↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Invisible to the Eye 〜目には見えない大切なもの〜  作者: ダークキング


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/33

体育祭〜負けられない戦い〜

「いよいよ体育祭か」

体育祭当日。十月とはいえ、陽射《ひざ》しがあるとまだ暑いぐらいだ。

「いよいよだね。活躍するぞー」

陸上部だけあって、大いに活躍してくれそうな葵。

「俺の自慢の脚力を見せてやるぜ」

隼人はやる気満々だな。二〇〇mだけが目的じゃないってことは、俺だけが知っている。

「運動は苦手だけど、私も頑張るよ」

やる気満々な小野田さん。ってあれ?

「小野田さんって、カチューシャ付けてたっけ?」

いつもと違う格好に違和感があった。

「髪が邪魔にならないように、運動する時だけ付けてるの」

「そうなんだ。似合ってるよ」

「ありがとう」

そんな何気ない会話すら、隼人から痛い視線が飛んでくる。

あいつ彼女出来たら独占欲強そうだなぁ……。

⸻

「続いて男子二〇〇mです」

体育祭が始まり少しプログラムが進んだ頃、隼人の見せ場がやってくる。

「隼人くん、なんかいつもより表情固いね」

「そうだな……」

張り切りすぎて怪我しなきゃいいけど……。

「佐々木くん、足速そうだから楽しみ」

小野田さんは、隼人が一位取ったら告白されるだなんて夢にも思ってないかもな。

「佐々木くん、頑張れ……」

東さんも応援してるけど、隼人が一位だと小野田さんに告白しちゃうんだよなぁ。

東さんは知ってるわけないから、応援するのが普通なんだけど……。

「次、隼人くんだよ」

隼人、一位も大事だけど、怪我せず戻ってこいよ。

「位置に着いて、よーい」

パァン

一斉にスタートする。

序盤は五人中二位の隼人。

「隼人くん、がんばれー」

「佐々木くん、もうちょっとだよー」

小野田さんの応援が聞こえたのか、隼人のスピードが少し上がった。

最後の直線で一位に並ぶ。

「隼人、いけー」

そして――僅かだが隼人の身体が前に出てゴール。

マジで一位取りやがった。凄いなぁあいつ。

⸻

「お疲れ」

「サンキュー」

グータッチを交わす俺と隼人。

「佐々木くん、めちゃくちゃカッコ良かったよ」

「ありがとう」

小野田さんにカッコ良かったと言われて嬉しそうな隼人。

これで体育祭終わりに、隼人が小野田さんに告白か。

上手くいくといいけど。

⸻

「葵、ちょっといい?」

体育祭前半戦も間もなく終了。

そんな時、クラスの子に葵が呼ばれる。

「なに?」

「今日一〇〇m出る予定だった田中さんが体調不良で休みだから、代役で葵走ってくれない?」

「え……」

「葵陸上部だし、足速いと思うからお願い」

「……分かった」

走るの好きな葵が迷うなんて珍しいなぁ。

「葵、なんかあったのか?」

「え!」

「いつもの葵なら、二つ返事で走るって言うところだと思ったから」

「あ……まぁ色々あるのよ」

色々ねぇ……。

「じゃあ、私行ってくるね」

「おう、頑張れよ葵」

色々ってなんだろう?

