それぞれの相談〜変わり始める関係〜
「終わったー」
三日間の期末テストが終わった。
葵との勉強は毎日行われ、そのおかげで少しは手応えのあるテストとなった。
「約一週間付き合ってくれてありがとうな、葵」
「え?」
「葵が毎日勉強見てくれたおかげで、今回のテストはいつもより出来た気がする」
「そうなの?それなら毎日一緒にやった甲斐があったよ」
嬉しそうに笑う葵。
葵の笑顔って、こんなに可愛かったかなぁ……。
「葵、ちょっといい?」
教室の外から東さんが葵を呼ぶ。
「どうしたの李璃」
「実は相談したいことがあるんだけど……」
深刻そうな顔をする東さん。
「なに?」
「ここじゃあれだから、放課後二人で会えない?」
「いいよ」
「ありがとう、じゃあまた後でね」
笑顔で教室に戻っていく東さん。
俺には何を話しているか分からなかったが、葵にお願い事でもあるのかな?
⸻
「ごめんね、葵。テスト終わりのオフの時間使わせちゃって」
「ううん、全然大丈夫だけど……なんでカラオケ?」
「誰にも聞かれたくないから。ここなら話を聞かれる心配もないでしょ?」
「徹底してるね……」
苦笑いする葵。
「実は……私クリスマスに隼人くんに告白しようと思うの」
「え?」
少し驚く葵。
「隼人くんと話す機会も増えたし、隼人くんの失恋から約三ヶ月経つからそろそろ勝負しようと思う」
「クリスマスに告白って、李璃は凄いよ」
「え、なんで?」
「私はクリスマスに誘う勇気すらないもん……。普通、好きじゃない人とクリスマス過ごさないでしょ?」
「葵……」
「李璃は勝機が十分あると思うよ。隼人くん最近李璃のこと意識し出してると思うし」
「ありがとう。葵はいつ勝負するの?」
「私は……」
「どんなに好きでも、言葉にしないと相手に伝わらないよ?」
「それは……そうなんだけど」
「藤岡くんは隼人くんより後に告白してるから、傷がまだ癒えてないかもしれないけど、好きって言わなきゃ何も始まらないよ」
「分かってる……分かってはいるんだけど……怖いの」
「怖い?」
「俊くんのことはずっと見てきた。でも俊くんが私を選んでくれたことは一度もない」
俯く葵。
「どういうこと?」
「俊くんとは幼稚園から一緒だけど、俊くんが告白した相手を何人も見てきた……。私は俊くんに恋愛対象として見られていない気がするの」
俯いた葵の瞳からは涙が溢れ出ていた。
「ずっと側にいるのが当たり前になってるのかもしれなけど、藤岡くんは葵が藤岡くんのことを好きって知らないんでしょ?」
「……多分」
「なら一歩踏み出さないと。葵は誰よりも藤岡くんのことが分かってるだろうけど、まずは相手に意識させないとダメだと思う」
「う、うん……。そうだよね」
「藤岡くんに『ただの幼馴染じゃない』って思ってもらえたら、葵の勝機は十分あると思うよ」
「そうかな?」
俯いていた顔が前を向く。
「十年以上一緒にいるんだから、普通のカップルよりお互いのこと分かってると思う」
「そうだね……。でも私はまだ心の準備が出来てないから、もう少しだけ様子見させて」
「もちろん、葵には葵のタイミングがあるんだから」
「李璃は隼人くんと、クリスマス二人っきりで過ごすの?」
「そのつもりだけど」
「それって最初から告白しますって雰囲気にならない?」
「言われてみれば……そうかも」
「じゃあ、四人で遊ぶ?」
「四人?」
「私と李璃と隼人くんと俊くんの四人」
「まるでダブルデートだね」
「ゆくゆくはそうなれるのが目標」
「そうだね」
「俊くんには私から李璃のバックアップを頼んでおくね」
「ありがとう。私頑張るね」
「李璃なら大丈夫。頑張れ」
お互い笑顔になる葵と東さん。
一方その頃俺と隼人は――
「テストどうだった?」
「葵がずっと付き合ってくれたおかげで、いつもよりは手応えある」
「よかったじゃん」
「隼人は?」
「俺は赤点の心配はないと思う。前回赤点だった教科もしっかり巻き返せてるはず」
「冬休み潰したくないもんな」
「間違いない」
「東さんとはどうなの?」
少し踏み込んだ質問をしてみる。
「ど、どうって?」
「ここ最近よく一緒にいるなぁって思ったからさ」
「部活一緒だし、監督の話を教えにきてくれたりしてくれるからな」
「それだけ隼人のことを好きなんだろ」
「そうか?ただのお節介な気もするけど」
「興味のない奴に世話焼くか?」
「それは……」
「二人が出会って約八ヶ月。東さんは多分出会った当初から隼人のことを好きみたいだし、後は隼人次第なんじゃないか」
「……」
「向こうからの告白を待つもよし、自分から告白するもよし」
「俊ならどうする?」
「……俺なら告白するな」
「相手も好きって分かってるからか?」
「いや、単純に告白って男からするもんだと思ってるから」
「お前ってそういうとこはしっかりしてるよな」
「そうか?」
「中学でも毎回告白してる側だったもんな」
「芽依だけ例外だったけどな」
「確かに」
小さな笑いがおこる。
「まぁ隼人が悔いの残らない選択をしたらいいさ」
「そう言うお前はいいのか?」
「なにが?」
「葵だよ」
「葵?」
「葵は俊のこと好きだと思うぞ」
「それって幼馴染としてじゃないのか?」
「お前って人の恋愛には敏感なくせに、自分の恋愛には疎いんだな」
「な……そんなことないだろ」
葵が俺のことを好き?隼人は一体何を根拠にそんなことを言ってるんだ?
「お前たちをずっと見てたんだ。いつからとか言われたら分からないけど、葵は俊のこと好きなんだろうなぁってのは、なんとなく分かる」
「……なんとなくかよ」
「興味のない相手と約一週間もテスト勉強するか普通」
言われてみればそれはそうかもしれないが……
「そうかもしれないけど、俺の場合夏休み補習になってるからじゃないの?」
「じゃあお前、好きでもない相手が補習になるかどうか気にするか?」
「……しないな」
「俺と李璃の関係も同じだけど、俊と葵もどちらかが動かないと何も変わらないぞ?」
「俺は自分で葵のことが好きなのか分からない」
「……そっか。まぁ時間はあるんだからゆっくり考えてみろよ」
いつの間にか隼人と帰る時の別れ道に着いていた。
「ああ、そうするよ」
「じゃあ、また明日な俊」
「ああ、また明日」
手を振って去っていく隼人。俺は葵のことをどう思っているんだろうか?
そもそも本当に葵は俺のことを好きなんだろうか?
そんなことを考えながら、俺は家路に着いた。




