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天命を巡る異術師の怪奇譚 〜威嶋香奈編〜  作者: 紅薔薇棘丸
序章「香奈の公安術師デビュー」
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12/13

0-12「呪具の解禁!!」

いつも読んで頂いている方はありがとうございます。

実は天命を巡るシリーズ『威嶋香奈編』は急遽没になり、次回からリメイクした『孤児だった少女、仲間と共に新たな人生を歩む』を送ります。こちらは同じ主人公、威嶋香奈の活躍を描いた物語です。

ブックマークと高評価、コメントをお待ちしております。

 身体機能が上昇していた。それは呪具がもたらす呪縛である。ただ、利点と欠点を兼ね合わせた上で発揮される効力は確かだ。


 私は駆け出した。相手と距離を詰め、攻撃が届く範囲まで攻め込んでいく。当然、近づいたら攻撃して来るのは事前に分かっていた。


 かなり距離が縮まると、向こうは容赦ない拳を振るう。案外スピードに乗った拳が飛んで来るのを避け、いきなり一本目の腕を切り落とした。


「はぁっ!」

「グワァァァアアアア⁉︎」

「怯んだな!」


 相手が怯んで隙を見つける。すぐさま飛び上がり、呪具で上から首を刎ね落とした。


「おらぁああ!」

「グアッッッ––––」


 地面に首が転がった。頭を失った胴体はそのまま倒れて動かなくなる。呆気なく倒せてしまったのは拍子抜けとでも言うべきかも知れなかった。


「ふぅ。次に行こう」


 私は再び駆け出した。廊下を走り抜け、生徒たちの保護に努める。


 前日のお昼頃。突入前に派遣人員で、前々から会議が開かれた。それは現在入手した情報を各自に報告するのも含める。


「今回は“怪奇テロ”で間違いない。相手は組織で活動する輩だと推測される」

「まさか闇組織が関わっているとは、難問を押し付けられたもんだな。俺はパスしちゃっても良い?」

「ダメだ。実力を重視したトータルバランスで挑みたい。後は最低人員が欲しい上で君には期待しているよ」


 わざわざ公安術師協会評議会の一人、大和鳥清太郎が説明してくれていた。本来なら彼らが動く機会はない。特に今回の持ち掛けられた任務は、評議員から説明するのはあり得なかった。


 それはともかく、集められた人員は四名ほどいる。見ない顔触れが揃っており、少々の不安を背負いながらも、私はしっかりと話を聞いていた。


「取り敢えず四人は任務遂行に努めてもらう。ただ、一人だけ総監部の推薦で参加が決定した者もいるから多少は不安だがな」


 その一言はまるでお荷物が混じっているみたいなニュアンスが読み取れる。確かに私は総監部から誘われて参加した身だ。それに実績も少ないのは認めざるを得ない。だが、今まで積み上げた鍛錬は任務遂行を果たすだけの成果が出せるように努めて来た。


 表情を引き締め、不安を仰ぐような雰囲気は和ませようと必死に構える。周りが私をどう見ているかまでは分からないが、今回の一件に臨もうと言う姿勢なら負けないつもりだった。


 すると、気怠そうな目つきをした青年が率直に感想を述べる。それは私に対する批判を現していた。


「おいおいマジかよ。総監部は何考えてんだか分かんないなぁ。こんなガキを公安術師に入れてんのは筋違いだわ。異術が扱えれば務まるような世界じゃないぜ? 見た目も弱そうだし」

