約束の日(その三)
再び公衆電話ボックスに戻り、テレポートすることにした。
アストン:
「よし、次の目的地はリシ先生のアパートだ。……ここだ!ユニット番号5の近く!」
ボタンを押すと、テレポーテーションシステムが作動した。
*ジイン
周囲の景色が一瞬で都市の住宅街に変わった。
アストン:
「着いたぞ!」
しかし突然、頭がくらくらした。乗り物酔いが前よりひどくなっていた。
アストン(頭を押さえて):
「うぅっ……頭が……」
拳を握りしめ、痛みに耐えた。
アストン(歯を食いしばって):
「ここで倒れるわけにはいかない!約束を……全部果たさなきゃ!」
近くの公園で十分ほど休み、自動販売機でミネラルウォーターを買った。
*ゴクゴクゴク
アストン:
「あああ!生き返った!」
ペットボトルを飲み干してゴミ箱に捨て、立ち上がって軽くストレッチをした。
そしてアパートへ向かって歩き続けた。
リシ先生のアパートの前に着き、呼び鈴を押した。
中からグラシアがドアの鍵を外して開けた。
グラシア(わずかに微笑んで):
「来たのね……どうぞ入って。」
アストン(頷いて):
「う、うん……」
グラシアに案内され、アパートの中に入った。
グラシア:
「座って、ゆっくりして……」
アストン:
「……はい……」
困惑しながらソファに座った。突然の優しさとおもてなしに、背筋がぞくりとした。
セルリアンの姫は一体何を企んでいるんだ?
すると、寝室からミスティックドールと氷の妖精が出てきた。
ミスティックドール:
「わあ!アストンだ!」
氷の妖精:
「フィ……フィ!」
アストン:
「君は……本物のグラシアだよね?それに氷の妖精はフロスティかな?」
ミスティックドール:
「うん!私の新しいお友達!フロスティちゃん!」
フロスティ(微笑んで):
「フィフィフィィ!」
ミスティックドールはフロスティを優しく抱きしめた。フロスティも嬉しそうに抱き返した。
二人の新しい友情を見て、僕は微笑んだ。
突然、キッチンから嫌な臭いと煙が漏れ始めた。
アストン(驚いて):
「あっ!何だこれ!?」 *鼻をつまむ
ミスティックドール:
「もう一人の私が、今料理してるんだよ!」
フロスティ:
「フィィ!」
アストン:
「りょ、料理!?こんな致死的な臭いがする料理って何!?」
ミスティックドール:
「わからない……でも彼女があなたのために何かを作ろうってすごく頑張ってるから、止めなかったの。」
アストン:
「誰かが食中毒になる前に止めるべきだっただろ!」
状況を確認するため、キッチンへ走った。ミスティックドールとフロスティは顔を見合わせ、また遊び始めた。
キッチンに近づくと、中から嫌な臭いと煙が立ち込めていた。
グラシアのことが心配で、キッチンに飛び込んだ。
アストン:
「グラシア!無事か!?」
グラシアがこちらを向いた。目の前には紫色の液体が入った大鍋があり、野菜や魚も入れていた。
アストン(ショックを受けて):
「これは何の儀式だ!?」
グラシア:
「儀式ですて!?失礼ね!ただ料理してるだけよ!」
アストン:
「絶対違うだろ!」
大鍋の中身が振動し、脈打つように動いていた。まるで食べ物ではなく、何か新しい怪物を作り出しているかのようだった。
アストン(慌てて):
「ひぃっ!」
グラシア(ぷくっと膨らんで):
「なんであんなに慌ててるのよ!?私がそんなに下手なの?」
突然、大鍋から明るい光線が放たれた。
*ドカーン!!
