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Invisible to the Eye 〜目には見えない大切なもの〜  作者: ダークキング


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11/33

夏祭り〜揺れ始める恋心〜

「もうすぐ夏休みも終わりか……」

八月も終わりに近づき、夏休みも残り僅《わず》かとなった。

まだ蝉《せみ》の鳴き声は聞こえるが、少しずつ秋の気配を感じる。

毎年恒例の地元での夏祭り。今年は久しぶりに葵、隼人、結衣先輩の三人と一緒に行くことになっている。

「俊くん、補習はしっかり行ってたみたいだけど、夏休みの宿題は終わった?」

「あー、ほとんど終わってる」

「間に合いそう?」

「多分……」

「間に合いそうになかったらいつでも言ってね」

「ああ、サンキュー」

後は数学と英語だけだから、なんとかなるはず……多分。

「お、来た来た」

待ち合わせ場所には既に結衣先輩が来ていた。

「結衣先輩、早いですね」

待ち合わせ時間までまだ10分ある。

「時間に余裕を持つことは大切なことだからな。私が遅刻なんてしたら、立場上困るからな」

学校の外とはいえ、うちの生徒も夏祭り来てるだろうし、生徒会長として威厳《いげん》を保《たも》たないといけないんだろうな。

「お待たせ〜って俺が最後か」

時間ギリギリに隼人がやって来た。

「ギリギリだが、遅刻していないから良しとしよう」

「ありがとうございます結衣さん」

いつの間にか隼人も結衣さん呼びになってるのか。隼人は部活してるから、結衣先輩と会うこと多いだろうし、少しずつ昔の呼び方に戻してるのかもな。

「それじゃあ、行こうか」

毎年恒例の夏祭りだけあり、人がとても多い。

「待ち合わせ場所決めとく?」

「屋台行ったりすると、場所決めとかないと合流しにくそうだもんな」

「昔よく集まった、あの木まだあるかなぁ」

小学生の頃にみんなで来た際に集合場所にしていた大きな木。懐かしいなぁ。

「あの木はまだあるはずだから、そこに集合するようにしよう」

「じゃあ、とりあえず各々食べ物買いに行こ」

お祭りってこともあるんだろうけど、こんな楽しそうな葵見るの久しぶりだなぁ。

「俊、たこ焼き買いに行こうぜ」

「いいぜ」

俺は隼人とたこ焼きを買いに行く。

その時――

「俊、あれ見てみろよ」

隼人が視線で合図を出した。

「可愛いなぁ……」

「だろ?うちの学校ではああいうギャルな子いないから、新鮮だよなぁ」

俺たち二人は少しの間、その女の子に見惚れてしまっていた。

茶髪で焼けた肌。ピアスもしていて爪はネイルが塗《ぬ》られている。

「あんまり見てると変な人に思われそうだし、そろそろ行こうぜ」

「確かに。って言っても元々は隼人が言い出したんじゃん」

「でも可愛いギャル見れたし、いいじゃねえか」

この時の俺たちはまだ知らなかった。このギャルな女の子を巡《めぐ》って、俺と隼人が対立することになることを。

⸻

隼人とたこ焼きを買い終わったところで、後ろから視線を感じ、振り返ると――

「おい隼人、あの子も来てるぞ」

少し離れてはいるが、背の高い女の子。

前のときより日焼けしているが、間違いなくサッカー部のあの子だろう。

「あ、李璃《りり》も来てるのか」

「お、もう下の名前で呼ぶ仲になったのか?」

少しからかうように言ってみる。

「そんなんじゃねぇよ。先輩で東さんがいるから呼び分けるためだ」

「なんだ……そうなのか。おれはてっきり……」

「俺からしたら同じ部活の子ってだけだ」

「話しかけて来たらどうだ?」

「いいよ別に。向こうも何人かで来てるみたいだし」

なかなか恋には発展しないようだ。

一方東さんサイドでは――

「李璃、さっきからずっと何見てるのかと思えば、佐々木くんじゃん」

「話しかけて来たら?」

「い、いいよ。佐々木くん友達と来てるみたいだし……」

「しっかりアピールしないと、他の女の子に取られちゃうぞ」

「アピールって言われても……」

「李璃はサッカーでは積極的なのに、恋になると消極的になるんだから……」

そんな会話がされていることは、もちろん俺や隼人は知らない。

⸻