「一理ある。さすがに中学生は不味い。高校生辺りでギリギリセーフだって言うのに」


 青年に引き続き、隣の女性まで同じ批判を口にした。これだと私の信頼が欠けてしまう。


 そんな発言がある最中、一人だけ総監部を庇う一言を述べた少年。彼は小柄だが、しっかりと物事を見据える瞳があった。


「二人とも止めよう。総監部にも考えがあるんだ。あの方を蔑むような発言は控えて欲しい」

「は? お前は何様のつもりだよ。俺たちに文句があんのか?」

「悪い。申し訳ないが、喧嘩する時間じゃない。こっちは早く話を済ませたいんだ。口論している暇はないよ」

「ま、言えてるな。さっさと続きを聞かせてくれ。今の話はなかったことで良いわ」


 適当に話を戻し、会議は進められる。会議が終わった後で、速やかに私は退室しようと扉に向かった。しかし、その前に女性が扉の前で邪魔して来る。


「待ってくれるかな? ちょっと聞きたいことがある。答えてから退室しろ」

「一体何の用ですか? さっさと終わらせてください」

「良い度胸だ。その面は本気か?」

「別に。大したことは考えてません。あまり興味もないので」


 私が無関心を示すと、威張ったような態度で、彼女は自ら名乗り出す。


「私の名前は水綺エルア。今は【一級】を目指しているわ。昔から異常な能力が扱えたせいで、周囲から孤立してた。けど、ここは私が活躍するための晴れ舞台なんだよ。だから、消えてくれるかな?」


