第83話 新たなる世界の胎動と、迷宮都市ミルダリアへの挑戦状
神獣討伐という世界規模の大偉業を成し遂げ、王都での盛大な凱旋パレードと祝勝パーティーを終えた翌日の放課後。
俺は、天音たち電脳遊戯部のメンバーとともに部室に集まり、いつものようにフルダイブ・ギアを装着してネットワークの海へと意識を潜らせた。
そして、〈RWO〉の広大な世界へダイブしたのと、ほぼ同時だった。
視界の端でシステムウィンドウが激しく明滅し、緊急システムメッセージがポップアップした。
『──全プレイヤーへ重要告知』
『〈神獣〉討伐の確認に伴い、ワールドの動態値が変動。これより世界線は次なるフェーズへ移行します』
『第二の驚異および第三の驚異の封印解放エリアを、順次オープンフィールドへ実装。』
『さらに、来る現実世界における来週の土曜日、全ギルドを対象とした一大競技イベント──第一回〈ギルド対抗戦〉の開催を正式にアナウンスいたします』
「な……っ!? 第二と第三の驚異の解放に、今度はギルド対抗戦……!?」
ログイン直後に飛び込んできた特大のインフォメーションに、俺は思わず息を呑んで立ち尽くした。
〈神獣〉との死闘の余韻に浸る間もなく、運営は次から次へと新しい舞台を用意してくる。
周囲の空気が一瞬にして戦闘モードの熱気を帯び、俺たちはすぐさま我がギルドホームの発着場である庭に係留されている魔導戦艦のブリッジへと集合した。
【安倍ノ家:ほう……神獣討伐の直後に第二、第三の驚異の解放、そして『ギルド対抗戦』の開催か。運営もなかなか休ませてくれない過密スケジュールだな。しかし、世界の謎に迫る驚異の攻略と、プレイヤー同士の覇権を争うギルド戦が同時期に進むとなれば、今後の勢力図は大きく塗り替わる。このタイミングでの戦力増強は不可欠だぞ。ユウたちの判断が試されるな。実に興味深い】
【灰かぶりうさぎ:き、キターーーッ!! ギルド対抗戦とかいう最高の青春イベント!! しかも第二&第三の驚異ってことは、また新たな強敵やロマンあふれるエリアがいっぱい出てくるってことよね!? でもそれ以上に、ユウパパとシオンママが一緒のチームで対抗戦に出るとかもう今から心臓がバクバクして破裂しそう……! あ、でも対抗戦の最中にピンチになったシオンちゃんをユウ君が「俺の女に手を出すな!」って感じで庇うシチュエーション絶対にお願いします運営様!!(大絶叫の床ローリング)】
ブリッジに集まった仲間たちの顔にも、驚きと新たな挑戦へのワクワク感が入り交じっている。
「来週の土曜日にギルド対抗戦か……。のんびり余韻に浸る暇もなさそうね」
シオンが腕を組みながら、フッと不敵な笑みを浮かべた。その瞳には、早くも闘争心の炎が揺らめいている。
「ああ。そして、これからの第二・第三の驚異の攻略、そして来週に迫ったギルド対抗戦を勝ち抜くためには、今の装備のままじゃ流石に心もとない」
俺は仲間たちを見渡し、きっぱりと言った。
「そこで、みんなの戦闘力をさらに引き上げるために、俺が新しい最高峰の装備を作ろうと思う。そのためには、まず良質な素材を大量に集めに行かなきゃならない」
「マスター特製のニュー装備ですか! 私、それめちゃくちゃ気になります!」
ライムがタブレットを脇に挟み、ぴょんっと跳ねるように目を輝かせた。
「ふふっ、私のガントレットもさらに強化できるなら、どんな巨獣が相手でも一撃で粉々にしてあげるよ!」
ニベアが両拳をコツンと合わせ、頼もしい笑みをこぼす。
すると、そこにセリアさんが上品に一歩前へ進み出て、優雅に微笑んだ。
「それなら私から一つ、すごく良い提案があるぞ、ユウ君」
「セリアさん、それってどんな場所?」
「レギウス共和国の南西に位置する、別名『素材ダンジョン』と呼ばれている場所があるんだ。知っているか? ──迷宮都市『ミルダリア』だよ」
「ミルダリア……!」
俺が呟くと、シュリが魔導書を片手にうなずいた。
「はい、私も文献で読んだことがあります。地下50階層まで続く巨大な地下迷宮で、ミスリルをはじめとした最高品質の鉱石や、希少なモンスターのドロップ素材が眠っていることで有名ですね」
「そうだ! そんな質の高い素材が手に入るなら、みんなの装備を最高ランクにアップデートするにはうってつけの場所だと思わないか?」
セリアさんの提案に、全員が力強くうなずいた。
「よし、決まりだ。さっそく素材集めのために、迷宮都市ミルダリアのダンジョンへ向かおう!」
