表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神楽  作者: 黒紫
57/67

第57話

第57話


鈴音 「・・さてと、そろそろ始めましょうか」(鈴音は御影の顔を見る)

御影 「はい」

妹 「えっ?」


………空室へ移動(70平米)部屋の中央に8人………

朱雪 「これはSSクラスの試験ですぅ」

「鈴音様と御影様の試合、見事()めてみて下さいですぅ」

妹 「うん、分かったよ」


(四隅へ3人ずつ分かれる:姉・妹・安茂里:神楽・都筑・朱雪)


………鈴音 VS 御影………

鈴音 「面倒な事は嫌いだけど、仕方ないわね」

御影 「私は、そうでもありません」


鈴音は涼しい顔をしながら右手を軽く握り、胸の高さの所で輪を描くような仕草をする。

すると、鈴音の前方にドーナツ状の光の輪(直径50センチ)が次々と出現。

一方 御影は試合開始直後から構える事も無く、鈴音の一連の行動をじっと見ている。

やがて光の輪が10個になったところで、鈴音は腕を振り、一斉に御影へ向かわせた。

しかし、光の輪が中間地点を過ぎた時、

御影の前方に巨大な光の壁が現れ、光の輪が次々と『風』に変わる。


鈴音 「あら、もう大技を使うのね」

〈御影は両手の掌を上に向け、左右に大きな光玉を出現させる:直径30センチ〉

御影 「いけませんか?」

〈2つの光玉は互いに引き合い、光玉を中心として巨大な風が起こり始めた〉

妹 「これって・・」

女の人「私達が『降雪』を使った時の手順を簡略化したものだよ」


巨大な『風』は渦を巻き、二人を囲むように循環し始める。

2秒後、風は鈴音の周囲に集約し、鈴音の左斜め前と右斜め前に『人の影』が形成された。


妹 「あっ、この技・・」

〈次の瞬間、鈴音と御影を取り囲む光のカーテンが出現し、中の様子が遮られる〉

朱雪 「はい。お見事です」

〈妹は光のカーテンの中へ入り、二人の間に立つ〉

(鈴音の前には、御影の姿をした分身と、鈴音の姿をした分身)

鈴音 「あら、よく分かったわね」

〈5秒後、分身とカーテンが消え、全員が中央へ集まってくる〉

神楽 「はい。SSクラスに合格です」

安茂里「姉様、感激しました」


………応接室の8人:全員にお茶と茶菓子………

神楽 「他に質問はありますか?」

女の人「・・えーと、『(われ)思う、故に(われ)()り』って、実際どうなんですか?」

神楽 「それは逆です」

「自分で自分だと認識する瞬間、自分は居ません」

「これは、『平均』の概念で説明できます」

「この世界に同じ数が存在しないという条件の(もと)、」

「存在する全ての数が、何かと何かの『平均』であるのは不可能です」

「しかし、『三元神』は『偽りの力』を用いる事でこの状態を可能にしました」

「『1』と『3』という特定出来ない概念を使って、」

「我々という『偽りの2』を存在させるのです」

鈴音 「例えば『人』が皮膚という『外との境界』を持つ事、」

「そして、臓器という『内との境界』を持つ事」

「『人』の上に『社会』があるように、『人』の下にも『社会』があるのよ」

「勿論、それは『人』であるとは限らないし、」

「単なる『概念』としての存在かも知れない」

朱雪 「自分が自分だと思う瞬間、自分が存在してしまうと自分は消えてしまいます」

「だから、自分を守る為に『上の単位』と『下の単位』が必要なんです」

妹 「うーん、良く分からないけど、」

「みんな自分が特定されないようにする事で、自分の居場所を確保してるって事?」

安茂里「それは、姉様らしい答えだと思います」

女の人「私は違う意見なんですけど、ここでは言わないほうが良いですよね」

鈴音 「ふふふ。貴女もやっと、神楽としての自覚が出てきたみたいね」


………次の質問………

妹 「『必然』の反対って『偶然』じゃないんですか?」

鈴音 「ええ。同じく『三元論』では『男』の反対は『女』には ならないわね」

「だから、『必然』や『偶然』だけ取り出す事は出来ないのよ」

「例えば、安定する形に『素数』を用いて、」

「そうでない物には別の数を割り当てる場合もあれば、」

「意図的に違う形にする場合もあるって事よっ」

妹 「それからもう1つ、『記憶』で『嬉しい記憶』と『嫌な記憶』ってありますよね」

「これは・・」

鈴音 「永久機関を続けさせたい管理者が『嫌な記憶』を持たせる事で、」

「『忘れる』という機能を付けさせたのよ」

「だから『嬉しい記憶』よりも『嫌な記憶』の方が勝ると言われているわね」

妹 「そんなあ・・」

鈴音 「『忘却』は身を守る為にも、身を滅ぼす為にも使われるのよ」

「よく覚えておいて」


………次の質問………

女の人「『光』って何ですか?」

鈴音 「『光』は『繋ぐ力』、『重力』は『無の力』だと呼ばれているわね」

「これがヒントよ」

女の人「えっ、じゃあ『光』は存在しないんですか?」

鈴音 「そうよ。光には『波の性質』と『粒子の性質』があるでしょう?」

女の人「つまり人は観測によって、」

「自分の『2』の位置から『1』と『3』を繋げてしまったんですね」

鈴音 「ええ」

女の人「すると、『エネルギー』って概念にも矛盾が出ますよね」

神楽 「我々は『1と2』を『β(ベータ)(ぞく)』、」

「『2と3』を『α(アルファ)(ぞく)』として区分しています」

「特に『α属』を『2と3の関係』と呼び、『失われる物』と定義されます」

女の人「その部分を『エントロピーの増大』って言うんですね」

朱雪 「はい。だから『ブラックホール』は重力無限大ではないんですぅ」

妹 「・・・」

神楽 「今日は、この位にしましょうか」


………赤いスポーツカー(帰り道)………

鈴音 「ところで、今日の技、貴女なら分かったわよね?」

女の人「はい」

「相手の風を取り込んで、相手が『怖い』と感じている物を具現化するんですよね」

鈴音 「ええ。そろそろ新たな『三者の関係』が築けそうね」

安茂里「姉様、これで私は安心して『錯交』を使えます」

妹 「・・・」(妹は少し嬉しそうな顔をする)

「あっ、そうだ」

「永久機関から抜け出す方法」

「管理者が勘違いして自分から『永久機関』に入ってしまうって聞いたけど、」

「どうしてなんですか?」

鈴音 「それは、貴女自身が知っている筈よ」

「今までに起こった事、今までに知った事、ちゃんと答えは顔を出しているわよ?」

妹 「・・・」

女の人「そうだね。まだ、時間はあるよ」


………5分後………

妹 「ねえねえ、お姉ちゃん」

女の人「なあに?」

妹 「どうして、人には寿命があるの?」

女の人「それは、神様が次の体を用意する為の準備期間で、」

「本当はもっと寿命を延ばせるんだよ?」

妹 「えっ、そうなの?」

女の人「でも、間隔が短かすぎると、自分が本当の自分なのか不安になるから、」

「自分を関連付けさせる為の『成長』システムなんだって」

妹 「へえ、そうだったんだぁ」


<4章完>



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