テスト勉強〜気づき始めた恋心〜
「今日の放課後から、一緒に勉強しようね」
期末テストまで残り三日となった昼休み。予告通り葵が一緒に勉強しようと誘ってくる。
「どうせなら、隼人も誘わないか?」
「隼人くんも?」
「あいつ中間テストボロボロだったから、期末テスト巻き返さないと赤点になるだろ」
「確かに……」
俯く葵。少しの沈黙の後――
「じゃあ、みんなで勉強しよっか。李璃も誘っていい?」
「李璃って……東さんのことか。俺は別にいいぞ」
「よかった。隼人くんには俊くんから声かけといてね」
「ああ、分かった」
「李璃が来ることは隼人くんに内緒だよ」
「ああ、分かった」
葵、なんか考えてたみたいだけど、どうしたんだ?
⸻
「隼人、一緒にテスト勉強しようぜ」
放課後、俺は葵とのテスト勉強に隼人を誘う。
「ああ、別にいいけど……」
返事の割には歯切れの悪い隼人。
「いいけど……なんだよ?」
「……なんでもない。何処でやるんだ?」
「図書室」
「了解。じゃあ行こうぜ」
(俊のやつ、葵の好意を無碍にする気かよ。疎いやつだぜ)
隼人の心の声は俺に聞こえるわけもなく、こいつは……みたいな顔をされた気がするけど、気のせいか?としか思わなかった。
⸻
「あ、俊くんと隼人くんいた」
図書室で隼人と席取りをした直後に葵が東さんとやってきた。
「な、李璃も一緒なのかよ」
「そうだけど?」
完全に予想外の展開に驚く隼人。東さんが来ることは隼人には内緒にしてたからな。
「……私が一緒だとダメなの?」
「別にダメじゃないけど……」
「図書室なんだから静かにね」
こうして、俺たちは勉強を始めたが――
「静かすぎて集中出来ない」
「っていうか、これだと分からないところ聞きにくくないか?」
「確かに」
「教室でやる?」
「その方がいいかもな」
普段から図書室のような静かな場所に慣れていない四人だけに、図書室での勉強は無理があったようだ。
俺たちはそそくさと図書室から退散する。
(四人で勉強してたのかなぁ……。流石に私があの輪に入るわけにはいかないか……)
少し離れた席に小野田さんがいたことに、誰も気が付かなかった。
「葵、図書室で勉強でもしてたのか?」
図書室を出たところで、結衣先輩に遭遇する。
「あ、結衣さん。そうだよ、俊くんと隼人くんが補習にならないようにね」
「その割には、もう帰るのか?」
六限目が終わってまだ三十分しか経ってない。
「それが……図書室って静かすぎてやりにくかったから」
「なるほどな。じゃあ生徒会室使うか?」
「え?いいの?」
「誰もいないし、勉強に集中しやすい環境だからな」
結衣先輩っていつも生徒会室にいるイメージだけど、本当に第二の部屋みたいになってる気がする。
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」
(勉強を見るぐらいなら問題ないだろう。悪く思わないでくれよ葵)
「結衣先輩、どうかしました?」
「え?いや、なんでもないぞ?」
こうして勉強会は生徒会室で行われることになった。
⸻
「私のことは気にせず、勉強してくれ」
そう言って結衣先輩は自分のことをやっているようだが、気にせずというのも難しい気がする。特に東さんからすれば生徒会長が同じ空間にいるわけだし。
「これって……どうやるんだっけ?」
「これは……この方程式を応用して――」
隼人や葵は……まぁ気にせずできるよな。
今更、結衣先輩に気を使うような間柄じゃないわけだし。
それに比べて――
「……」
黙々と勉強している東さん。静かにしてなきゃみたいな気負いがあるのかも。
「俊くん、手が止まってるよ」
そんなことを考えていたら、葵に注意された。
「あ、ああ」
俺も中間テスト余裕があったわけじゃないから、しっかりやらないとな。
「俊太、英語のスペル間違ってるぞ」
後ろから結衣先輩に指摘される。
ってかいつの間に俺の後ろに来てたの?
「結衣さんは勉強しなくていいの?」
「私は普段から勉強しているから、テスト前だけしっかりやるということはあまりしないな」
さすが結衣先輩。成績優秀って言われてるだけあるなぁ。
「結衣さん生徒会長で忙しいのに、よく勉強する時間ありますね」
「隼人たちと違って、私は授業中に寝ることはないからな」
「な、なんでそれを……」
動揺する隼人。葵が結衣先輩に話したんだろうな。
「授業を真面目に聞いていれば、先生がテストに出るところを教えてくれるんだから、ある程度はそれで対策出来るものを……」
呆れた表情になる結衣先輩。それに関してはぐうの音も出ない。
「仕方ない。今日だけ私が二人の勉強を見てやる」
「お、お手柔らかにお願いします」
「何そんなかしこまってるんだ?俊」
お前は結衣先輩のスパルタぶりを知らないからそう言えるんだよ。
⸻
「もうこんな時間か。そろそろ帰るか?」
結衣先輩のスパルタ勉強会は二時間みっちり行われた。
「は、はい……」
隼人は疲れきってるな。
それにしても――
「東さんって集中力あるんだね」
「え?」
少し驚いた顔になる東さん。
「だって二時間以上ぶっ通しで、黙々と勉強してたし」
「そ、そうかなぁ。でも、少しぼーっとしちゃってた時もあったと思う」
結構冷静に自己分析出来るタイプの子なんだな。
「たまーに隼人くんのこと見てたもんね」
悪戯っぽく笑いながら葵が指摘する。
「そ、それは隼人くんの勉強の進み具合見てただけで……」
顔を真っ赤にしながら反論する東さん。
「こんなに一途に想ってくれる子はそうそういないんだから、大切にするんだぞ」
「ちょ、結衣さん。俺ら別に付き合ってるわけじゃ……」
慌てながら否定する隼人。
意外と隼人も東さんのこと意識し始めてるのかも。
「そうなのか?部活も同じみたいだし、結構お似合いだと思うぞ」
そういや結衣先輩って、昔からこういうことさらっと言うタイプだったな。
「結衣さんさらっと言いすぎ。二人とも赤くなってるじゃない」
「あー、すまない。ほら、早く片付けて帰ろう」
あまり反省してなさそう。
その後俺たちは帰り支度をして生徒会室を後にした。




