第61話
第61話
<姉と神楽のグループ:境内の8人>
女の人「・・そうだったんですか。私、今迄そんな事考えもしませんでした」
鈴音 「便利だとか、そうあって当然だとか思ってる事って、実は裏があるのよ」
女の人「・・・」
都筑 「あのぅ、そろそろ出発したほうが宜しいんじゃありませんか?」
女の人「そうですね。御影さん、妹達の所へ行って下さい」「篝さん、お願いします」
御影 「はい」
篝 「お任せ下さい」
都筑 「それでは、朱雪さんに抑制解除を もう一度掛けますね」
女の人「いえ、今回は必要ないと思います」
都筑 「そうですか」
鈴音 「はぁ・・」(鈴音が溜息を吐く)
「こっちの世界では戦いたく無かったのに、仕様が無いわねっ」
朱雪 「私も心苦しいですぅ」
風雅 「はいはい。私達はA地点に出発するから、E地点で合流ね」
<油留木のグループ:妹と安茂里を先頭に商店街を歩く3人>
妹 「ここだけ両脇の街灯に『鳥のプレート』が付けてあるね」
〈妹が街灯の上部を指差す〉
安茂里「これはスズメでしょうか・・」
妹 「えーと、周りにある店はパン屋に八百屋に米屋に酒屋・・」
「油留木さん、建物の様式も売っている物も私達の世界と同じですよね」
油留木「そうね」
妹 「私ね、買い物をしていて ふと思う事があるんです」
「自分では選んでるつもりでも、実は選べる物なんて何もないんじゃないかって」
油留木「それは、『錯交』が使える能力者なら誰でも考えるそうよ」
妹 「えっ、安茂里もそうなの?」
安茂里「店に並ぶ商品は全て『幻』、自分が選んだ瞬間に『実体化』する」
「もしも『錯交』により、手にした物が全て交換されるのであれば、」
「人は決められた物しか手に入れられません」
「例えば、そこの八百屋でリンゴを1個買ったとします」
「品物は他にも沢山ありますが、買った瞬間、」
「八百屋には初めからリンゴが1個しか存在していなかった事になります」
妹 「うーん、こんな時、お姉ちゃんが居たら何か言いそうだよね」
油留木「きっと、」
「『それって、コンピューターのメモリ管理の事ですよね』って言うんじゃない?」
<姉のグループ:七鳥神社を出る3人>
鈴音 「神社を一番最後に出たのは何故?」
女の人「みんなにはタイミングの調整だと言いましたけど、」
「ちょっと気になる事があるんです」
「『七鳥神社』は敷地面積が一番小さくて、」
「これから向かうF地点の神社は面積が一番大きい」
「こっちの世界と私達の世界では、数字と その数字が持つ意味が異なっていて、」
「街の景観に若干ズレがあるのは そのせいだと思うんです」
鈴音 「そうね、F地点の神社の番号がヒントになるかも知れないわね」
女の人「鈴音さんは、数字や単位に特別な『思い』とかありますか?」
鈴音 「私は別に無いわよっ」
「縁起の類で『7』を好んで『4や9』を避けたりもしない」
「ただ、単位に付いては色々と『謂れ』があるわね」
女の人「それはどんな事ですか?」
鈴音 「例えば『万』という単位は、人が操れる事の出来る単位」
「単語の数だったり、漢字の種類だったり、個人が把握できる資料やコレクション」
「一万集めれば、その分野の凡その事が分かると言われているわよっ」
女の人「それで『万が一』なんて言葉があるんですね」
朱雪 「神話でしたら、『兆』の単位が『奇跡』を表す単位とされます」
「『他の者より寄与され、兆の単位を集めた者に神となる機会を与える』と」
女の人「そう言えば、動物って1Kg当たり1兆の細胞で出来てるんですよね」
「これって、みんな『奇跡』を信じてるって事なんでしょうか」
「だから、生物はどんどん自分の体を大きくしていった」
鈴音 「それは違うわよ、って言いたいところだけど、」
「『エネルギー効率が良いから』なんて理由よりは面白いわね」
<油留木のグループ:突然、妹が薄暗い路地に興味を示す>
妹 「ねえ、ここを通ってみない?」
〈妹は2人の返事を待たずに路地へ〉
安茂里「姉さ・・」
油留木「待って、」
〈油留木が安茂里の左手を掴む〉
「あの子に任せるわっ」
(妹の右側に、暗い空間)
妹 「何だろう。これ、駅の自動改札!?」
〈妹は4つあるゲート(開いた状態)の左から2番目に入る〉
「わっ、真っ暗だぁ」「あっ、ここに階段が・・」
(改札を3メートル程進んだ右側、上へ登る階段の先から小さな星空が見える)
【・・行かなきゃ・・】
〈階段を登ると、真夜中の暗い駅のホーム(上下線を挟んだ両側にホーム)〉
【・・ここって、また別の世界?・・】
【ホームの前方には金網の柵があって、すぐ下の道路を車が何台か走ってる・・】
「あっ、電車が来る・・」
(左方向、遠くからライトが2つ近付いて来る)
「あれっ、反対側?」
(5両編成の暗い水色の電車が反対側のホームを通過:明かりの点いた無人電車)
………自動改札の前:油留木と安茂里………
油留木「流石に ここは通れないわね」
安茂里「姉様は大丈夫でしょうか」
〈4分後、妹が改札から出てくる〉
妹 「ごめんなさい。私、何だか急に・・」
油留木「いいのよ。何の道、こんな事でも無ければ先に進めそうにない状況だから」
安茂里「姉様、中はどうなっていましたか?」
妹 「それがね・・」
………(会話の途中から)………
油留木「行き先不明の電車ねぇ。多分、どんな事をしても乗れなかったわよ」
妹 「もし、私が反対側のホームの階段を登っていたら・・」
油留木「そしたら、やっぱり反対側のホームに電車が来たんじゃない?」
妹 「えっ、何で?」
安茂里「電車は反対側で、尚且つ止まらずに通過しました」
「姉様は現在、二重に保護された状態にあるのだと思います」
<姉のグループ:立体交差の下(2車線の道路)を歩く3人:少し暗い歩道>
女の人「あっ、ここにリサイクル用の新聞と雑誌が積んでありますね」
(右側にゴミ収集の看板と大量の紙類)
「これって、コンピューターの入門書?」
〈姉は雑誌の一番上に置かれた一冊の本を手に取る〉
朱雪 「誰かが意図的に置いた物でしょう」
〈姉は本のページを捲る〉
女の人「・・CPU内部で数を扱う場合、」
「その『数』と、その『逆の数』が同時に使われると書いてありますね」
鈴音 「『存在する物』と『存在しない物』、それは『世界』を隔てているだけで、」
「2つの世界に同時に存在しているのよ」
女の人「我々がこの世界に存在するという事は、『ゼロの世界』に我々の『殻』、」
「つまり『無』が存在しているという事ですよね」
朱雪 「例えば、計算に算盤を用いた場合、」
「珠は移動しても、使われない珠が消えて無くなっている訳ではありません」
「物質が消えたように見えて、実は別の世界に・・」
女の人「そうかっ、三元論の『1と3』の位置、」
「『2』を持って『0』と『∞』を交換するんですよね」




