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2051年4月19日 地球時間07:35
種子島宇宙センターにて
「遂に乗るんだな……」
整理券を受け取ったカズヤはそう呟いた。
地球人類生存作戦が発令された日から一年が経ち、人々は地球を脱出する準備を終わらせた
この一年間で戦争はどんどんと過激になっていき、地上にも流れ弾が落ちてくる日々が続いた
人々は移民用の大型宇宙船を量産し、更には宇宙で戦闘する為の兵器まで開発したのだった
「251-850番の方は、搭乗口へお越しください……」
機械の音声アナウンスに合わせて一斉に人が動き出す
人々が向かう先には宇宙船の搭乗口がある
カズヤの番号は1260番、まだ時間がかかるようだ
「見て見て!、αアーマーがあるよ!」
「はいはい、分かったから搭乗口に行きましょうね……」
「えぇ、良いじゃん!、もう少し見て行こうよー!」
幼い子供が興奮したように声を出し、それを母親が抑える
いつもと変わらない当たり前の光景が目の前で広がる
「そうだよな、“当たり前”も無くなっていくんだよな……」
微笑みと哀しみが混じった声で誰かが呟く
隠しきれない絶望感が、ゆっくりと辺りを覆った
先の見えない不安、安らぎがない不安、人々の不安感を表したような空気感が、待合室を覆い隠すように広がって行った
「851-1450番の方は、搭乗口へお越しください……」
再び聞こえた音声アナウンスと一緒に多くの人が立ち上がる
勿論、カズヤも一緒に立ち上る
宇宙船への搭乗口へ、一歩、また一歩と足を進めて行く
カズヤはふと、何かに気づいたように窓ガラスを見た
そのままその景色を見て立ち止まる
そこに広がっていたのは、薄い緑色に染まった木々の葉と、上部を覆い隠す美しい青空が織りなす、素晴らしい自然だった
何処か懐かしいその景色は、これから旅立つカズヤの胸を打った
「そっか、こんなに綺麗な景色も、もう見られなくなるんだ……」
今まで当たり前だと思っていた自然な会話、今まで当たり前だと思っていた素晴らしい風景
その全てを奪う運命の残酷さは、カズヤの肩に重くのしかかる
それは、その青年が背負うには重すぎる現実だった