爆発が起きた!しかし幸で、グラシアが氷魔法でそれを防いだ。
グラシア(汗を拭いて):
「また失敗ね……」
アストン(叫んで):
「失敗だと!?あれは災害だ!」
グラシア(キレて):
「うるさいわね!自分の方が上手いみたいな口を利かないで!」
アストン:
「僕も大した料理人じゃないけど……少なくとも僕の料理は爆発しないぞ!」
グラシアはショックを受けたように息を飲んだ。自分の料理の腕が、こんな馬鹿な僕よりも下だと気づいてしまったのだ。
グラシア(落ち込んで):
「わ、私だって、精一杯頑張ったわよ!でも私の優秀な魔法を使っても、まともな一品すら作れないなんて……!」
彼女が本気で取り組んでいたことに気づき、僕はため息をついた。
アストン:
「聞いて、天才お姫様……料理には魔法は全然必要ないんだ。」
グラシア:
「ちっ!面倒くさいわね!魔法を使った方がもっと簡単でしょ?」
近くのエプロンを手に取り、身につけた。
アストン:
「確かに……魔法は便利かもしれない。でも料理で一番大事なのは、気持ちなんだ!」
グラシア(驚いて):
「き、気持ち!?」
アストン:
「そう!気持ちだ!食材に、道具に、スパイスに、そして料理を作る相手に向けた気持ちだ!」
グラシアは黙り込み、それから反論した。
グラシア(信じられない様子で):
「ふざけるな!そんな些細なことでうまくいくわけないわ!」
アストン(微笑んで):
「じゃあ見せてやるよ、グラシア!本物の料理ってやつを!キッチンを借りるぞ!」
グラシア(得意げに):
「ふん!いいわ!あなたも失敗したら、思いっきり笑ってあげるわ!」
アストン:
「でもその前に……」
これまでの失敗でキッチンはとても散らかっていた。
アストン:
「まずキッチンを掃除しよう、グラシア!」
グラシアはようやく散らかり具合に気づき、恥ずかしそうに顔を背けた。
グラシア(赤面して):
「……わかってるわよ、馬鹿……」
再び料理を始める前に、二人でキッチンの掃除を始めた。
掃除が終わると、ようやく料理を始める準備が整った。
アストン:
「グラシア、君の食材も使わせてもらうけど……いいか?」
グラシア(頷いて):
「好きにすればいいわ……冷蔵庫の中にはもうまともな材料なんてほとんど残ってないけど。ほとんど使って失敗したから……」
アストン:
「材料じゃなくて『食材』だ!大丈夫……残ってるものがあれば十分だよ。」
グラシアは疑わしそうに眉を上げた。
僕は冷蔵庫の前に行き、中に残っている食材を確認した。
アストン(心の中で):
じゃがいも一個、にんじん二本、玉ねぎ二個、青ねぎ四本、ほとんど骨だけの鶏肉……肉は少し残ってるな……うーん……
グラシアがにやりと笑いながら隣に寄りかかってきた。
グラシア:
「ほら……言ったでしょ!そんな残り物で作れるものなんてないって!」
アストン:
「ふむ……実は一つ……いや、二つ思いついた!」
グラシア:
「ほ、本当に!?」
アストン:
「うん!せっかく出し、少し手を貸してくれないか?」
グラシア:
「え!?私が!?」
アストン:
「難しいことはさせないよ!ただ切る作業を手伝ってほしいだけだ……できるか?」
グラシアは軽く頷き、わずかに微笑んだ。
グラシア:
「切るだけなら簡単よ!私の魔法で切り刻んでやるわ!」 *氷の刃を作り出す
アストン(厳しく):
「魔法は禁止!包丁を使ってくれ!」
グラシア(残念そうに):
「えええ~」
食材を整理して洗い、料理を始めた。
まずステンレスの鍋にきれいな水を入れ、コンロで沸かし始めた。
アストン:
「グラシア、鶏肉を一口大に切ってくれ!」
グラシア:
「は、はい……」
彼女が包丁を上に振り上げて肉を叩こうとしたので、すぐに止めた。
アストン:
「ダメ!ダメ!ダメ!慎重にやってくれ、グラシア!」
グラシア:
「慎重に?」
彼女はゆっくり切り始めたが、ほとんど切れなかった。
僕はため息をつき。
アストン:
「ちょっと失礼……」
彼女の後ろに回り込み、包丁を持つ腕を支えた。グラシアは突然の接触に息を飲んだ。
グラシア(慌てて):
「ちょっ!あんた!何してるの!?」
アストン(落ち着いて):
「しーっ……腕を動かすだけだから、いいだろ……」
後ろから腕を支えられて動かされると、グラシアの顔が真っ赤になった。
アストン:
「聞いて、グラシア……食材を切るのに、そんなに力はいらないんだ。包丁の重さと切れ味に任せればいい……動きはこうだ……」
彼女の腕を動かしながら、正しい切り方を教えた——押す力を少なくし、包丁を引くように切る方法だ。
グラシア(驚いて):
「わあ……本当だ!切りやすい!」
アストン:
「そうだろ!それに食材を持つ時は、猫の手の形にして指を切らないようにするんだ。」
グラシア:
「猫の手?こう?」
アストン:
「う、うん……」
彼女が何気なく猫の手ポーズをしてみせると、なぜかすごく可愛かった!
一分後、直接触れて教えたおかげで、彼女はきちんと切れるようになっていた。さすがお天才さん!
鶏肉を切り終えると、彼女は信じられない様子で黙り込んだ。
グラシア(心の中で):
信じられない……魔法なしでできたなんて……!
アストン(微笑んで):
「うん……よくやった、グラシア!」
グラシアはこちらを向いたが、目は合わせなかった。
グラシア(頷いて):
「う、うん……」
水が沸騰した。食材を入れる時間だ。
鶏肉の骨だけを入れると、グラシアはショックを受けたように息を飲んだ。
グラシア:
「ちょっ!ええっ!どうして骨だけ!?」
アストン:
「濃い鶏ガラ出汁を作るには、骨を使うのが一番いいんだ。肉は他の料理に使うから、安心して!」
グラシア:
「わ、わかった……」
アストン:
「出汁が完成するまで時間がかかるから、その間に他の料理を作ろう!」
グラシア:
「え!?並行作業ですか!?」
アストン:
「もちろん。」
フライパンに油を注ぎ、コンロをつけた。
アストン:
「グラシア、野菜を食べやすい大きさに切り始めてくれ!」
グラシア:
「わかった!」
彼女は前より速く、きれいに切れるようになっていた。さすが天才だ!
