沈む心〜失恋と約束〜
「おはよう」
文化祭の次の日、沈んだ気分のまま俺は学校に登校した。
「おはよう……俊くん顔色悪いよ?」
「そうか?多分……大丈夫だ」
葵が心配してくれたが、俺はそのまま自分の席に行く。
「俊……告白の結果はダメだったみたいだな」
「え?どういうこと?」
隼人の言葉に驚く葵。
「昨日、俊は小野田さんに告白したんだ」
「そうなの?」
「文化祭で小野田さんの人気が高まった気がしたから、俺が背中押しちゃったんだよ……」
「でも、俊くんって昔から好きになったらすぐ行動する人だからね」
「確かに……。中学でもそれで何人かに振られて、その度に落ち込んでたな」
「芽依と付き合うまで、玉砕しかしてなかったもんね」
「しかもあれは向こうから告白してきてくれた激レアパターンだから、俊が告白した場合は勝率0だもんな」
「言われてみればそうかも。俊くんの思い立ったらすぐ行動は尊敬出来るところもあるけど、相手との距離を詰める前に動くから、失敗するんだと思う」
「ありゃ下手したらまた期末テストヤバいんじゃないのか?」
「確かに……。一学期は芽依と別れた後に期末テストで、結果はボロボロだったもんね」
「今回もそんなに期末テストまで時間ないから、葵がしっかりフォローしてあげればいいんじゃないか?」
「え?な、なんで私なのよ」
「俊の隣にいつも葵がいる。彼女がいた時は例外だけど、俊の側にいつも葵がいるじゃん」
「なによそれ……」
「好きなんじゃないのか?俊のこと」
「う、うるさいわね。隼人くんには関係ないでしょ」
「立て続けに失恋してるわけだから、今の俊に優しくすれば葵の良さに気づいてくれるかもよ?」
「なんか正々堂々とじゃない気がする……」
「葵は真面目だなぁ……」
「そういう隼人くんは、もう傷は癒えたの?」
「どうだろ?でも……だいぶ癒えた気はする」
「李璃のおかげで?」
「な、そんなんじゃねえよ」
「隼人くんも素直じゃないね」
「それはお互い様だろ?」
「そうかも」
何を話してるかは聞こえなかったが、二人が楽しそうに笑っていることだけは分かった。
昨日までなら、俺もあんな風に話せてたんだろうな……。
「お、おはよう」
そんなことを考えていた時、小野田さんが来た。
「お、おはよう」
必要最低限の会話。チラッと小野田さんの方を見ると、目が合ったがすぐ逸らしてしまう。
昨日までならもっと色々話せていたはずなのに、話しかける勇気がない。
隣の席の時に告白するんじゃなかったかもな……。
⸻
「今から席替えを行う」
六限目のホームルームがまさかの席替え。
正直今日は五限目までの授業内容を全く覚えていない。
授業中も小野田さんが気になって上の空だった。
チラチラと小野田さんを見るのも良くないと思うけど、隣の席なのでつい見てしまう。
隣の席だとギクシャクする未来しか見えないので、小野田さんと少し離れた席がいいな。
「一つ取って、順番に回してくれ」
人数分用意された紙を一つずつ取って後ろに回す。
紙に数字が書かれており、黒板に張り出された席順を確認して移動する。
シンプルな席替えだ。
その結果は――
「よろしくね、俊くん」
葵が隣の席となった。
「よろしく」
俺と葵は窓側の後ろから二番目の場所となり、隼人は前の入り口横になった。
そして隼人の隣が小野田さんになった。
「よろしくね、佐々木くん」
「こちらこそよろしく」
「佐々木くんはもう普段通りになってて安心した」
「心配してくれてありがとう。俊のやつはしばらく時間かかると思うけど、いつものことだから」
「そうなの?」
「中学の時も四人には振られてる。その度に落ち込んでたけど、ちゃんと元気になってるから大丈夫だよ」
「……だといいんだけど」
「俊は俺から見てもいいやつだけど、彼氏にってタイプではなかった?」
「……色々あったの」
「……そっか。変なこと聞いてごめん」
「ううん、大丈夫」
何を話してるのかは分からないけど、意外と普通に話せてる。隼人のやつ、もう傷は癒えたのかもなぁ。
⸻
「俊くん」
放課後、帰ろうとしたら葵に呼び止められる。
「どうした?」
「隼人くんに聞いたんだけど……みいに告白したの?」
「あ、ああ……」
あいつ、ほんとお喋りだなぁ。
「もう少ししたら期末テストだから、テスト期間一緒に勉強しない?」
「……テスト前日からでいいか?」
「そんなギリギリで大丈夫?」
「……多分」
「前補習受けることになってるんだから、テスト三日前ぐらいから一緒に勉強しよう」
「……分かった」
葵なりに心配してくれてるのかもな。
「冬休みに補習になっても、結衣さんは自分のことで忙しいんだから、冬休みは補習にならないようにしないとね」
「受験前だもんな」
「そう。だから結衣さんに心配かけないように、しっかり勉強しようね」
「分かった」
三年生にとっては最後の追い込みの時期。
そんな時に俺がまた補習になんてなったら、結衣先輩に迷惑かけちまうもんな。
あの人は自分のことを二の次にしてお節介を焼くタイプだし、しっかり勉強して赤点だけは阻止しないとな。
「じゃあ、私部活行くね」
「ああ、頑張れよ」
「ありがとう」
笑顔で手を振りながら去っていく葵。
こんな時でも俺の心配してくれるなんて、ほんと葵はお人好しだなぁ。




