8.太陽の怒り
「ソーマ君、私ちょっと受付に行ってくる」
「はい、わかりました。僕はここでヴォルドさんにラヴィーナさんとの馴れ初めを聞いてますからごゆっくりどうぞ! さ、ヴォルドさん、事細かにお願いします!」
「別に言うことないんだがなぁ」
口元に笑みを浮かべ、ミレンナはヴォルドに軽く頭を下げ席を外す。
姿勢の良い後ろ姿にソーマはうっとりと見惚れているが、声が聞こえないくらいの距離が出来ると、真面目な顔でヴォルドに向き直る。
「ヴォルドさん、ミレンナさんの自信を持ち直すにはどうしたらいいんでしょう。僕だけじゃ駄目で。僕の実力とミレンナさんの実力は見合わないとかふざけた陰口叩く人もいますけど、僕一人じゃ今の結果は出せていません。ミレンナさんのサポートが手厚いのは間違いないんです。でもサポートって目に見えた結果ってあまりないじゃないですか。悔しくって。僕が声高々にミレンナさんの素晴らしさを語ったところで同じパーティだから庇ってるとかまたふざけた評価に繋がるんです」
「なんだお前知ってたのか」
いつの間にかギルドのムードメーカーとして名を挙げられる様になったソーマは、ミレンナに対する陰口に気にしていない雰囲気だった。
なのでヴォルド達も静観を決め込んでいた。
しかし、思っていたよりも気にしていたらしいソーマにヴォルドは思わず体を乗り出す。
「ミレンナさんを一時的に別パーティに派遣してサポートしてもらうって言うのも考えましたけど、ミレンナさんは断りそうですし」
「まぁ、そうだな」
「しかも言ってるのは僕らの同期ですし、いっそ新人パーティ毎の闘技大会でも開いてこてんぱんにしてやろうかなって。開始直後は前衛のみ、途中から後衛の補助ありで差を見せつけるって言うのはどうだろうって思ってるんです。サポートのあるなしで動きは変わるのでミレンナさんの素晴らしさを見せつけれるかと。提案してみるのもありかなって思ってます」
ヴォルドは椅子に座り直し、ソーマの言葉に耳を傾ける。
現在、ソーマ達のパーティが新人の中で頭ひとつ飛び抜けている。それに嫉妬した新人達がやっかんで攻撃しやすいミレンナの陰口を流しているのだ。
長年冒険者をしている他の人間も、現状をあまり良しとしておらず、どうにかしてあげたいとは思っていた。
ソーマもミレンナも着実にランクを上げており、将来有望なのだ。
「サラ姉ちゃんとレオン兄ちゃんが若くしてAランクになった実力者だとして、弟の僕もそうだってひとまとめにされるのも違うじゃないですか。才能の一言で片付けられて、今まで培ってきた努力を見て見ぬふりされて、お前はいいよなってこっちは頑張っても強くなれないのにって言われて。別にみんな最初から強かったはずないのに」
「なんだ、ソーマ、怒れるんだな」
いつもニコニコと喋っているソーマの新たな一面にヴォルドならず、周りにいた冒険者達も驚いている。
笑顔が消え、無表情で静かに怒るソーマの姿は、確かにサラそっくりだった。




