第58話
第58話
<5章>
………6日後の日曜日(11月下旬)午前10時:水族館正面:妹と安茂里………
妹 「ねえ安茂里ぃ。これってホントに私達の修行になるのぉ?」
「それに午後からは動物園でしょう。一体これから何が起きるんだろう・・」
安茂里「この連休で、私と姉様の未来に変化が訪れるのだと思います」
「私、やっと夢が叶いそうです」
妹 「それって、お姉ちゃんが今日か明日には神楽になるって事?」
安茂里「はい」
………館内通路を歩く二人:左右に水槽………
妹 「あっ、これ、『ナポレオンフィッシュ』だね。テレビで見たのと同じだぁ」
安茂里「姉様、何か気付きませんか?」
妹 「えっ?」
………大水槽前(大小様々な魚が泳ぐ)………
妹 「安茂里ぃ。安茂里って突然不思議な話をしたり、突飛な展開になったりするよね」
安茂里「姉様は こんな風に考えた事はありませんか?」
「『人』や『生き物』のフリをした神様が、水族館や動物園で人を観察していると」
妹 「何、それ」
安茂里「神々の中には、宇宙の『有りと有らゆる物』に自らを変換し、その生涯を終え、」
「その記憶と経験を売る商売があると聞きます」
「私達も探してみませんか?」
妹 「探すって、その神様を・・?」
〈妹は安茂里の顔をじっと見つめる:2秒〉
「ふふっ。安茂里って面白いね」「じゃあ、二人で探そっか」
安茂里「はい。姉様」
二人は館内を喋りながら楽しそうに見て回る。
安茂里は水槽の巨大魚に一瞬驚いたり、展示室の標本に興味を示したりしている。
………1時間後:屋外:出口付近………
妹 「それじゃあ お昼ごはんを食べてから、次の動物園だね」
「全部は見られなかったけど、また一緒に来ようね」
安茂里「はい」
………12時過ぎ:喫茶店:中ほどの席でサンドイッチを食べる二人………
安茂里「姉様、水族館で何か感じた事はありますか?」
妹 「うーん、私には良く分からない」
「私 疑問に思うんだけど、神様が世界を管理しているのなら、」
「どうして『食物連鎖』っていう命の取り合いがあるんだろう」
「仮に『永久機関』の話が本当だとして、」
「もっと上手い方法にしてくれても良さそうなのに」
安茂里「『食物連鎖』に付いては、こんな話を聞きました」
「『生き物』のフリをする神様にはライバルが居て、生物に悪魔の囁きをしました」
「『もし、擬態した神を見付ける事が出来たなら、』」
「『その者の全ての罪を許し、神になる権利を与える』と・・」
「生物は生まれ乍らにして肉体という永久機関の管理者です」
「例え自らの行いが『借りる力』、つまり『罪』に該当するとしても、」
「免除という『奇跡』に縋るようになりました」
「これを『囚人のジレンマ』と言います」
妹 「じゃあ、それは『3つの関係』で『答え』が無いの?」
安茂里「いいえ。たった1つの例外、『錯交』により『機会』が与えられると言われます」
妹 【・・もしかして安茂里は・・】
「ねえ、安茂里って・・、私の夢を叶えてくれるの?」
安茂里「姉様の夢は何ですか?」
妹 「・・・」(妹は安茂里の目を見る)
「私の夢は・・」
………午後2時30分:動物園:フラミンゴの前………
妹 「人間って、また人間になれるのかなぁ・・」
安茂里「世界は8つの『属』に分かれていて、第5属に『人間』が居ます」
「『世界の総量』を司る神と『世界の境界』を司る神と契約し、」
「『器』を借りる事が出来れば、望みの体を手に入れられます」
「第5属には『原核細胞』を始め、昆虫や魚類・鳥類・哺乳類等」
「場合によっては第2属である『銀河』や『星雲』になる事も可能です」
妹 「何て言うか、凄くスケールの大きな話だね」
「それなら、私達が望めば宇宙にもなれるの?」
安茂里「『宇宙』は正確には『器』ではなく『概念』なので、」
「『属外』又は第0属と呼ばれます」
妹 「安茂里は何でも知ってるんだね」
安茂里「私、姉様と神楽様に出会ってから、よく『夢』を見るようになりました」