方針が決まると、早速メンバーの編成とパーティ分けの話し合いが始まった。
今回のダンジョン攻略は、総勢13名(ルビーを含める)の大規模な探索となるため、二つのパーティに分かれてレイドを組み、連携しながら地下深くまで潜っていくことになった。
メンバーの配属を整理する。
【第一パーティ】
ユウ(アストラ・ヒューマン/錬金術師)
シオン(アーク・エルフ/マジックナイト)
ライム(オートマタ/戦術支援・オペレーター)
ティアナ(ヒューマン/聖職者・ヒーラー)
ニベア(獣人/格闘家)
セラ(アストラ・ヒューマン/魔導銃士)
シュリ(アストラ・ヒューマン・ソーサラー)
リネア(魔人/マジックナイト)
【第二パーティ】
ハルマ(ヒューマン/ローグ)
セリア(ヒューマン/マジックナイト)
ミナミ(ヒューマン/ビショップ)
スズカ(ヒューマン/ソーサラー)
シズク(ヒューマン/ファイター)
そして、我がギルドのマスコットにして相棒であるカーバンクル・ルビーは、俺の傍で第一パーティに帯同する形となる。
「よし、この二つのパーティ編成でレイドを組み、ミルダリアの地下迷宮を攻略する。皆、準備はいいか?」
「もちろんよ。ハルマたち第二パーティも、私たちに負けないくらいしっかり戦いなさいよね」
シオンが第二パーティの方を振り返り、からかうように笑う。
「へへっ、シオン、なめてもらっちゃ困るぜ! 俺たちだって、この前の神獣戦を経てレベルアップしてんだからな。お前たちより多く敵を倒して、レア素材をごっそりゲットして驚かせてやるよ!」
ハルマが自信満々に親指を立ててニカッと笑う。
「もう、ハルマくんってば調子に乗りすぎないの。でも、セリアさんのマジックナイトとしての防御と、私のビショップとしての回復魔法があれば、どんな階層でも絶対に攻略できるから安心して!」
ミナミが胸を張って頼もしい笑みを浮かべ、隣でスズカが杖をクルリと回しながらうなずいた。
「私の広範囲ソーサラー魔法で、雑魚モンスターの群れなんて一網打尽にしてあげるんだから! お姉ちゃんたち、足手まといにならないでよね」
「スズカちゃん、言葉に気をつけなさい。でも、その意気は悪くないわ」
セリアさんが優しく微笑みながら、愛用の魔剣の柄に手を添える。
「私も、前衛としてしっかりみんなの盾になる! 後ろは任せて、ユウ君たちも安心して奥へ進んでよ!」
シズクさんが大きな両手剣を軽々と担ぎ上げ、気合十分といった様子で声を張り上げた。
仲間たちの燃え盛る闘志を確認し、俺は深くうなずいた。
「よし、頼もしいな。それじゃあ、我が魔導戦艦を起動し、迷宮都市ミルダリアに向けて出航する!」
【安倍ノ家:ふむ、見事な戦力分散とパーティ構成だ。前衛のタフネス、後衛の火力、そして回復と支援のバランスが非常に良く取れている。特に第二パーティはハルマのローグによる索敵・奇襲と、セリアのマジックナイト、シズクのファイターという手堅い前線に、ミナミのビショップとスズカのソーサラーが控えるという堅実な編成だ。ミルダリアの地下50階層という超長丁場において、この二個パーティの連携は不可欠だな。実に理にかなっている】
【灰かぶりうさぎ:キャーーッ! パーティ分けの時点で尊さが大渋滞してるんだけど!! ユウパパとシオンママが同じ第一パーティなのは当然として、リネアちゃんもそこにいるから、シオンちゃんが「ちょっと、あまりユウに近づきすぎないでよ?」って心の目でバチバチ威圧してそうな妄想だけで白飯3杯いける!! そして第二パーティのミナミちゃんとセリアさんのお姉様コンビも最高だし、シズクちゃんが皆の背中守ってるのとか青春すぎて私のHPが削られる……! みんなで仲良く迷宮デートしてきてね!!(大号泣の血涙スタンディングオベーション)】
魔導戦艦の重厚なメインエンジンが唸りを上げ、青白い魔力の奔流を放ちながら王都のドックから空へと舞い上がった。
甲板に立ちながら、俺は仲間の顔を一人ひとり見渡す。
ルビーが「キュルルッ!」と頼もしく鳴き声を上げ、俺の足元にすり寄ってきた。
「行くぞ、みんな! 素材ダンジョン『ミルダリア』で最強の装備を作り上げ、来週のギルド対抗戦も、驚異の攻略も、すべて俺たちの手で掴み取るんだ!」
こうして、新たな驚異の解放とギルド対抗戦という次なる激動の舞台へ向けた、素材集めのための地下迷宮探索の幕が、今まさに切って落とされたのだった。




