失恋と告白〜気づかなかった想い〜
テストの赤点は、四十点以下の設定にしています。
体育祭が終わり、中間テストも終わった。
テスト終わりに席替えが行われ、俺の隣の席が小野田さんになった。
隼人は少し離れた席となり、隼人の隣の席が葵となった。
小野田さんに振られてから、明らかに落ち込んでた隼人にとっては、席が離れるのはいいことかもな。
「おはよう」
「おはよう」
あの日からも何も変わらない小野田さん。
「今日はテスト返却だけど、藤岡くんはテスト、自信ある?」
「いや、そんなに自信はないかな」
「私も……。赤点ないといいんだけど」
⸻
「テスト返すぞー。順番に取りに来い」
英語のテストの返却が始まる。
出席番号順にみんなが順番にテストを受け取る。
「小野田さん、どうだった?」
「五十四点。赤点じゃなくてよかった」
安堵した表情になる小野田さん。
「藤岡くんは?」
「俺は六十二点。俺も赤点じゃなくてよかったよ」
小さな笑いがおこる。
そんな光景を少し離れた席の隼人と葵が見ていることには全く気づいていない。
「隼人くん、何点だった?」
「……二十九点」
「赤点じゃん……」
「葵は?」
「四十二点。ギリギリセーフだったよ」
「……よかったな」
「隼人くん……大丈夫?」
「あんま大丈夫じゃない……。俊は楽しそうで羨ましいぜ」
「そうだね……。俊くんもみいのこと好きなのかなぁ……」
「どうなんだろうな……」
明らかに落ち込んでる隼人。初めての告白が失敗したんだから、落ち込むのも無理はないけど。
⸻
「葵、ちょっといい?」
昼休み、東さんが葵を呼ぶ。
「どうしたの李璃」
「佐々木くん、大丈夫そう?」
「あんまり大丈夫じゃないかも……。テストも赤点あるし」
「部活でもあまり集中出来てなくて、レギュラー争いから外されちゃってるの」
「そうなんだ……。時間が解決してくれることもあるかもしれないけど、同じクラスのみいに振られてるだけに、なかなか立ち直れないのかも」
「……葵、私頑張る」
「え?」
「私が佐々木くんを立ち直れるように頑張る」
「頑張るって……」
「もうあんな落ち込んでる佐々木くん見てられない。私が励ましまくって、前までの元気な佐々木くんにする」
やる気満々な東さん。
「葵、協力して欲しいことがあるの」
「なに?」
「佐々木くん……隼人くんの好きな食べ物とか教えて」
「本気みたいね……。なら私も全力で応援する。後で隼人くんの好物一覧送っとく」
「ありがとう、葵」
「頑張れ李璃」
笑顔になる二人。
⸻
「佐々木くん、ちょっといい?」
部活終わり、東さんが隼人に声をかける。
「どうした?李璃」
「佐々木くんのこと、隼人くんって呼んでいい?」
「突然だな……。別にいいけど?」
「ありがとう」
嬉しそうに笑う東さん。
「よかったら……帰りに一緒にコンビニ行かない?」
「……いいけど。どうしたんだお前?」
「な、なにが?」
「急になんか張り切ってるみたいだからさ」
「そ、そんなことないよ。ほら、行こ」
少し離れた場所から――
「頑張れ、李璃」
葵が隠れて二人の様子を見ていた。
「葵、こんなとこでなにしてるんだ?」
そこに結衣先輩が来る。
「え?あ、結衣さん」
「こんなところで何してるんだ?」
「友達の恋の応援」
「昔から世話焼きだな葵は」
「今回は相手の男の子が隼人くんだよ」
「隼人を好きな子がいるのか。それは是非とも結ばれてほしいな」
「隼人くん、体育祭の後失恋して、テストボロボロだったから、新しい恋をして元気になってもらいたいの」
「そんなことがあったのか」
「それに隼人くんのことを好きな李璃は、四月からずっと隼人くんのことが好きな子だし、応援してあげたいんだ」
「それでも、尾行することは辞めておいた方がいいぞ」
「それは……そうだよね」
「なにかあったらいつでも私にも相談してきてくれ。隼人のことをそんなに好きでいてくれる人なんてそうはいないだろうし」
そう言い残して、結衣先輩は生徒会室のある校舎に向かった。
(隼人くん、結構人気あるんだけどなぁ……。結衣さん知らなかったのかなぁ)
その頃、隼人と東さんは――
「はい、ミルクティー」
「あ、ありがとう」
コンビニで飲み物を買って、近くの公園のベンチにいた。
「テスト、赤点あったんだってね」
「な……悪いかよ」
「いいことではないけど、隼人くんならちゃんと勉強すれば赤点なしでいけたと思う」
「……かもな」
「すぐに切り替えるのは難しいかもしれないけど、いつでも私は隼人くんの味方だからね」
「……どうした?急に」
「振られて落ち込んで、テストもサッカーも上手くいってないんだと思うけど……。でも私は、隼人くんがほんとうは凄い人だって知ってるから」
「……」
少し驚いた表情をしながらも無言で聞く隼人。
(このまま言っちゃっていいのかなぁ……。タイミングってものがあるかもしれないけど……)
少しの沈黙。
「一年の時からレギュラー争い出来るぐらいサッカー上手いし、チームを鼓舞するムードメーカー。私はそんな隼人くんが大好きなの」
「え……」
目を見開く隼人。
全く予想していなかった言葉を聞いた顔になる。
「すぐには無理かもしれないけど、愚痴でもなんでも聞くから、早く元気出してね隼人」
「あ、ありがとう」
「じゃあ、私帰るね」
走って帰っていく東さん。
「あいつ……言いたいこと全部言っていきやがったな。こんな状態の俺でも好きでいてくれる人がいるもんなんだな」
街灯の灯る夜空を見上げながら、隼人は独り言のように呟いた。
心の奥に引っかかっていたものが、少し取れた気がした。