俺がそんなことを思っている時、集合場所では――

「葵、どうしたの?」

葵が集合場所に来たことに驚く東さん。

「実は……一〇〇m出る予定だった田中さんが体調不良で休んじゃったから、代役頼まれての……」

「嘘、その子私と同じ組だよ……」

「どうしよう……」

「葵、手加減なんてしたら許さないからね」

「え?」

東さんの言葉に驚く葵。

「手加減した葵に勝っても、本当の一位じゃない。だから、ちゃんと本気で走ってね」

「でも……」

「私は葵に負けるなんて少しも思ってないから」

真剣な眼差しで言う東さん。

「……分かった。負けないからね」

「そうこなくっちゃ」

そんな会話が行われていることを俺は知らなかったが、遠くから見ても二人ともいい顔してることだけは分かった。

⸻

「続いて女子一〇〇mです」

葵は陸上部で、専門は走り幅跳び。

確かに走る競技ではないとはいえ、運動神経抜群なんだから、断る理由がないだろうに。

東さんとの会話内容が気になるが、しっかり葵を応援しよう。

「絶対負けない」

「私だって」

やる気満々の二人。

「位置について、よーい」

パァン

一斉に飛び出す。

葵と東さんが他の三人を突き放す。

「二人ともめちゃくちゃ速いなぁ」

「李璃は女子サッカー部の中では、一番速いからな」

東さんって凄い選手なんだ。

「葵、頑張れー」

「李璃、負けるなー」

俺と隼人の声援を受ける二人。

どちらも全く引かないスピード勝負。

そして――最後の最後に葵が飛び出した。

「わ、私の……勝ち」

「ま、負けた……」

「でも……本当によかったの?」

「いいの……今はまだその時じゃない。きっとそういうことだから」

「李璃……」

「葵と同じで、私もしばらく様子見だね」

悔しさを押し殺すように笑う。

「李璃……これからもお互い頑張ろう」

「うん、恋に部活に頑張ろう」

会話内容が聞こえなくても、お互いいい顔してるってことは分かった。


「次、俊太の出るやつじゃないのか?」

昼休憩を挟んで、体育祭も後半戦。

「やっと出番か……。行ってくる」

「頑張れよ」

「運任せなとこもあるけど、頑張るよ」

隼人に激励されながら集合場所へ行く。

運任せな理由は――

「続いて借り物競走です」

俺の出る種目は借り物競走。

お題が何になるかで難易度が変わる。

運任せな種目なので、ブランクのある俺でもいけるだろう。

「位置について、よーい」

パァン

お題が置かれたテーブルへ一斉に向かう。

少し迷って紙を手に取る。

書かれているお題は――

「カチューシャ?」

俺は思わず声に出して読んでしまった。

カチューシャってことは……小野田さんか。

「小野田さん!」

「え?」

俺が走ってきたことに驚く小野田さん。

「一緒に来てくれ」

俺は小野田さんに向かって手を差し出す。

なんでかお題の相手と手を取ってゴールすることになっている。

「……分かった」

少し戸惑いながらも、俺の手を取って一緒に走ってくれる小野田さん。

「俊のやつ……お題なんだったんだ?」

隼人が怒っていることは見なくても分かってはいた。

「なんだろうね?最近仲良くなった友達とか?」

葵はトンチが効きすぎだ。

「それ証明出来ないだろ」

「……確かにそうだね」

隼人と葵がそんな会話をしているうちに、俺はゴールしていた。

「ありがとう、小野田さん」

「お題、なんだったの?」

「カチューシャ」

「ピンポイントだね」

「お題見た瞬間、小野田さんだ!ってなった」

「私がカチューシャ付けててよかったね」

「助かったよ。ありがとう」

「じゃあ、私は先に戻ってるね」

手を振りながら戻っていく小野田さん。

異性の手を握ったのって……芽依以来か。

小野田さんの手、柔らかかったなぁ。

⸻

「じゃあ私行ってくるね」

体育祭もいよいよクライマックス。

体育祭で一、二を争うメインイベントに小野田さんは出場するようだ。

「続いてクラブ対抗リレーです」

運動部、文化部も関係なく行われるクラブ対抗リレー。

さすがに運動部と文化部は分けて走るが、文化部も走るってのが凄いなぁ。

「クラブ対抗リレーって、ほとんどの部活は三年しか出ないのに、小野田さん選ばれてるんだなぁ」

「料理部、人数少ないんじゃないの?」

リレーに参加するのは五人。小野田さんを料理部に誘っていた子も走るようなので、人数ギリギリなのかもしれないなぁ。

「俊くん、隼人くん。結衣さん走るから応援しよ」

「陸上部の応援はしなくていいのか?」

「陸上部と剣道部は同じ組じゃないから」

「なら安心だな」

「サッカー部も違うみたいだから、俺も応援して大丈夫だ」

「やっぱ結衣先輩がアンカーかな?」

「主将がアンカーじゃないといけないとかはないと思うけど、結衣さんはアンカー走りそうだね」

「責任感の塊《かたまり》みたいな人だもんな」

「クラブ対抗リレー、一組目スタートです」

一人グランド半周。スタート位置のところの控えの後ろに結衣先輩。やはりアンカーのようだ。

