけど、葵にちゃんと返事してやれよ」

「……ああ。今から葵に連絡するよ」

「電話で返事するのか?」

「いや、会って直接話す」

「そういうとこ律儀《りちぎ》だよな」

「……普通じゃないのか?」

「電話やLINEで返事することも可能だろ?」

「それだとなんか……ちゃんと気持ちが伝わらない気がする」

「そういうとこも、結衣先輩と同じだと思う」

意外と俺と結衣先輩って共通点多いんだな。

「じゃあ、俺は邪魔しちゃ悪いから行くよ」

「あ、ああ。ありがとうな隼人」

「李璃にしっかりフォロー頼んでおくから、曖昧《あいまい》な返事するんじゃねえぞ」

そう言って去っていく隼人。

俺はほんといい友達を持ったもんだ。

俺は携帯を手にし、葵に電話をかける。

「もしもし」

「葵、いま大丈夫か?」

「うん……大丈夫だよ」

「急で悪いんだけど、桜公園に来てくれないか?」

「……分かった。すぐ行くね」

そう言って葵は電話を切った。

いつも振られる側だった俺が、振る側になるのか……。

芽依のときに振ってるとはいえ、告白を断るのは初めての経験だけに、なんかめちゃくちゃ緊張してきた。

「俊くん」

そんなことを考えてると、葵が来た。多分走ってきたな。

「葵、悪いな……。急に呼び出して」

「ううん、大丈夫」

「それと、一週間も待たせてごめん」

「……」

無言で首を振る葵。

「あれからずっと考えてたんだ。俺は一体誰のことを好きなんだろって。答えがなかなか出なかったから、葵をずっと待たせることになってしまった……。ごめんな」

「……」

無言で俺の話を聞く葵。心なしか、涙目になっている気がする。

「芽依と別れたときも、小野田さんに振られたときも、葵はずっとそばにいてくれた。芽依と付き合う前も、葵はいつも隣にいた。俺にとってそれは当たり前になってたんだけど、それは決して当たり前なんかじゃないんだよな。葵はいつから俺のこと好きだったの?」

「……小学四年生のころから」

ってことは六年以上か。そんなにずっと俺のことを好きだったのに俺は……。

「そっか……」

数秒の沈黙。

「でも……でも俺は……」

「もういいよ、俊くん」

「……え?」

「なんとなくだけど、答えは分かったから」

「……ごめん」

「俊くんが悪いわけじゃないよ……。でも、これだけは聞かせて。俊くんは……誰のことが好きなの?」

声を震《ふる》わせながら葵が言う。泣くのを我慢してるんだろうな……。

振られる側の気持ちをよく知っているだけに、スッと言葉が出ない。

「俺の好きな人は……」

数秒の沈黙。

「……結衣先輩」

「っ!」

驚く顔になる葵。

「告白したわけでもないからどうなるかは分からないけど、当たって砕《くだ》ける前に葵には返事しようと思ったんだ」

「……俊くんって律儀《りちぎ》だよね」

「え?」

「結衣さんに告白して振られたら私と付き合うって選択肢を作らずに、私に返事を先にするんだもん」

そういう考え方もあるのか。

「……それってなんか卑怯《ひきょう》じゃん」

「……そう言う真っ直ぐなとこも好きだよ」

涙を堪《こら》えながら空を見上げる葵。

「……ごめんな」

「謝らないで。でも結衣さんが相手じゃ……仕方ないよ」

葵の瞳から涙が溢《あふ》れ出る。

俺は葵にかける言葉が見つからない。

「……ってね」

堪《こら》えきれない涙を流しながら、なにかを呟《つぶや》いた葵。

(結衣さんなら、俊くんを幸せにしてくれる。だから私は笑顔で俊くんを送り出したいのに……涙が止まらない。)

「……頑張ってね俊くん」

そう言い残して葵は走って去っていった。

引きつった笑顔に震える唇。こんな葵の顔を見たのは初めてだった。

振られるのもキツいけど、振る側もこんなにキツいもんだったんだな。

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