「俊くん、隼人くん、こっちこっち」

隼人と色々買って待ち合わせ場所に行くと、葵が既に来ていた。

「早かったな葵。結衣先輩は?」

「それが……結衣さん人気だから捕まってる」

「?」

俺は意味が理解できなかったが、葵の指差す先の光景を見て納得した。

「結衣先輩って、女子に人気なの?」

「なんだ俊、知らなかったのか?結衣さんは女子にめちゃくちゃ人気あるんだぜ」

「結衣さん、文武両道《ぶんぶりょうどう》でカッコいい女性って人気なんだ」

女子に囲まれている結衣先輩は少し困っているようにも見えたが、こういう時じゃないと話しかけられない子もいるだろうからなぁ。

「あれって、助けに行かなくていいのか?」

「男の人に囲まれたりしてるならともかく、女の子に囲まれてるだけだから大丈夫じゃないかな?」

「でも、もうすぐ花火の時間になるんじゃね?」

隼人の言葉で時間を確認する。後十分ほどで花火が上がる時間になる。

「結衣先輩なにも食べれてなさそうだし、呼んでくるよ」

俺は結衣先輩を呼びに行くことにした。

「結衣先輩、そろそろ花火の時間になりますよ」

女性陣の視線が一気にこちらに集まる。お前誰だよって視線で恐怖を感じる。

「あ、俊太。もうそんな時間か」

「結衣先輩、この男知り合いなんですか?」

周りにいた女性陣の一人が結衣先輩に質問をする。

「幼馴染だ。あと二人、向こうで私を待ってる」

「幼馴染……道理で馴れ馴れしい感じなわけだ」

えーっと、俺なんか嫌われてる?

「こらこら、後輩を怖がらせるな。私はそろそろ行かせてもらうよ。また学校でな」

「……はい、失礼します」

渋々帰っていく女性陣。

「悪かったな俊太」

「いえ、まぁ少し怖かったですけど」

「人に好かれるのは悪い気はしないが、同性にモテても仕方ないんだがなぁ……」

「モテないよりはいいんじゃないんですか?」

「それは……確かにそうかもな」

「二人とも、花火始まるよー」

葵がそう叫んだすぐ後――

バァン

打ち上げ花火が上がる。

「綺麗《きれい》だなぁ……」

「夏の風物詩ですね」

次々打ち上がる花火に、少しの間無言になる。

「ねえ、結衣さん。この後少し時間いい?」

「別にいいぞ?」

葵が結衣先輩と話しているようだが、俺には聞こえなかった。

「これが終わると夏休みも終わりだな」

「そうだな、いよいよ二学期スタートか」

「俊、あれ」

隼人の視線の先にはさっき見たギャルの女の子が一人でいた。

「一人で来たのかなぁ?」

「さっきは何人かといたと思ったんだけどなぁ……」

そんな話をしているうちに、花火が終わった。

「俊くん、隼人くん」

「ッ!」

葵の声に少し驚く俺と隼人。

「そんな驚くことないじゃない」

「いや急に話しかけられて驚いただけだ」

「そうそう」

俺たちは必死に誤魔化《ごまか》した。

「まぁいいや。私結衣さんにちょっと話あるから、二人で先に帰ってて」

「ああ、分かった」

「結衣さん、失礼します」

「失礼します」

「ああ、気をつけて帰るんだぞ」

葵と結衣先輩に見送られ、俺と隼人は家路へ向かう。

しかし、葵は結衣先輩に何の話があるんだろう?

その頃――

「結衣さん、正直に答えて」

「なんだ、改まって」

「結衣さんって、俊くんのこと好きなの?」

「なっ……」

意表を突かれた顔をする結衣。

「答えて!」

真剣な表情で結衣に詰め寄る葵。

「俊太のことは好きだが、恋愛感情でってわけではない」

「……ほんとうに?」

「ああ、だから葵が心配する必要はない。第一葵が昔から俊太のことを好きなのは、私が一番よく知っていることだ」

「……そうだよね。よかった、結衣さんと俊くんを取り合うことになるのかと思っちゃったから」

「大切な幼馴染だが……それ以上ではない」

「よかった……」

「いつもの明るい笑顔に戻ったな。暗いし気をつけて帰るんだぞ」

「うん、またね結衣さん」

笑顔で手を振りながら帰っていく葵。

「悪いな葵」

夜空を眺めながら独り言のように呟く。

「いつの間にか俊太は私にとってかけがえのない人になってしまっていたんだ。あんな嘘を言うなんて、私も大人気ないな……」

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