「私の役割を思い出させる為の『記憶』という夢です」
妹 「まさかとは思うけど、」
「『錯交』って、檻の中の動物と人間を入れ替えたりも出来るの?」
「永久機関の管理者を交換したのと同じように・・」
安茂里「姉様っ」
〈安茂里が妹の顔をじっと見つめる〉
妹 「・・そうだね、安茂里。他の所にも行こうか」
安茂里「はい」
その後 二人は建物の中に入り、ペンギンや北極熊等を観察、そして園内を一周。
………午後4時:動物園前………
妹 「もう時間だね。ちょっと急いで回ったけど、安茂里は楽しかった?」
安茂里「はい」
〈そこへ〉
油留木「アナタ達、まだ作戦会議が残ってるわよ」
「少し疲れてるみたいだから、休んだほうが良いんじゃない?」
………篝のタクシーで移動中(助手席に油留木)………
妹 「私と安茂里と油留木さんで1グループなんですよね」
油留木「そうよ。この作戦には安茂里の『錯交』が必要なの」
妹 「『錯交』が必要って、『錯交』は安茂里しか使えないんじゃないの?」
「お姉ちゃんのグループにも、神楽さんのグループにも・・」
油留木「アナタ、神楽の事なーんにも知らないんでしょう」
妹 「まさか、神楽さんって・・」
安茂里「姉様。姉様の夢は半分、既に叶っています」
<別の時間:神楽の本部:12階:神楽と姉>
神楽 「これでやっと、私の肩の荷が下ります」
〈神楽が右手を胸に当てると、七色に輝く光玉(ソフトボール強)が出てくる〉
女の人「神楽さんは、これからどうするんですか?」
〈姉は光玉を右手の掌で受け取り、自分の胸へ〉
神楽 「秘密です」
女の人「あれっ」
「神楽さんの力の一部を貰った筈なのに、神楽さんの力は全然変わらないんですね」
神楽 「はい。元大将ですから」
………午後5時:神楽の本部:後部座席で もたれ合って眠っている妹と安茂里………
油留木「着いたわよっ」「もうみんな、応接室に集まってるわ」
妹 「あっ、はい」
安茂里「・・おはようございます」
………午後5時過ぎ:神楽の本部:応接室の10人………
御影 「姉から絵画を借りてきました」
「明日、兄と姉に絵画を返す事が出来れば、作戦は成功です」
〈御影は20センチ四方の抽象画(第30話登場)を全員に見せる〉
妹 「この絵、誰かが お姉ちゃんに落札させるように仕向けたんでしょう?」
「絵の上半分が黒、下半分が右から青・黄色・黄金色・白」
「何かの暗号かなぁ・・」
女の人「これって、単なる抽象画じゃないですよね」
鈴音 「あら、これは抽象画じゃなくて、風景画よ?」
姉妹 「・・・」
安茂里「夜・海・砂浜・明かり・家」
女の人「すると海の家・・じゃなくて一般住宅?それも海を間近にした砂浜に?」
朱雪 「神楽様は『パラレルワールド』に付いて、どのように お考えですか?」
女の人「我々が居る宇宙の他に、似たような宇宙が沢山あるんじゃ・・」
妹 「あっ、お姉ちゃん・・」
神楽 「私は神楽の座を譲りました。私はもう、代表ではありません」
女の人「安茂里は次期神楽になったよ。これからも妹を宜しくね」
鈴音 「安茂里。良かったわね」
安茂里「はい。ありがとうございます」
都筑 「話を戻しますけど、世界は宇宙を幾つも連ねた形にはなっていないんですよっ」
「人が考える『次元』という概念は、現実には大きく異なるんです」
妹 「それって、『8つの属』と関係があるんですか?」
風雅 「『変化の力』『繋ぐ力』『無の力』3つ揃って『境界』が生まれる」
「『境界』は共有する事が出来ない」
「『8つの属』は『境界』という『空間』を合わせ持つ」
女の人「じゃあ、宇宙よりもずっと小さな単位で『別空間』が形成されているんですか?」
油留木「それは、貴女自身で確かめれば宜しいんじゃありません?」
鈴音 「油留木。口が過ぎるわよ」
女の人「いえ、私は今まで通りで構いません」
妹 「それで、具体的に明日どうなるの?」
神楽 「それは、明日のお楽しみです」