油が熱くなり始めたので、玉ねぎのスライスと鶏肉を入れた。
*ジュウウウ
オイスターソースと青ねぎを加え、塩と胡椒を振った。
それからかき混ぜ、スパイス全体をなじませた。油の熱が味を肉に染み込ませていく。
グラシアは黙って僕が料理しているのを見つめていた。美味しそうな匂いが漂い始めた。
数分後、ようやく料理が完成した。
アストン:
「できたぞ!鶏ガラ出汁の野菜スープと、ソースで炒めた鶏肉炒め!」
グラシアは全く予想外の展開に目を見開いて驚嘆した。
グラシア(小声で):
「本当に……できたんだ……」
アストン:
「それも君のサポートのおかげだよ!」
グラシアは赤くなって顔を背けた。
グラシア:
「何よ……私は切るのを手伝っただけじゃない……」
アストン:
「それも立派な手伝いだ!」
グラシア:
「ふん!」
彼女は密かにわずかに微笑んだ。二人で料理をダイニングテーブルに運び、一緒に食べることにした。
グラシア:
「ご飯できたわよ、子供たち!」
ミスティックドールとフロスティは興奮して飛び上がり、ダイニングへ走ってきた。
ミスティックドール:
「わあ!すごく美味しそう!やっとまともなご飯だ!」
フロスティ(泣きそうに):
「フィィ……」
グラシア(少し傷ついて):
「はいはい!悪かったわね!カップ麺ばかりで!」
アストン:
「カップ麺!?それで生き延びてたのか?」
グラシア(平坦に):
「ええ……毎日食べてたわ……何か問題でも?」
僕は額を押さえ、ため息をついた。それから彼女に説明した。
アストン:
「もちろん問題だよ……料理ができないなら、せめてもっと健康的なものを買うべきだ。」
グラシア(小声で):
「でもカップ麺はすごく便利で安いし……美味しいし……私的には完璧な食べ物よ。」
アストン:
「それに栄養もほとんどない!グラシア……これからは健康を一番に考えてくれよ?」
グラシアは頭を下げ、軽く頷いた。
アストン:
「でも今思ったんだけど、ミスティックドールとフロスティって食べてるのか?」
グラシア:
「食べてないわ。でも私が何か食べられたあと、魔力を通じて間接的に食べさせてるの。」
アストン:
「なるほど……」
それから一緒に昼食を始めた。
全員:
「いただきます!」
グラシアが鶏肉を一口食べると、目を見開いて驚いた。
ミスティックドールとフロスティも、グラシアの魔力を通じて味を感じ、嬉しそうに声を上げた。
アストン(にこっと):
「どうだ?美味しいだろ?」
グラシアはわずかに赤くなり、微笑んだ。
グラシア:
「うん!美味しい!」
それは彼女が僕に見せた中で、最も素直な笑顔だった。それを見て、僕の心臓が一瞬跳ねた。
昼食を終え、食器を洗った頃には、もう出かける時間になっていた。
アストン:
「ごめん、グラシア!他に用事があるから、僕はもう行くよ!」
グラシア:
「え?もう帰るの?でも私はまだ——」
何か言いたそうだったが、彼女はためらった。
グラシア(頭を振って):
「うん……何でもないわ……ありがとう、アストン。」
アストン(にこっと):
「礼なんていらないよ。こっちも美味しい昼食をいただけたから……」
みんなに別れを告げ、ドアの方へ向かった。
しかし突然、グラシアが袖を引っ張って僕を呼び止めた。
グラシア(小声で):
「アストン……」
アストン:
「どうした、グラ——」
振り返ると——
*チュッ
彼女が軽く唇にキスをした。
アストン(驚いて):
「え?」
頭の中がぐちゃぐちゃになり、何が起きたのか処理しようとした。そして結論に達すると——
アストン(真っ赤になって):
「えええええっ!?」
グラシア(慌てて):
「か、勘違いしないでね!今日してくれたこと全部への……ただの報酬よ!」
アストン:
「ほ、報酬!?」
グラシア(顔を背けて):
「ええ……もう行って。」
アストン:
「でも——」
グラシア(真剣に):
「私が考えを変える前に、お願いだから出て行って、アストン。」
アストン(緊張して):
「わ、わかった!」
彼女の頼み通り、すぐにアパートを出た。僕が出た後、彼女は床に弱々しく膝をついた。
グラシア(真っ赤になって、心の中で):
信じられない……私、本当にやっちゃった!? 心臓が……破裂しそう!!
彼女も気づかないうちに、心の中の未知の要素——愛——が強くなり始め、天才の判断力さえも効率的で論理的に働かせなくなっていた。
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第99章 約束の日(その三) 完




