体育祭前夜〜交差する想い〜
「テストの前に体育祭があるのって変じゃね?」
10月になってすく体育祭が行われる日程。
体育祭が終わるとすぐに中間テスト。
運動部も文化部も大変だろうけど、帰宅部の俺からしても鬼の日程だ。
「仕方ないんじゃない?そこにしか予定入れられなかったとかかもしれないし」
「二年生の修学旅行の都合上、こうするしかないみたいだぞ」
体育祭前日、俺は葵や隼人と体育祭の準備をしながら、そんなことをぼやく。
「運動部なら困らないかもしれないけど、文化部や帰宅部の人には厳しい日程よね」
小野田さんが俺の意見に同意してくれる。
「そうだよな。体育祭で疲れ果てて、その三日後に中間テストって鬼の日程だよ」
「文句言っても仕方ないんだから、頑張ろうぜ」
「俊くん、中学では野球してたんだし、そこまで体力落ちてないんじゃないの?」
「一年以上ブランクあるんだから、確実に体力落ちてるって……」
「藤岡くん、野球してたんだ」
「そうだよ。軟式だから高校とはボールも違うけどね」
「うちの野球部は硬式しかないもんな」
「野球部入ろうとは思わなかったの?」
「あの時の俺は思わなかったなぁ……恋愛第一だったし」
「藤岡くんって一途なんだね」
「普通はそういうもんだと思うんだけど?」
「そういう人、素敵だと思う」
「あ、ありがとう」
不意な言葉に少しドキッとしてしまった。
異性に素敵なんて言われたの芽依以来かもなぁ……。
⸻
「俊、ちょっといいか?」
体育祭の準備も終わり、教室に戻ろうとしたところで隼人に声をかけられる。
「どうした?」
「ちょっと相談があるんだけど……」
隼人が相談って珍しいなぁ。
「相談?」
「俺、体育祭の二〇〇mで一位取れたら、小野田さんに告白しようと思うんだ」
「マジか!」
予想外の相談内容に、思わず大きな声が出てしまった。
「声がデケエよ!」
「わ、悪い」
「いけると思うか?」
「どうだろうな……ってか別に一位じゃなくてもよくね?」
「願掛けも兼ねてるんだよ」
初めての告白だろうし、願掛けもしたくなるか。
「上手く行くかどうかは俺にも分からないけど、動かなきゃ何も進まないもんな」
「そうだよな……よし俺頑張るよ」
「おう、頑張れ隼人」
「ありがとうな、俊」
そう言い残して教室へ駆け足で戻っていく隼人。
隼人が小野田さんに告白か……。
応援してあげたい気持ちがあるはずなのに、このモヤモヤした感覚はなんなんだろう……。
俺と隼人が二人で話をしていた頃――
「葵、ちょっといい?」
葵に話しかける東さん。
「どうしたの李璃」
「相談があるんだけど……」
「相談?」
「明日の体育祭、私一〇〇mに出るんだけど、そこで一位取れたら佐々木くんに告白しようと思うの」
「え!そうなの!」
「葵、声が大きい……」
「あ、ごめん」
「上手くいくかなぁ……」
「強力なライバルがいるけど、こればっかりはやってみないと始まらないと思う」
「そ、そうかなぁ」
「隼人くんはそもそも李璃が自分のことを好きでいてくれてることすら気づいてないと思うから、告白して気持ちを伝えることが大事だと思う」
「そっか……私頑張る」
「うん、応援してる」
「葵は告白しないの?」
「私は……俊くんがまだ前の恋愛引きずってそうだから、もう少し様子見のつもり」
「そうなんだ……」
「タイミングって大事だと思うからさ」
「そうだね、一方通行になったら意味ないもんね」
「そういうこと。私のことはいいから、李璃は隼人くんと付き合えるように頑張ってね」
「うん、ありがとう葵」
奇しくもお互い体育祭で告白を考えている二人。
いろんな想いが交錯する体育祭になることを、誰も知る由がなかった。




