7.光が強いほど影は濃くなる
ソーマとパーティを組んで数ヶ月が経った。
任務をこなした数もそこそこで、期待の新人と呼ばれる様になってきたが、ミレンナはソーマの影に隠れる様になっていた。
今日も討伐を終え、ギルドに帰ってきているが、ミレンナは冒険者に囲まれるソーマを眺めながら近くのテーブルでホットココアを飲んでいた。
「今日もお手柄だな、ソーマ」
「ヴォルドさん! お疲れ様です! ミレンナさんのおかげですよ。僕一人だったらこんなにサクサク出来ませんからね。ふふ、良いでしょう。でもミレンナさんは渡しませんからね。ヴォルドさんにはラヴィーナさんがいますからね。うん、お似合いですよね。いいなぁ、どうやって婚約まで行きました? 後学のために僕に伝授してくれません? 今ミレンナさんを口説き落とそうとしてるんですよ。知ってました?」
「今日も元気だな。本当にサラと正反対だな」
サラとレオンハルトもお世話になっている先輩冒険者のヴォルドに絡むソーマは本当に怖いもの知らずだ。
ヴォルドだけに限らず、ソーマは話しかけてくる冒険者に対して、等しく喋り続ける。
その積極性がミレンナには眩しい。
「ラヴィーナは化粧が壊滅的に似合わない俺を笑わなかったからな」
「なんですか、それ。一回ばっちり化粧してください! いや、僕も化粧似合わなくてですね。サラ姉ちゃんと同じですよ。ほら、顔の主張が激しいじゃないですか。化粧しても意味ないと言うか、化粧濃くすると作画変わると言うか。今でも濃いめですよ。当社比って感じですけど! 元々化粧する習慣なかったですし。こっちに引っ越してから化粧覚えたくらいですし」
「俺はもう化粧しねぇな。まぁ、ソーマはそのままでいいと思うぞ。ミレンナもそう思わないか?」
「え? あ、そうですね。ソーマ君はそのままでも十分魅力的だと思いますよ」
「本当ですか! この顔に生まれて良かったです! お父さん、お母さん、ありがとう!」
急に話を振られ、狼狽えつつも、ミレンナは素直に思ったまま答えた。
ソーマは大袈裟なくらい喜び、天を仰いで手を組んで祈りを捧げ始める。
ソーマの周りの冒険者達はどっと笑う。
「流石は愛のフラグクラッシャーだな」
「うっ、僕にも渾名が……。サラ姉ちゃんとレオン兄ちゃんと違って変な渾名付けられない武器にしたつもりなんですけど。フラグクラッシャーとか不吉だからやめませんか! 僕はミレンナさんとのフラグはしっかり回収しますからね! ね!?」
愛のフラグクラッシャー、となんとも言えない渾名が付けられたソーマだが、その由来は冒険者にとっては誇らしいものだ。
魔物と対峙しても危なげなくあっさりと倒してしまう。危機的状況に陥ったとしてもズドンと一撃、脳天にハンマーを撃ち込む思い切りの良さ。
ソーマと出会った魔物は運が悪い、人間を襲う前に刈り取られると言う話から付いた渾名である。
自信喪失したままのミレンナとの関係が全く進んでない事を揶揄する意味もあるのだろうが。
ミレンナは肩を丸めて、小さくなっている。