転校生〜動き出す恋心〜
「今日から二学期か」
九月になったとはいえ、陽射しがあると汗が止まらない暑さだ。
今日は始業式。いつも通り一人で登校していると、前に見たことあるような、ないような子が歩いていた。
(同じ制服ってことは……同じ学校なんだろうけど、あんな子うちの学校にいたっけな……)
そう心の中で呟きながら、俺は校門をくぐった。
⸻
「起立」
いつもの号令を聞いて、二学期の始まりを実感する。
「礼、着席」
「みんな、おはよう。早速だが、今日は転校生が来ている」
「転校生!?」
ざわつく教室。
「入っていいぞ」
――ガラガラガラ
あれ?この子、さっき来る時に見た子じゃん。
「自己紹介を」
「はい、小野田みいです。引っ越して来たばかりで右も左も分からない状態ですが、よろしくお願いします」
「俊、この子って夏祭りのときの……」
隼人のこの言葉で俺は自分の中のモヤモヤが吹っ切れた。だから見たことがあったのか。
「小野田の席は一番右端の席だ」
一番右端って……俺の後ろの席じゃん。
振り返ると後ろに机と椅子があった。全然気づかなかった……。
⸻
「小野田さんってどこから来たの?」
始業式の後、転校生にはお馴染みの会話が繰り広げられる。
それにしても、隼人はよくこの子を見ただけで夏祭りの時の子だって分かったなぁ。
ピアスも外してネイルもしていないと、ぱっと見は別人に見えるもんだろうに。
転校生が来たって話は始業式の間に他クラスにも伝わったのか、教室の外にまで人だかりができていた。
「小野田さん、部活はしないの?」
クラスの誰かが質問する。
「部活はまだ決めてないけど、私運動苦手だからなぁ……」
「じゃあ、料理部はどう?」
うちの学校、料理部なんてあるんだ。
「料理は好きだからいいかも」
料理好きなんだ。
「じゃあ見学においでよ」
「うん、行く行く」
転校生の部活はさらっと料理部に決まったようだ。
「俊、ちょっと」
少し離れた場所から隼人に呼ばれる。どうやら人だかりで自分の席にたどり着けなくなっているようだ。
「どうした?」
「小野田さんってやっぱ近くで見てもめちゃくちゃ可愛いよな」
すっかり隼人はメロメロ状態だ。
「ああ、可愛いけど……。お前、あの子のことはいいのか?」
「あの子?」
「東さんだよ」
「あー李璃は恋愛対象として見てないから問題ない」
さらっと言ってやるな……。本人が聞いたら悲しむぞ。
「最初の彼女は慎重に選ぶんじゃなかったのか?」
「小野田さんは俺の好みドンピシャだから、あの子しかありえない」
まだ会ったばかりなのに……。隼人ってギャル好きだったのか。
「俊くん」
二学期が始まって数日後、教室に着くなり葵に呼ばれる。
「どうした?」
「俊くん今日日直でしょ?小野田さんも日直だから、色々教えてあげて」
「あー、了解」
「小野田さんまだ学校に慣れてないから、俊くんしっかりフォローしてあげてね」
「了解」
転校してまだ数日なのに日直なのか。転校生だからって特例で飛ばさないんだな。
「長谷川さんって、藤岡くんと仲良いんだね」
「幼馴染だから」
「そうなんだ。よろしくね藤岡くん」
笑顔で挨拶する小野田さん。
「こちらこそよろしく」
⸻
日直の仕事といっても、メインは日誌。それ以外は黒板消したりぐらいなので、ほとんど教えることもなく、放課後になる。
「ほとんど任せることになってゴメンね」
申し訳なさそうに謝る小野田さん。
「全然大丈夫だよ。転校してきてすぐに日直なんて言われても、なにしたらいいか分からないだろうし」
「藤岡くんって優しいね」
「……そうかなぁ」
「普通こんなに全部やってくれないと思うからさ」
「もし次一緒に日直になったら、その時は色々フォローしてくれたらいいよ」
「了解」
そう言いながら微笑む小野田さん。やっぱ可愛いなぁ。
芽依とのこと以来恋愛に億劫になっていた。
それなのに⸻
小野田さんのことが気になり始めている自分がいる。




