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神楽  作者: 黒紫
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第59話

第59話


………次の日(月曜日)午前8時:家の前の姉妹:篝のタクシーと赤い車………

安茂里「姉様、おはようございます」

妹 「安茂里、油留木さん、篝さん、おはよう」

油留木「おはよう」

篝 「おはようございます」

〈妹は後部座席に座る(安茂里の右側)〉

油留木「目的地まで ちょっと遠いけど、今日は二人とも私の指示に従って貰うわ」

「私が使える『同調』は盃様みたいに大勢を長時間操れないの」

「だから、私から離れて勝手な行動はしないでよ。分かった?」

安茂里「はい。油留木様」

妹 「はい、油留木さんっ」


一方 姉は神楽(運転席)と都筑(助手席)に挨拶した後、後部座席に乗り込み、

タクシーが視界から消えるのを待ってから、神楽が車を発進させる。


女の人「今日の作戦、どんな『グループ分け』にしたら上手く行くんでしょうか?」

「『同調』は、神楽さん・油留木さん・私」

「『錯交』は、安茂里・神楽さん・私の順で、私が一番レベルが低い」

「1グループ最大3人で4グループ必要だと考えたら、足りないですよね」

都筑 「私の能力を使えば朱雪さんの『抑制』を一時的に解除してSSSに出来ますよっ」

女の人「そうなんですか?」「じゃあ、都筑さんと朱雪さんを同じグループに・・」

神楽 「本当にそれで良いんですか?」

女の人「えっ?」

神楽 「目的地に着くまで まだ時間がありますから、ゆっくり考えて下さいね」


<別の時間:黒い車(走行中)運転席に朱雪、助手席に風雅、後部座席に鈴音と御影>

鈴音 「この中で『影の世界』へ行った事があるのは、貴女だけかしら?」

〈鈴音は御影に顔を向けたまま、御影の答えを待つ〉

御影 「何故。お分かりになったのですか?」「私は、『同調』も『錯交』も使えません」

鈴音 「ふふふ。それは、貴女がその能力を使えないのではなくて、」

「使う必要がないからでしょう?」

風雅 「朱雪は、何時も御影に同行しているのではないのか?」

朱雪 「私は『影の世界』へ行く事を禁じられています」

「今回は特別に、先代様と先々代様に了承を得ました」


………午前10時3分:海岸から1キロの地点:タクシーから降りる3人………

妹 「ここがそうなんですか?」「普通に市街地ですよね」

油留木「来る途中で話した通り、『境界』の場所は絶えず変化するの」

「一般人が偶然『境界』を見付けて越境する事もあるけど、」

「『同調』と『錯交』が同時に使えないと すぐに弾き返されてしまうわ」

(タクシーがUターンをして3人の視界から消える)

安茂里「姉様、目的地は近くにあるように見えて実際は遠い距離にあります」

「私達11人の連携が無ければ作戦は成功しません」

「姉様は『神隠し』や不思議体験などの話を聞いた事がありますか?」

妹 「突然 人が消えたり現れたりするとかぁ、」

「道があると思って進んだのに実は道じゃなくて事故になったりするって話?」

油留木「人間だから見間違いや錯覚の場合が殆どだけど、」

「稀に事故に繋がってニュースになってるのもあるわ」

「私達の行動次第では別のトリガーを引き兼ねないから、」

「『影の世界』へ入ったら見た目だけで勝手に判断しないようにっ」


………午前10時12分:海岸から3キロ地点の駐車場:タクシーと赤い車と黒い車………

女の人「皆さん、私が指示するメンバーで行動して下さい」

「私と鈴音さんと朱雪さんは、B地点へ向かいます」

「神楽さんと都筑さんと風雅さんは、D地点へ向かって下さい」

「御影さんと篝さんは、中継役をお願いします」

鈴音 「一つ いいかしら?」

女の人「はい」

鈴音 「もし『戦い』になったらどうするの?」

「向こうは安茂里が居るから大丈夫だけど、このメンバーだと困るんじゃない?」

女の人「そうですね」

「都筑さん。朱雪さんの抑制解除って何時間くらい持続出来るんですか?」

都筑 「1回(きり)なら3時間です。分割にすれば1時間を4回にする事も可能ですよっ」

女の人「じゃあ分割でお願いします。一時間後にC地点で落ち合いましょう」

都筑 「分かりました」

〈都筑が人差し指を立てた後、指先から出た光玉(ピンポン玉)が朱雪の胸元へ〉

(朱雪の体が一瞬光る)

朱雪 「あぁ、力が戻ると落ち着きますぅ」

風雅 「はいはい。あんまり時間無いからね」


<油留木のグループ:海岸方面へ向かう路地:油留木を先頭に安茂里と妹>

妹 「このまま真っ直ぐでいいんですか?」

油留木「そうよ」「安茂里、私と並んで歩いて頂戴」

安茂里「はい」

〈油留木と安茂里が並ぶと、3人の歩調が全く同じになる〉

油留木「安茂里、準備はいい?」

安茂里「はい。上手く交換できました」

(次の瞬間、景色が夕方に変わり、遠くの建物の配置が少し変化する)

妹 「ええっ!?、何コレっ!」

〈妹は思わず立ち止まる〉

油留木「ちょっと!境界付近で止まっちゃダメだって言ったでしょう!」

妹 「ご、ごめんなさい・・」


<姉のグループ:立体交差の下:姉と鈴音が並んで前を歩く>

女の人「この辺ですね」

鈴音 「そうね」

(立体交差を抜けると太陽が真南に移動している)

女の人「ここは もうお昼ですね。すると時差が2時間あるって事ですか?」

鈴音 「あら、違うわよっ」

「その領域(ごと)に異なる空間の大きさと時間の流れがあって、」

「『境界』を(また)ぐと時間が補正されるの」

「でも、その割合までは実際に行ってみないと分からないわね」

「だから、彼女に中継役を任せたんじゃなくって?」

女の人「いえ、私は単に私達全員をパズルのピースに例えたら、」

「この組み合わせが一番綺麗かなあって思っただけなんです」

鈴音 「そう・・。貴女らしい答えね」

朱雪 「素晴らしいですぅ」


<神楽のグループ:坂道を登る:神楽を先頭に都筑と風雅>

神楽 「そろそろですよ」

「ここは時間のズレが最も激しい所ですから力の配分に注意して下さいね」

(突然夜になり、道路の赤い街灯が明るく光る。前方に小さな神社)

風雅 「神社の位置は我々の世界と変わらないな。但し番号は違うようだ」

都筑 「やはり、全ての神社を(めぐ)らないといけませんねっ」


<油留木のグループ:石の鳥居を3人で(くぐ)る:1000平米の敷地>

妹 「神社は安全地帯なんですか?」

油留木「両方の世界で最も変化が少ない所とされているわ」

妹 「ところで、周りに人の気配がないし、車も走っていませんよね」

安茂里「『錯交』の効果で出会わないタイミングに調整されました」

〈3人は狛犬の前へ移動〉

妹 「『影の世界』にも、やっぱり私達が居るの?」

油留木「同一人物が出会う事は絶対無いけど、」

「両方の世界に同じ人物が居るとは限らないわよ」

安茂里「姉様、この世界へ来るには『世界の総量』を司る神と契約しなくてはなりません」

「つまり、『領域内』の合計は必ず同じになるのです」

妹 「すると私達が『影の世界』へ来たのと同時に、この世界の私達と入れ替わった!」



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