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天命を巡る異術師の怪奇譚 〜威嶋香奈編〜  作者: 紅薔薇棘丸
序章「香奈の公安術師デビュー」
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0-11「呪具の克服」

読んで頂きありがとうございます。良かったらブックマークと高評価、コメント待ってます。

 現在、封鎖された小さな林間に侵入。そこに流れた川沿いに住む魚の死骸が大量に転がっていた。


「こ、これは怪奇の仕業ですか?」

「多分それっぽいな。とにかく先に進んでみないと分からないだろう」

「はい」


 ずっと奥に進んでいく。そこには恐ろしい二本牙を剥き出しにした犬の化け物が待ち受けていた。


 ちなみに今回は二人で受けた案件遂行のため、市民がこよなく愛した公共の場に訪れている。案件によると、訪れた市民が帰って来ないと通報を受けた警察官から依頼された一件だった。実際に市民はその後も帰る気配がなく、一度下見に来た公安術師から怪奇による仕業と報告を受けたらしい。


 目の前に人間の死体を貪る怪奇がこちらに気づいた。唸り声を上げながら私たちは標的になる。


「グルルルルルルルゥゥゥ……! バウバウゥウウウウ‼︎」

「あれって犬か? 今回は魔獣みたいだな」

「やるしかないですね!」


 私はすぐ呪具を取り出した。事前に購入していた刀を収納する特殊袋に呪具は入っている。そこから呪具を取り出して鞘から抜き捨てた。


「よし! ––––ゔっ……ゔえぇええええ⁉︎」

「なっ⁉︎ いきなり吐くのかよ⁉︎」

「な、何ですかこれ? 凄い嗚咽感が……ゔぉえぇえええええ⁉︎」


 急に胃から内容物が込み上げて吐き出してしまった。それと内心がざわざわするような不快感を覚える。だが、呪具を離せば元に戻った。つまり、呪具がもたらす力と関係しているんだろう。


「この呪具は使えませんね。じゃあ、予備で持って来た霊剣を使うしかないです」


 もう一本を取り出す。こっちは翔介さんがくれた霊剣だ。取り敢えず呪具はその場に置き、霊剣を駆使して怪奇と戦う。


 すると、私が準備している間に火華先輩が行動した。見た感じだと以前よりも動きが速い。火華先輩は練習試合で見せた動きを凌駕していた。


「もらった!」


 素早く間合いを詰め、握った天剣ですぐ横に薙ぎ払った。ただ、怪奇は火華先輩に反応して回避する。魔獣と言うだけあって反応速度と運動神経は優れているようだ。しかし、それを次は容易く攻略してしまう。


「ま、私から逃げられる訳ないんだ。術式で動きを遅らせれば良いんだからさ」


 火華先輩が術式を発動。魔力が瞳に集中して効果を発揮した。


「お疲れさん。大人しく終わってくれ」


 火華先輩は颯爽と駆け抜け、魔獣に斬り掛かった。しかし、何故か魔獣の反応が遅れる。もう動き出した時には手遅れだった。


 真っ赤な血飛沫が噴き出る。同時に魔獣の頭が足元に転がって来た。それは火華先輩が刎ねた首で間違いない。


「す、凄い! あの時、一体何したんですか?」

「あれは魔術だ。名を【ロックアイズ】と呼んでいる。見たものを二秒間だけ停止させる術式さ。これで掛かれば大抵は倒せる」


 自信満々に倒した仕組みを教えてくれた火華先輩は照れくさそうな笑顔を浮かべる。


 とにかく私たちは案件受付所に戻った。目的の怪奇は少し経過したら消滅していくのは確認済みだ。もう問題は起こらないはずだと思った。


 その場で火華先輩が報酬金額を受け取る。お金を受け取った火華先輩が戻り、黙って金額の一部を差し出して来た。


「お疲れ様でした。これは香奈が受け取ってくれ。一緒に受けた案件だからさ。どうせ活躍してないとか言って受け取らないんだろ? だったら記念として受け取って欲しい」

「……え? そ、そんなぁ。ありがとうございます!」


 無理させないような一言で火華先輩は手渡して来た。その気持ちが嬉しくて涙が込み上がる。しかし、最終的に抑えられなくなって涙を流してしまった。


「うっ……うぅ……うわぁああああん! うわあああああ!」

「あははっ。泣くなよ。大したことなんて出来てないんだからさ」

「だ、だってぇ……!」


 今回の一件で私たちは距離が縮まった。互いの関係は良好だと言う他に言い表せるはずがない。


 そして私は自ら総監部に会って来た。呪具の取り扱いを相談したかったんだ。これは扱おうとするだけで負担が大き過ぎる。


「失礼します」


 緊張感を背負いながら扉の先に入る。そこには総監部が待ち構えていた。


「今日は案件の遂行お疲れ様。きちんとクリアして来たみたいだね?」

「いえ、今回は火華先輩一人の活躍です。申し訳ないんですが、私は何もしていません。それより呪具の件で相談しても良いですか?」


 背負っていた呪具入れの袋を見せながら簡潔に告げる。


「この呪具なんですが、扱おうとした時、何故か吐きました。どうやら呪具のもたらすデメリットが発生したみたいです」

「それでここに来た。つまり、デメリットが大き過ぎて扱えないんだろ? それなら解決策を提示するよ。このやり方で修行してみると良い」


 総監部が机の上に二つほどアイテムを置く。それには多少の呪力が籠っていた。つまり、私が扱えなかった“呪具”みたいだ。


 簡潔に総監部から説明を聞く。自ら要件を聞く前から説明する気がだったんだろう。総監部は二つの呪具の活用法を教えてくれた。


「これは単純に嗚咽感と精神負担を克服するために作った呪具だよ。もちろんデメリットしかないから本当は無意味な一品たちだ。けど、香奈が問題視した呪具より負担は小さい。だから、軽い嗚咽感と精神負担を背負いながら修行すれば良い」


