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平凡魔王の善行日記  作者: 雪月華
魔王城周辺
11/23

10話『勝てなくても、戦い方は色々ある。』

やっとこ10話です。ブクマして下さった方々ありがとうございます。これからも、連載を頑張らせて頂きます。

僕は独り、森の中を駆け抜ける。

シリカに見せてもらった、男──勇者アルテと対峙する為に。


『お兄ちゃん...これ...貸してあげる...ねぇ。』


僕をしゃがませると、シリカは僕の額に口づけをした。シリカの後ろで、ルリが驚いた顔をしていたけど、次第に無表情になり、最終的には『不潔ですね』と呟き、そっぽを向いていた。


それでも、僕が出発する時には僕の心配をしてくれたから、やっぱりルリはやさしいと思う。


ついでだけど、シリカが僕の額にキスしたのは、簡単な魔法を掛ける為だったみたい。掛けた魔法は『隠密(インビシブル)』。気配遮断の魔法だって言ってたよ。気配遮断と言っても、実際に姿が消える訳じゃなくて、あくまでも視認されにくくするだけともね。


とりあえず、その魔法のお陰か、動物や魔物に見つかることなく、森の中を駆け抜けられている。

そして、色濃くなっていく血の匂いが、アルテまでの距離が近づいているのを知らせてくる。


そして...


「よお、あんちゃん。イヤ、坊っちゃんかぁ。まさか、あんたの方から来てくれるとわねぇ…驚きだねぇ。」


アルテの下にたどり着いた僕を、アルテは意外そうに言うがその顔は、来る事がわかっていたように楽しげに歪んでいた。


「まぁ...暴れる貴方を懲らしめて欲しいと頼まれたからね。こっちとしては、さっさとこの森から出て行って欲しいけどね。」


僕は、この男はヤバイと直感した。対峙した時、殺気がびしびしと身体に突き刺さり、冷や汗が止まらない。


だから、何もしないで帰って欲しいと願望が口から漏れでてしまった。


それに、仮に戦ったとして、まず間違いなく僕はこの男に殺される。良くても相討ち...それも、かなり分が悪い。相討ちに持っていける確率も1割を切るのではないかと思う。それほどに、この男は自称勇者達とは実力の次元が違う。


武道の経験が、高校の選択授業しかない僕でも、それを嫌って程感じている。


「いんや。それはムリやねぇ。なにぶん、こっちにも都合ってもんがあるんじゃけ。」


「...あ..はは...ですよね...。」


「坊っちゃんも自分の邪魔しに来たんやよね。なら、ぶつかり合うんが筋やな。」


うわ...。この人、戦う気満々じゃないか。相手は勇者で、見た感じ接近戦専門って感じのステータスだった。逆に僕は接近戦は門外漢だ。遠距離戦も、魔法がいくつか覚えているだけ。


あれ?...これって、僕が思ってる以上に不味くないか。


「なんや、坊っちゃん。接近戦はダメか。ダハハ...なら先に魔法打たせちゃるよ。」


それなら何とかなるか?イヤ、ムリだろね。手持ちの魔法じゃ、まともなダメージを与えられるとは思えない。なら、少しでもダメージを与えられるように新しく創るしかない。


「《万物創作(クリエイト)》」


「ほぉ、なんや面白い事するみたいやねぇ。待っちゃるから全力できーや。」


その余裕が命取りにしてやるよ。


引き出すは『雷球(サンダーボール)』。組み合わせるは『突風(ヴェント)』と『火球(ファイヤーボール)』。

『突風』を横風から縦の下降気流に変更。『雷球』と『火球』を組み合わせ、炎雷を作製。この際、炎雷は植物を燃やさないように設定する。

変異させた『突風』と炎雷を組み合わせ、『突風』の範囲内を強化された炎雷が焼き焦がす。


魔法名を設定。最終イメージ固定...完成。


「これでも食らえ...『風下炎雷(プラズマ・レイ)』」


生まれるは、雷と炎で作った極太のレーザー。それが、アルテの頭上目掛け降りかかる。それは、正に空から降って来る熱の壁。普通の人間なら間違いなく、恐怖で動く事すら出来ずにその身体を焼かれるのみだっただろう。

しかし、この男─アルテは嬉しそうに顔を歪め、あろう事か、手持ちの剣に魔力を込め始めた。


「かは...坊っちゃん。あんた面白すぎるねぇ。こんな魔法見たことも、聞いた事もない。威力、範囲ともに申し分ない。だけども、惜しいかなぁ、圧倒的に速度が遅いねぇ。」


そ、そんな事あるわけがない。少なくても、『突風』と同レベルの速度には設定してある。それを、遅いなんて、僕には、強がりにしか聞こえないが、この男の顔が僕を不安にさせる。


なんだ、何をするつもりなんだ。


アルテは紡ぐ...神を詠う。

『剣帝たる我らが祖よ、(ことわり)穿(うが)ち断ち切る剣よ...』


詠う共に、剣にこもる魔力の量が、みるみると増えていく。


『魔を纏う者を打ち砕かんが為、今一時、真なる姿を我が目に映したまえ。』


詠を紡ぎ終えると、剣が光り輝く。その光りはまるで太陽のように強い目映い光りと暖かさを兼ね備えていた。


でも、僕はその光りに当たっていたくなかった。僕の内の何かが、『光りを避けろ』そう警告してくる。


「やっぱ、疲れるねぇ。まぁ、完成したからいいかぁ...損じゃぁ神風剣『ゼフィアス』...切り刻もうかねぇ。」


アルテは神風剣『ゼフィアス』を腰に構えると眼にも写らぬ速さで振り抜いた。すると、凄まじい衝撃音と共に、僕の『風下炎雷』が縦に真っ二つに斬られてしまい、アルテに当たる事はなかった。


「だから、速度が遅いって言ったのにねぇ。」


アルテは楽しげに顔を歪め、声をもらす。

まずい、新たにあの規模の魔法を創る余裕なんて在りはしない。そう証明するようにアルテは僕に向けて歩を進める。


僕は持てる魔法を手当たり次第に放出しながら後退するが、その全ての魔法をアルテは切り刻み、当たる事はなかった。


しかも魔法を切り刻む為、剣を振るうと風の刃が飛んでくるしまつで、それを防ぐ為、余計に弾幕が薄くなっていく。


そしてついに...


「イヤー楽しい時間をありがとー、坊っちゃん。これで、さよならや。」


アルテに追い詰められ、神風剣を降り下ろされた。

剣は僕を袈裟懸けに切り裂き、致命傷を与えてくる。傷口からは血が溢れ、地面には赤黒い血を吸った跡が見て取れる。そして僕は、自信の身体すら支える事すら出来なくなり、地面へと倒れ伏せてしまった。血が止まらず、自信の意識が遠退いていく。


ダメだ。ここで意識を...失うわけには...いかない。アルテの目的は...おそらく...シリカだ。...僕...が...意識を...失えば、シリカ...達が...あぶ...ない...の...に。


意識を失わないようにはしている。しかし、いかんせん出血範囲の広い、袈裟懸けである。こうしている間にも、身体からは血が抜け落ちていき、僕は意識を失った。

次回、久々にあの人が登場する?

あと、主人公クロの新たなる力が出てくるかもね!

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