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天命を巡る異術師の怪奇譚 〜威嶋香奈編〜  作者: 紅薔薇棘丸
序章「香奈の公安術師デビュー」
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13/13

END「呆気ない死」

読んでくださっている方々に感謝致します。

実は“威嶋香奈編”をリメイクした作品が登場する関係で、今回は最終回を迎えました。次回からは『孤児だった少女、仲間と共に新たな人生を歩む』をメイン作品とします。

是非、チェックしてください。また、高評価とコメント、ブックマークをよろしくお願いします。

 現在、謎の青年が召喚した二体の式神と交戦中だった。


 巨体を誇る“猿”と“牛”がセットで相手する事態に陥っている。二体を同時に相手するのは、さすがに至難の業だった。


「くっ! あんな巨体が二体もいるなんて無茶すぎる……。このままだと殺されちゃう」

「おやおや? さっきまでの威勢はどこにいったのかな?」


 青年が嘲笑を浮かべ、少し距離を置いて眺めていた。自身は参戦しない点から、内心では戦力外を期待する。


 ただ、片方は首は切れないほど硬かった。つまり、首は有効打にならない。


 スピードで勝っていても、いずれ体力が尽きて戦えたくなる。それだと元も子もない結末しか迎えられなかった。


(徐々に全身が気持ち悪くなって来やがった。もう最終奥義を使う他に生存は望めない……!)


 実は呪具に隠された秘密。その本質を解放すれば二体の式神を祓えるかも知れなかった。


「緊急用に凛音さんが備えてくれた禁じ手を使う時が来たみたい。けど、私に扱えるか分からないんだよね……」


 こちらに猿の式神が向かって来る。もう決断は急がないと殺されるんだと思い、急いで呪具の本領を発揮した。


「禁呪縛解放ぉおおお‼︎」


 呪具が発光する。凄まじい呪力を孕み、私の肉体に取り込まれていった。


「す、凄い……! 力が漲る!」


「ウギャァァアアアア‼︎」


 シャキン!


 ほんの一瞬で猿の式神を撃破する。あの硬くて斬れなかったはずの首を容易く刎ね上げた。


「ほう? それが本領と言う訳か? けど、やたら無謀すぎる策だよ」


 顔に呪印の痣が浮かび上がる。これが出現している間は生き残れる気がして来た。


 すぐさま体勢を作り、颯爽と牛の式神まで駆け出す。術式を使用していないにも関わらず、驚異的な身体機能を発揮した。


 圧倒的スピードで牛の式神は、首が吹っ飛ばされる。これで残るのは式神使いだけだった。


「どうやら二体とも撃破されてしまったんだね? お見事だったよ」

「この効力が持続しているうちに倒してやる!」

「おや? 誰か来たらしいけど?」


 背後に迫る人影。素早く駆け付ける人影を警戒し、振り向いた瞬間に声が掛かった。


「迎えに来たぞ、香奈! すぐ撤退する!」

「な、何で? あそこに敵が残ってるよ!」

「ダメだ。あんな奴なんて私と香奈が二人掛でも倒せっこない!」


 急に現れたと思いきや、火華先輩は私を担ぎ上げて逃走する。私は敵を前に逃げるのは可笑しいと思って尋ねてみた。


「な、何があったんですか!」

「そろそろ禁呪縛が解ける。大人しくしていろ。そっちは解放する前提で用意したものだからな!」


 火華先輩が意味不明な一言を告げる。一心不乱に青年とは反対方向に走る火華先輩は何か知っているかも知らなかった。


 すると、背後から黒い茨が迫る。さっきの青年が後を追い掛けて来たらしい。火華先輩は走る速度を上げ、茨から逃れようと必死になった。


(一体何が起きてるの? ––––う、ゔっ⁉︎)


