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偽物王女~引きニー少女マルガリーテと悪魔の契約  作者: 二次元の救世主
第三章 マルガリーテ、王女と戦う!?
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3

 大通りに出たところで、アミーに話しかけた。

「悪かったわね、私のわがままに付き合わせちゃって。城に帰ろう」


 しかし、声が返ってこない。

 振り返ると、そこには誰もいなかった。


「え? ちょっとアミー、アミー?」

 辺りを見回したが、影も形もなかった。

「悪い冗談ならやめてよね……」


 ――まさか、まだマルガリーテの家にいるのだろうか。

 本音を言えば、もう戻りたくなかったが、仕方なく今来た道を足早に戻った。


「……あれ?」


 どういうわけだろう。

もう食堂は閉店しているはずなのに、マルガリーテの家の脇に馬車が止められている。

 それに、なぜかついさっきまで点いていたはずの明かりも消えている。

 恐る恐る馬車に近づくと、マルガリーテの体は硬直した。

 いや、マルガリーテだけじゃない。女性を抱えた大男もまた、マルガリーテを見て固まっていた。


 ……って、あの女性は……姉さん!?


 何がどうなっているのかさっぱりわからない。

 ただ、心が告げている。危険だ、と。早くこの場から逃げろ、と。

 そうしたいのは山々だけど、体が言うことを聞いてくれない。

 ぐずぐずしていると、大男の後ろからさらに全身黒ずくめの者たちが現れた。

 その中の一人が、小さな女の子を抱えている。

 あの人形のような髪は、見間違えることはない。


「カトリ――」

「捕らえろっ!!」


 妹の名を呼ぶ声は、大男の声にかき消された。

 全身黒ずくめの者たちがマルガリーテを取り囲む。

 悲鳴を上げたくても、声にならない。

 ああ、こんなことならちゃんと武術訓練とやらをやっておくんだった。

 まあ、一朝一夕でどうにかなるものじゃないかも知れないけど。


 マルガリーテにこの状況を打開する術などあるわけはなく、また夜道を歩く人影もなかったので、助けてくれる者など現れず、捕まるのに時間はかからなかった。

 下手に抵抗して殺されたくはなかった。

 あと一日寿命があるはずだから、わざわざそれを早めることもない。

 後ろ手に縛られ、猿ぐつわをされて、馬車の荷台に放り込まれた。そこは鉄格子の牢屋のようになっていて誘拐犯たちはそこにマルガリーテの家族も押し込めると、外側に鎖を巻いて鍵をかけた。

 そのまま、馬車はゆっくりと夜の城下町を走った。

 何事もなかったかのように。


 幸か不幸か、誘拐犯たちはまだマルガリーテの正体に気づいていないようだった。

 あの暗がりでは無理もない。

 ましてや、着ている服がこの黒いドレスでは、王女と気づける方が変だ。舞踏会で着ていたあの装飾品たっぷりの美しいドレスならいざ知らず。

 それに、場所も悪い。

 マルガリーテが誘拐された場所は城ではなく、城下町の、それも裏通りにある住宅なのだから。

 まさか夜に王女がこんなところを歩いているなんて、国王だって思うまい。


 でも、いずれ正体はばれるだろうな……。

 誘拐犯の目的がわからないからどうすればいいのかもわからないけど、王女だとばれたら、あまりよくないことが起こりそうな気がした。

 明日は、マルガリーテの最期の日だということもあるし。

 少しずつ、マルガリーテの心に不安が押し寄せてきた。

 それでも取り乱さなかったのは、家族も一緒だったから……なのだろうか。

 今はもう、家族ではないというのに。


 マルガリーテは馬車の中に目をやった。正確には牢屋って言った方がしっくりくるんだけど。

 牢屋の形をした荷台にはマルガリーテとその家族だけではなく、エリーゼやアミー、さらに見知らぬ女性も多数いた。

(……ん? アミー!?)

 そう、アミーはその中に確かに存在した。マルガリーテと同じように後ろ手に縛られているが、猿ぐつわはされていない。ただ、死んだようにぐったりと床に倒れていた。

 どういうことだろう。

 最強の悪魔を自負するアミーが、人間なんかに誘拐されてしまったというのか。

 それとも、何か考えがあってのことだろうか。

 話しかけたくても、猿ぐつわで上手くしゃべれないから、つま先で頭をつついた。

 だが、何の反応もない。

 まさか、死んでいるということはないだろう。

 周りを見れば、マルガリーテ以外の人は皆同じような状態だった。

 おそらく、薬か何かで眠らされていると思われる。


 薄暗くてよく見えないが、ここにいる女性は皆美しかった。

 囚われの身でありながら、マルガリーテは場違いなところにいるな、と思った。

 着飾っていないマルガリーテはやはり、姉さんやカトリーヌや母さんや、ここにいる他の人たちのように美しくはなかった。


 空を見上げると、月が静かにマルガリーテを乗せた馬車を照らしていた。

 それが、突然ガタンという音ともに木の葉によって閉ざされてしまった。

 それまで不思議なくらいゆっくりと走っていた馬車は、今では景色も見られないほど速く走っていた。

 どうやら、馬車は城下町を離れて森の中に入ったようだ。


 ――もう月明かりは届かない。

 町から出たことのないマルガリーテには、ここがどこの森なのか見当もつかなかった。

 馬車はさらにスピードを上げて森の奥へと入る。

 辺りの景色が暗闇に塗りつぶされていくような錯覚に陥る。

 ガタガタと揺れていた馬車の中は急に静かになった。

 どこか、例えば誘拐犯のアジトにでも着いたのだろうか。

 それにしては辺りが暗すぎる。

 何も見えない。

 いったい、ここはどこなの?

 馬車の荷台に捕らわれていたはずのマルガリーテは、一人暗闇の世界に取り残されていた。


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