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神楽  作者: 黒紫
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第62話

第62話


<神楽のグループ:日の出 直後の街:5本道の正面に小さな神社(400平米)>

都筑 「『三鳥(さんのとり)神社』ですね」

「これで、F地点は『1』か『6』か『8』になりました」

風雅 「・・何故、『4』が無いと?」

神楽 「二週間程前、都筑さんに事前調査をお願いしました」

「領域内の『総量』を変化させる『変易(へんやく)』は術者の消耗が激しい為、」

「『影の世界』の情報収集は大変困難な状況です」

都筑 「私が調査したのは ここから少し離れた地域でしたけど、」

「この世界では意図的に『4』を隠すみたいですよっ」

「今回の作戦が成功すれば、」

「お互いの世界で『不慮の事故』が減らせるかも知れませんね」

風雅 「では(なお)の事、御影一人に頼るのは・・」

神楽 「いえ、御影さんは特別ですから、大丈夫ですよっ」


<油留木のグループ:神社に歩いて戻る3人>

妹 「あっ、御影さんが この領域に入ったみたい」

「えーと、神社の番号は『2』と『5』と『7』だったんだって」

油留木「そう・・。残りは『3』と『8』ね」

妹 「これで、8つ目の『四鳥(しのとり)神社』の位置が分かるんですか?」

「何かの図形が番号順に『一筆書き』になってるとかぁ、」

「私達が普段よく目にする物を場所と数字に置き換えてるとか」

油留木「まあ、普通はそう考えるわよねぇ」

「・・・」(油留木の表情が一瞬変わる)

「うふふ。やっぱり これは時間稼ぎなのよっ」

「私達4グループで、可能性のある場所を全て回るのは不可能だわっ」

妹 「えっ、でも、最悪 今回の作戦が失敗しても また日を改めて・・」

油留木「だからぁ、次は無いのよ」

「今度11人で来たら、神社の番号を全て変えるつもりなんだわっ」

妹 「そんなあ・・」

安茂里「道理(どうり)で何千年も『影の世界』の地図が入手できない筈です」

〈3人が神社の入り口に来ると、タクシーが現れる〉

御影 「E地点へ向かいますか?」

妹 「『六鳥(ろくのとり)神社』に戻るんですよねえ」「あっ、そうだ」

〈妹は近くの自動販売機でオレンジジュース(ペットボトル)を1本買う〉

御影 「それを飲む おつもりですか?」

妹 「御影さん。やっぱり、そうですよねっ」


<姉のグループ:緩やかな坂道を登る3人(4車線で中央分離帯のある道路)>

女の人「F地点までは まだ少しありますね」

鈴音 「そうね。貴女、喉が渇いたりしてない?」

女の人「はい、少し。鈴音さんと朱雪さんはどうですか?」

鈴音 「いいえ、私は別に・・」

朱雪 「私も渇いていません」

(前方右側に大きな公園が見える:2000平米)

女の人「少し、休んで行きませんか?」

鈴音 「いいわよ」

(公園の入り口に大きな石のプレートがある)

女の人「あれっ、これ何て読むんでしょうか」

(漢字2文字の名称:『??公園』)

鈴音 「知ってる漢字なのに読めないわね」

朱雪 「私もですぅ」


………無人の公園:右側にグランド、入口付近に水飲み場、奥にトイレと屋根付の机………

女の人「ちょっと水を飲んでみます」

〈コンクリート製の台に付けられた 高さが違う3つの蛇口の中央から水を出す〉

「・・・やっぱり、普通の水ですね」

「鈴音さんと朱雪さんも どうですか?」

鈴音 「嫌よっ。それ、貴女と貴女の妹にしか飲めない水だから」


<タクシー(走行中):後部座席右から妹・安茂里・油留木>

妹 「ねぇ油留木さん」

「以前、お姉ちゃんに出された問題なんだけど、」

(かず)で『1・2・3』と続いてたら、その前後の数字は何?って聞かれて、」

「油留木さんは(なん)て答えます?」

油留木「それ、何を答えても『間違い』って言われるんでしょ?」

「『問題』ってね、三元論で言うところの『2』の位置を持って、」

「『1』と『3』の位置を『答える』のよ」

「これを『1と3の関係』って言うの」

安茂里「『答え』が1つだと思えるのは、『1』と『3』を繋げてしまっているからです」

「『1』と『3』を分ける事が出来ない場合、永久に『答え』には辿り着けません」

妹 「うーん。それって、神様の『時間稼ぎ』なんですか?」

御影 「そうとも言われますし、違うとも言われます」

「この関係が良く分からないのでしたら、」

「『答え』は何時も『2つある』と考えるのが近道だと思います」

油留木「アナタ、私より若いんだから、苦労せずに『答え』を見付けようなんて甘いわよ」

妹 「・・・」

(タクシーの周りに車が現れ始める)

「あっ、やっぱり この世界にも人が居たんですね」

安茂里「私、嫌な予感がします」

(赤信号で停車)

御影 「このままE地点へ向かうのは危険かも知れません」

油留木「そうね。アナタ達、ここで降りるわよっ」

妹 「ええっ!?」


<姉のグループ:屋根付の机に向かい合って座る3人(鈴音と朱雪は遠方に海が見える)>

女の人「あっ、雨が降ってきましたね。『狐の嫁入り』でしょうか」

鈴音 「さあ、どうかしら」

(姉の視線の先、建物の隙間、高架鉄道を水色の電車が右手に走り去っていく)

女の人「人も車も居ないのに、電車は走ってるんですね」

朱雪 「そうですか・・」

女の人「あれっ、二人とも見ないんですか?」

朱雪 「いえ、神楽様こそ、此方を見ないのですか?」

女の人「見るって、何を・・」

〈姉が後ろに振り向くと、トイレと水飲み場が消え、グランドだけになっている〉

「これって、マズいんじゃ・・」

鈴音 「この雨、濡れても平気かしらねぇ」

女の人「うーん。もしかして この公園の名前、」

「読めないんじゃなくて、憶える事が出来ないんじゃないですか?」

「きっと、私達の世界には存在しない公園なんですよっ」

朱雪 「そう考えるのが妥当のようです」

女の人「あれっ、(なん)だか隣のテーブルの数が減ってません?」

「それに、すぐそこにあった水飲み台も無くなってるし・・」

鈴音 「雨が止んだわね」

朱雪 「早く出たほうが良いと思いますぅ」

女の人「じゃあ早速、F地点に向かいましょう」


………公園の入り口:道路上を多数の車が行き来している………

女の人「やはり人の姿は見えませんね。車は見えるけど、運転手は居ない」

鈴音 「あら、道路が全く濡れてないわね」

朱雪 「さっきの雨は『降雪』を変化させたモノでしょうか」

「本物の雨にしか見えませんでした」

女の人「あっ、これって・・」

「私、本当は人も ちゃんと歩いてるんだと思うんです」

「人が見えないのは、御影さんが言った通り、」

「私達が人と干渉できない状態に置かれているから」

「この世界の人達には私達が見えてないし、」

「逆に見えている物には物理的な作用が起きる」

「『同調』と、『誘導』の派生である『錯交』によって、」

「パズルのピースが見事に(はま)ってる」

「人って、『(みち)』があると思うから進むんですよね」

「今、私達が居る場所って、この周りに居る人達にとっては『道』じゃない」



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