「位置について、よーい」

パァン

一斉に飛び出す。

何部か分かりやすいようになのか、競技に使うものをバトン代わりに使う。

バレーボールを持って走るバレー部。

ゴーグルを持って走る水泳部。

ラケットを持って走る卓球部とテニス部。

剣道部はもちろん竹刀。

竹刀は長いから、バトンとして使うには有利な気もする。

しかし――

「剣道部、少し遅れ気味だね」

最下位スタートとなり、他の部活に引き離されている。

「結衣さん、アンカーだからハンデめちゃくちゃあるな」

四走目の時点で最下位がほぼ確実と言える差がある。

「結衣先輩、頑張ってください」

「結衣さーん、がんばれー」

竹刀を受け取る結衣先輩。

一気に加速する。

「結衣さんって足速いなぁ」

結衣先輩のスピードに驚く隼人。

「剣道部は防具が重いからスタミナ強化のためにってよく走ってるもん」

インターハイ出場選手だけあって、凄い努力したんだろうなぁ。

「結衣さん、いけー!」

三〇mあった差が、あっという間に無くなる。

「結衣先輩って、ほんとなんでも出来るよなぁ」

最下位確定と思われていたが、最後に二人抜きで三位で終えた。

「結衣さん凄すぎでしょ」

嬉しそうに笑う葵。結衣先輩に苦手なことなんてあるのかなぁ。

「続いては文化部です」

文化部も同じく、部活に応じてバトンを使うようだ。

競技カルタ部はカルタをバトンって、短すぎて渡せるのかあれ?

料理部は、フライパンがバトン代わりのようだ。

「いきなり小野田さんか」

「小野田さんって足速いのかなぁ?」

「球技は苦手だけど、走るのは好きみたい」

運動が苦手っていうのは、球技とかのことだったのかな?

「位置について、よーい」

パァン

一斉に飛び出す中で、一人だけ飛び出す。

「小野田さん、普通に速いじゃん」

「運動部でもあれならいい線いくだろ」

想像以上のスピードに俺と隼人は驚いた。

小野田さんは一位でバトンを繋いだが――結果は三位だった。

⸻

「お疲れ様」

「ありがとう」

リレーを終えて戻ってきた小野田さん。

「小野田さん、めっちゃ足速いじゃん」

少し興奮気味に隼人が声をかける。

「そ、そんなことないよ。文化部の中では速いってだけだから」

「いやいやいや、運動部でもあの速さなら引けを取らないと思うよ」

「そう?ありがとう」

嬉しそうに笑う小野田さん。

もうすぐ体育祭も終わるが、隼人のやつ、いつ小野田さんに告白する気なんだ?

⸻

「俊、ちょっといいか?」

体育祭も終わり、教室に戻ろうとしたところで隼人に声をかけられる。

「どうした?」

「例のやつなんだけど……」

告白を例のやつって言うのはお前ぐらいだろうな。

「人目の付きにくい校舎裏に、小野田さん呼び出そうと思うんだけど……」

「いいんじゃね?」

「それで、小野田さんに放課後校舎裏に来るように伝えてくれないか?」

「こういうのって……普通は自分で伝えるもんなんじゃないのか?」

「それが出来たら苦労しねえよ」

「初めてだもんな」

「噛《か》みまくる自信しかない。だから頼むよ俊」

「……仕方ねぇな」

「じゃあ、頼んだぜ」

そう言い残して走っていく隼人。

隼人の初告白はどうなることやら。

⸻

「小野田さん、ちょっといい?」

放課後、俺は隼人のために小野田さんに声をかける。

「どうしたの?」

「今日って時間ある?」

「大丈夫だけど?」

「隼人が話があるみたいで……校舎裏に行ってあげてくれない?」

「……分かった」

あまり乗り気じゃなさそうな小野田さん。

この会話だけである程度内容は理解したのかもしれない。

隼人が小野田さんに告白か……。

大切な友の告白なのに、モヤモヤした感覚があるのはなんでなんだろ?

俺ってもしかして小野田さんのこと好きなのか?

その頃、校舎裏では――

「佐々木くん、話ってなに?」

水分はしっかり摂ったのに喉が渇く。

サッカーの試合のPKを蹴る時より心臓の鼓動が大きい。

逃げ出したい気持ちを押し殺して、口を開いた。

「小野田さん、わざわざ呼び出してごめん。今日俺二〇〇mで一位取れたら、小野田さんに言うって決めてたことがあるんだ」

「……」

無言で隼人の話を聞く小野田さん。

「俺、小野田さんのことが好きです。転校してきたあの日から、ずっと好きです。俺と付き合ってください」

深々とお辞儀する隼人。

「呼ばれた時点でそんな気はしてたけど……ごめんなさい」

「え……」

「佐々木くんは面白いし、一緒にいて楽しい友達だと思ってるの。だから私は佐々木くんをまだ異性として見れてないの。……ごめんなさい」

「そ、そっか……」

「ごめんね」

そう言い残して小野田さんは校舎裏を後にした。

校舎裏に立ち尽くし、小野田さんの背中を見送るしかできない隼人。

校舎の方から聞こえる喧騒《けんそう》が、嫌に大きく聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。