 担がれた瞬間から体は安静だった。しかし、禁呪縛を解放した代償は及び始める。全身から嫌な汗が吹き出し、神経には激痛が走った。


「うっ……! うぅ……!」

「もう始まったか? 急いで戻らないと! 絶対に死なせないからな!」


 火華先輩は魔力を魔具に注ぎ、身体機能を強化する。以前よりも足が速くなり、一直線に駆け抜けていった。ただ、それでも黒い茨は火華先輩を追って来る。


「ちょっと待ってくれよ。逃げても無駄なんだからさ。さっさと捕まって楽になっちゃえって!」

「そうはいかないんだよ!」


 火華先輩は曲がり角に差し掛かる。追い付かれない程度に速度を落とし、切り返して曲がり切った。


「待ってたぞ! 後は任せろ!」

「頼む!」


 そこに待ち構えていたのは、翔介さんと光成さんの二人だった。後ろから迫る黒い茨を対処しようと火華先輩が横切った後で、二人同時に術式を発動する。


 それは扱えるものが数少ないと言われる異術で知られている“妖術”だ。


「ほう? 僕とやり合うのかい?」

「そのつもりだよぉおおお!」


 廊下に岩が出現し、黒い茨を堰き止めた。同時に翔介さんが黒いエネルギーを収束し、莫大なエネルギー砲を解き放つ。


「ブラックキャノン!」


 凄まじいエネルギー砲弾が撃ち込まれた。廊下は半壊し、跡形もなく崩れ去る。


「やったか?」

「いや、まだだ!」


 煙の中から青年が現れる。さらに倒したはずの二体の式神が復活していた。巨体を誇る猿と牛の式神は、以前と比べて凶悪化している。


「さぁ、行け!」

「ウモォォオオオオオ‼︎」

「ウギィィィイイイイ‼︎」


 指示された式神たちが翔介さんたちに襲い掛かる。それを真っ向から相手しようと変身した二人が駆け出した。


「俺らに相手してもらえるなんて、本来は光栄なんだぜぇ!」


 いつの間にか光成さんが竜に変身していた。以前よりもガッシリとした体格を誇り、黒い翼を広げたカラスみたいな翔介さんと並ぶ。


 すかさず光成さんは青年の足元から鋭い先端をした岩が盛り上がって来た。けど、青年は容易く手刀で打ち破る。


「はははっ! 達者だね? 正直、一人残らず殺すつもりなんだ。覚悟してくれよ!」


 二体の式神が光茂さんたちとぶつかる。猿の式神は光茂さんを押さえ込もうと覆いかぶさった。それに対抗する光茂さん。


 すぐ近くでは、翔介さんが圧倒的な力で牛の式神を吹き飛ばした。そして吹き飛んだ式神に黒いエネルギー砲弾が放たれる。


「食らえ!」


 ドカーン‼︎


 牛の式神は右半身が消し飛んでいた。それだけ強力な攻撃だったらしい。だが、戦況は二人が追い詰められる結果に繋がった。


「さっさと終わろう。逃げて行った二人を追い掛けないとなんだからさ」


 無数の黒い茨が伸びる。翔介さんはエネルギー砲弾を溜め込み、それらを消し炭にする体勢を取った。しかし、急に光成さんから離れ、近くにいた翔介さんを襲う。


「ウギャァァアアアア‼︎」

「邪魔だぁぁあああ‼︎」


 軽いエネルギー砲弾を空いた手のひらに収束し、襲い掛かった式神に放つ。ほぼ同じタイミングで向かって来る茨にも放ってやった。


 式神は後方に転がり、ダメージが深くて戦闘不能になる。残りは眺める青年のみだった。


「中々やるじゃん。けど、ちょい本気を見せてあげるよ」


 青年は自らの肉体を変身させる。翔介さんたちと同じ妖術かと予測できた。けど、実際は“神術”と呼ばれる神々に近い術式なのだ。


 変身を完了した青年は、巨体化と身体強化を兼ね揃えている。これだと手強いのは分かり切っていた。


 すぐさま翔介さんが行動に出る。黒いエネルギーを収束し、放つ体勢を整えた。限りなく近い位置から解き放とうと詰め寄る。


「終わりだぁぁあああ‼︎」


 最後に特大エネルギーが解き放たれる––––はずだった。


 青年はエネルギー砲弾を翔介に跳ね返す。エネルギーの塊が翔介を襲った。


「ぐぁぁあああ⁉︎」


 ドカーン‼︎



 凄まじい衝突音と共に遠く弾き飛ばされた。翔介は防ぐ間もなく、静かに撃沈する。もう息していないのは確認しなくても分かった。


「翔介ぇええ‼︎」

「あれ? 呆気なかったな。次は君だね?」

「……はっ⁉︎」


 いての間にか光茂さんは背後を取られており、大きな剣と一体化した腕を振るう。


 ビチャッ


 辺りに血が飛び散る。剣を振るわれた光茂は、首と胴体が分かれていた。床に首から血を流しながら倒れる光茂に嘲笑と罵倒が響く。


「こんなんで終わりかよ! 公安術師なんて大したことねぇじゃん!」


 返り血を浴びた青年は、二人の亡骸を置き去って逃げた二人を追い掛ける。今度は炎を纏う巨大な馬に変身し、素早い走り込みで駆け出した。


 一方、私を担いで逃げていたはずの火華先輩は、謎の怨霊に囲まれてしまっている。逃げ途中で膝関節から下を巨大な金槌で潰されてしまい、もう動けない状態だった。


「はっはっは! 酷い出血だよな? だって、足が潰れてんだからさ!」

「く、くそっ! 覚えてやがれ!」


 もはや、潰された箇所の出血は深刻だった。足を潰され、倒れた拍子に転がった私は呪縛に侵食されて弱り果てる。これだと寿命は僅かしか残されていなかった。


 火華先輩も意識を失う。体が冷え、次第に心拍数は停止した。息を引き取った火華先輩はピクリとも動かない。


 弱った私に迫る謎の男が巨大な金槌を振り上げた。最後に黙って振り下ろされた金槌は私から命を奪っていく。


 この時、大半の公安術師が殺害されていた。誰一人として犯人たちを捕まえられないような国民たち。ついほくそ笑んでしまった男が告げる。


「雑魚は幾ら集まっても、みんなおんなじさ」


 完

読んで頂きありがとうございます。

次は新たな作品『孤児だった少女、仲間と共に新たな人生を歩む』をお楽しみください。

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