 言っている意味が何となく理解できた。問題視しているデメリットを少しずつ克服すれば最終的に【黒涙の凶刃】が使いこなせる。


「な、なるほど。それで準備していたんですね」

「うん。実は未来が見えてしまうんだよ。困った前も言ったような話だ」


 あの時、総監部が断った話の克服。それが肝心だと総監部は示した。総監部は尋ねずに話を続ける。


「取り敢えず試してご覧よ。きっとすぐ実感が沸いて来るからさ」

「あ、ありがとうございます……」


 机に置かれた二つの呪具を持った。微かな嗚咽感と精神に乗っかる微妙な違和感。これらから言えるのは総監部が偽っていない事実だった。


 これを付けながら修行に励めば良いらしい。それは自身に負担を掛ける行為だ。ただ、肉体面よりも精神面を高める手段だと思った。直接筋肉には関係ない作用が起こるんだろう。


 私は決意した。呪具を使い慣れるに多少なりの負担を背負って鍛える。それが効果的だと判断して行動しようと一礼する。


「こんなものを用意してくださってありがとうございました。これは大事に使わせてもらいます」

「うん。期待してる」


 最後の一言は内心に刺さった。まるで恋したかのようなドキドキが止まらない。


 総監部から受けた言葉を胸に仕舞った。それを持ちながら修行して強くなりたい。目標は必ず果たせると胸を張った。


 総監部に別れの挨拶をする。総監部は少し微笑みながら見送ってくれた。やはり、総監部とは思えない美人である。あれで過去の活動実績は凄かったらしい、


 取り敢えず頂いたものを試してみた。まずは一個だけ身につける。それは指輪タイプの呪具だった。本来は婚約者からもらうのが一般だ。けど、呪具ならば文句は言っていられなかった。


「ゔっ。何か一瞬だけ来た……!」


 私は呪具のもたらす効果を実体験した。確かに【黒涙の凶刃】とは違い、負担は限りなく小さい。だけど、負担が掛かっているみたいだ。


「よし! まずは一個で慣れよう! こらから呪具をマスターするだぁああ!」


 思わず腕を上げ、青空に叫んでいた。この決意は今後に響くような気がしてならない。呪具が使いこなせれば階級も伸びるはずだと将来に期待した。


 私は多少の負担を抱えながら修行する。まずは外でランニングから始めてみた。大きく外周して回る。


 気付けば体力が削られる度に負担が大きくなっていた。段々気持ち悪くなり、嘔吐しそうな感覚に襲われる。


「これが呪具の力か……。やっぱり現実は厳しいかも」


 一旦呪具を外さないと歩くことすらままならないぐらい疲れ切った。今回は引き上げてしまったが、明日からは限界を見通して励もうと考える。


 ただ、ひたすら繰り返した。何度も挫けそうな限界に達して苦渋を味わう。それでも強くなる一心で修行を続けていく。


 二ヶ月後。ついに二つの呪具を克服できた。だが、実際だと【黒涙の凶刃】の扱いには至らないような実力である。ちゃんと将来は確実に任務遂行が果たせる公安術師になりたかった。


 ある日、私は学校関連の任務を受けた。実に重大な任務だと聞いている。子供たちの命が懸った任務だ。


 ––––必ず遂行してやる!


 やる気に満ちていた。しっかりと朝食を取り、準備万端の状態で挑む。


 今回は特別に総監部から作ってもらった呪具を使う予定だった。これは【黒涙の凶刃】より負担が小さい刀である。代わりに同じ効果だが、もたらすメリットは小さかった。それでも慣れる上で必要な経験だと思う。


 任務開始の五分前。私は体をほぐしながら心構えを整えた。もう突入して良い具合に仕上がる。


「今回は複数で潜入するが、ほぼ単独行動をしいるだろう。そこは大丈夫か?」


 最近になって引退したベテラン公安術師、板垣霧朔が指揮してくれる。彼は【準一級】の中でも判断力と行動力に長けた人材だと紹介された。本人は人々のために指南役を買って出ている。


「よし! 突入ぅううう!」


 合図と共に突入した。実際に校舎内は誰もいないはずだ。校舎内には怪奇が彷徨っている状況下に追い込んでいた。つまり、校舎内に閉じ込めた怪奇を討伐する作戦である。


 まだ呪具は使用していなかった。何故なら握った時点で負担してしまうからだ。疲労が溜まり過ぎると負担に耐えられなくて肝心な時に足手纏いだと思っていた。


 取り敢えず怪奇と遭遇した時が呪具の出番だろう。


 私は一気に三階まで駆け上がる。階段を上がり切った瞬間、視界に三つ目の坊主頭が映った。さらに、待ち伏せていたかのように即攻撃を仕掛けて来る。


「フンッッッ‼︎」

「危なっ⁉︎」


 相手は四本腕。それも相当な怪力を誇っているのが攻撃されて分かった。殴り付けた地面を叩き割るぐらいの威力が窺える。


「これは丁度良いじゃん! 早速こいつの出番かも!」


 袋から呪具を取り出す。これは総監部が術式で作り出した【黒狩り】と言う呪具だ。これは説明していた通り、あの【黒涙の凶刃】を真似た劣化版である。


「くっ! やっぱり扱い出すと違うな。けど、体が軽くなったのが分かる!」

「ウオォォォォオオオ‼︎」


 三つ目坊主が唸っている。向こうがやる気なら私だって太刀打ちするまでだった。


「行くよ!」


 私は呪具を構え、三つ目坊主に立ち向かった。

読んで頂きありがとうございました。ブックマークと高評価、コメントをお待ちしております。

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