 立ち塞がったエルアは、意地でも引き下がらせるつもりみたいだ。けど、素直に引き下がってしまうのは、自分が選ぶ道じゃない。


「無理です。私だって公安術師なんですから!」

「ほう? あんまり調子に乗るなぁ!」


 エルアから胸ぐらを掴まれる。あんまり首が締まらない程度に怒りを示した。


 すると、二人が退室しようと扉に近づく。そこで私たちが言い争っていることに注意して来た。


「良いから退いてくんないか? 出られないだろうが」


 荒々しい言い方だが、相手に部がある。扉を妨げていた私たちが一方的に悪かった。


「わ、悪い……」

「すいませんでした……」


 咄嗟に私たちは謝り、一旦横に退いておく。男たちが出て行った後、エルアから言い残したことが一つだけあった。


「言っておくが、公安術師は子供の遊び場じゃない。いつか痛い目を見るだろう。別に知ったことじゃないがな」


 それだけ告げると、エルアが男たちを追うように出ていく。扉が閉まった瞬間、一人残された空間で気持ちを整理した。己が挫けないためにも、心は整えておきたかったんだ。


 気持ちが整頓され、しっかりと前を向き、部屋から出る。


 私は初めて出会った三人を超えたかった。それには厳しい修行が不可欠である。


 その後は修行に励み、大量に汗を流しながら鍛え上げた。


 現在に戻る。私は一体目を撃破した後で、二体目と交戦していた。


 呪具を握り、強化された身体機能で間合いを詰める。相手が攻撃を仕掛ける前に呪具が振り切られた。


 またもや呪われた刀身は、すかさず怪奇の首を刎ねる。軽々と怪奇を凌駕し、容易く撃破して回っていた。


「残るのは五階のみ。四階は一人で全部回り切ったはず。本当に大丈夫かな?」

『まさか一人で四階まで制覇しやがったのか?』

「ひっ⁉︎」


 背後から刺さるような声が呼び掛ける。恐る恐る振り返ってみると、そこには他三人が立っていた。三人とも来たばっかりみたいで、四階を回っていた私に驚いている。


「凄いじゃん。たった一人で制覇しちゃうとかセンスあるよ」

「いや、偶然弱かったってだけだろ」

「それより五階がまだよね? 四人で纏めて上がってみる?」


 素早く女性の方から提案する。男性はあんまり気が進まなそうだが、決して行かないとは言わないはずだ。とにかく念の為にも四人揃って階段を上がった。


「気配が凄いな」

「まさか五階こそが、真の敵みたいだね」

「抜けたきゃ今のうちだよ。命が惜しいなら逃げるのは仕方ない話だ」


 最後の一言は私に仕向けていたような気がしていた。けど、もう引き返そうなんて微塵も思っていない。ここは一緒に突破したかった。


 男性が先頭に立ち、階段を駆け上がる。次の瞬間、大きな爆発が起きた。


 ドカーン‼︎


 いきなり階段の途中が爆発した。先に進む道は閉ざされてしまう。それにギリギリ私だけ上がり切れなかった。どうやら私は別ルートから五階に行くしかない。


「大丈夫か? みんなは無事?」

「まさか一人だけ別行動とはウケるわ」


 大きい方の男性が起きた事態にニヤけた。それは私だけ切り離された状況下が好都合みたいな笑みである。彼は相当な私を毛嫌いしているのが分かる瞬間だった。


 しかし、私は適切な判断を下す。無理に合流しようと行動するよりも、三人だけを先に行かせる方が効率良く任務に当たれる。私は後から合流できれば大した問題ではない。


「三人は先に行ってください! 私は遅れて合流しますから!」

「言われなくてもそうする。じゃあ、精々気をつけなさい」

「はい!」


 冷たく言い放った女性が迷わずに階段を駆け出した。その背中を大きい方の男は追っていく。ただ、小柄な男だけが、すぐ出発せずに心配してくれた。


「ここで香奈を置き去りにらするのは本望じゃない。とにかく四人が生存して任務遂行を報告したいんだ。ちゃんと生き延びろよ!」

「ありがとうございます! 分かりました!」


 小柄な男は伝え終えると、二人の後を追い掛ける。その背中が小さくなり、見えなくなった途端に行動を取り始めた。


「まずは五階に続く階段を早く探さなきゃだよね? だったら、地図を持って来たのは正解だったかも!」


 懐に仕舞ってあった地図を確かめる。最短ルートで行ける階段を探し、すぐ向かおうと見回した。すると、少し時間が掛かってしまうが、五階に続く階段を見つける。


「よし! 階段が見つかった! すぐに行こう!」


 私は呪具を持ち、違う階段に向かった。


 出来るだけ速度上げた状態で走る。次の相手に備え、体力温存を理由に極力全力は出さなかった。呪具による負担を考慮し、走るペースを調節する。


「あそこの角を曲がれば階段がある!」


 もう階段に差し掛かる手前の曲がり角で不運と遭遇する。まさかピンチに追い込まれる事態など、私は全然想定していなかった。それが裏目に出てしまう。


 角を曲がろうとした瞬間、私は慌てて急停止して警戒した。敵の襲撃を予測し、すぐさま呪具を取り出す。曲がる前に感じ取った気配は間違いなく強敵だった。


『よくぞ見破ってくれたね? 心から感心してしまうよ』


 角から現れる謎の青年。如何にも服装が怪しげで、敵だと断定するのに時間は掛からなかった。


 美し顔立ちと綺麗な体型。少し長い銀髪を揺らし、落ち着いたトーンで告げた。


「こっから先は僕が相手してあげる。正直、今回は人を殺す気分じゃなくてさ。でも、奴が“行って来い”って聞かないから困ったよ」


 その場でゆっくりと手を挙げる。同時に二体の式神が現れた。二体とも巨体を誇り、怪力そうな筋肉が目立つ。


 巨大猿の式神が前に立った。もう交戦以外は選択肢がないと思い、瞳を閉じて意識を集中させる。


「良いから来い! いちいち話してる暇なんかないんだよ!」

「その意気だよ。楽しませてもらおうか」


 先に私が攻め込んでいく。通常よりも身体機能が強化された状態だと動きやすかった。今は多少なりの負担を抱えている自覚は異常に薄い。これなら全然動ける自信があった。


 術式を使わずに素早く接近する。まずは一体目から片付けるつもりで行動した。


「そこだぁあああ!」


 相手は多少動きが見えている。ただ、完全に捉えていた訳じゃないようだ。ある程度は私を捉える視線が遅れる。後は反射運動を活かし、相手の視線から外れた瞬間に斬り込む。


「たぁっ!」


 シャキンッ!


 首を刎ねようと、呪具で薙ぎ払う。しかし、首に刀身が及んでも刃は通らなかった。幾ら力を込めても、首は斬れる気配がない。


 モタモタしていた途端、もう一方が突っ込んで来る。勢いよく駆け出して来た巨体から避けるように後退した。だが、しつこく相手は追いかけて来ている。


 体勢を整え、追って来た方がついて行けない速度を発揮してみせた。それは術式を使用した時に現れる効力である。


「今後こそ!」


 今度は追いかけて来ない側の背後に回り込み、思いっきり背中を斬った。そこはしっかりと刃が通り、斜めに切り傷を負わせる。これを何度も繰り返し、敵を翻弄していった。

読んで頂きありがとうございます。

次回は突然の最終話になります。理由は仕上がりが最悪だったので、ストーリーごと変更することにした次第です。

『孤児だった少女、仲間と共に新たな人生を歩む』の第1話はとっくに投稿しています。是非、読んでみてください!!

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