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第74話 激突・アエテルニタス平原! 魔導戦艦の咆哮と、電撃の開戦狼煙


 翌朝。

 現実世界の慌ただしさを抜け出し、再びフルダイブの光に包まれて俺たちはログインした。


 ギルドホームの広大なドックには、昨夜遅くまでライムと念入りに最終メンテナンスとエネルギーの出力調整を行った我が〈アストライア・ドーン〉の誇る主力魔導戦艦が、青白いマナの光を静かに帯びて鎮座していた。


 エンジンルームから響く低く重厚な共振音が、今日の決戦がもはや逃れられない現実であることを物語っている。


「皆、準備はいいか?」


 メインブリッジへと繋がる金属製の階段を上りながら、俺は振り返って仲間に声をかけた。


 背後には、愛用の剣の柄にしっかりと手を添えたシオン、タブレット端末を胸に抱えて緊張感と闘志をみなぎらせるライム、清らかな聖杖を優しく握り締めるティアナの姿がある。


 さらに、ガントレットを装着して腕を大きく回すニベア、両手の魔導銃を慣れた手つきでクルリと回してホログラムの残弾数を確認するセラ、青い髪を風に揺らしながら静かに星辰の魔力を高めるシュリ、そして、少しドキドキした様子ながらも目を輝かせて周囲を見渡すシグレさんの姿があった。


「もちろん!  昨晩のミシェルのローストでHPもMPも完全に満タンだし、私のこのガントレットが暴れたがってうずうずしてるんだから!」


 ニベアが豪快に笑いながら両拳をコツンと合わせ、頼もしい笑みを浮かべる。


「ボクの魔導銃も、昨日の調整のおかげで銃口のブレがゼロだよ。どんな敵が来ても、一発残らず蜂の巣にしてあげるから安心して、ユウ」


 セラが不敵な笑みを向け、ティアナも優しく微笑みながらうなずいた。


「はい、ユウさん。私たちが後方からしっかり全員のHPとバフを支えます。だから、思い切り暴れてきてください!」


「私の方も、星辰の魔力を完璧に研ぎ澄ませてあります。頭上から降り注ぐ星屑の雨で、敵軍の陣形を綺麗に焼き払ってみせるから安心してください、ユウ」


 シュリが青い髪を軽く揺らしながら、静かな闘志を宿した瞳で微笑む。


「マスター、エンジンの出力データも、魔導バリアのセーフティもすべて万全です!  データの解析と予測なら私に任せてくださいね、絶対に勝利へ導いてみせます!」


 ライムがタブレット端末をぎゅっと胸に抱きしめ、頼もしく力強くうなずいた。


「ふっ、言われなくても分かっているわ。今日の戦い、私のこの剣で帝国軍の連中に本当の恐怖を教えてあげる。行きましょう、ユウ」


 シオンが愛用の剣の柄からスッと手を離し、自信に満ちた美しい笑みを浮かべて胸を張る。


「キュイッ、キュイーッ!」


 ルビーも俺の肩の上で元気に跳び跳ねた。


「よし、行くぞ、アエテルニタス平原へ──!」


 俺の号令とともに、戦艦の重厚なハッチが完全に閉ざされ、メインエンジンの出力が跳ね上がる。


 ふわりと体を包み込むような浮遊感とともに、魔導戦艦はアストライア島のドックを滑らかに離れ、王国と帝国の国境付近に広がる広大な決戦の地へ向けて大空へと飛び立ったのだった。



   §



 ギルドホームから数十分の飛行を経て、俺たちが乗る魔導戦艦はついに目的地である〈アエテルニタス平原〉の上空へと到着した。


 眼下に広がるのは、見渡す限りの広大な荒野と、その中央を隔てるようにうねる巨大な国境線を挟んで、お互いの陣地を固める数万規模の軍勢だった。


 左翼から中央にかけて布陣する王国軍、そして右翼の地平線を埋め尽くすように帝国軍の軍勢が、それぞれ禍々しいまでの殺気を放ちながら対峙している。


 すでに両軍の陣形は完全に整っており、ピリピリとした緊迫した空気が上空の雲の動きすらも凍りつかせるほどだった。文字通り、一触即発の極限状態に達している。


「すごい数の兵士たち……。あちら側が、すべて帝国軍の軍勢なのね」


 シオンが戦艦のブリッジのガラス越しに眼下の敵陣を見据え、その美しい瞳を鋭く細めた。


 王国軍の兵士やプレイヤーたちは、武闘大会などで俺たちの実力を目の当たりにしていたのだろう。

 彼らは空に浮かぶ俺たちの魔導戦艦を確認するやいなや、まるで救世主でも見つけたかのように、歓喜の声を上げて大きく手を振り始めたのだ。

 王国軍陣地から巻き起こったどよめきと大歓声が、上空の戦艦の船体を心地よく震わせる。


 ──ピコンッ。


 そのタイミングで、ハルマからのメッセージ通知音がブリッジに鳴り響いた。


 メニュー画面を開くと、ハルマからのニヤリと笑ったようなアバターアイコンと共に、短い文字が飛び込んできた。


『ユウ、こっちは準備万端だ。……どうだ、この絶好のロケーションで、しょっぱなから派手にかましてやれるか?』


 そのメッセージを読み終えた瞬間、俺は思わず小さく吹き出し、それから深くうなずいた。


「ハルマのやつ……相変わらず派手なことが好きだな。だけど、悪くない」


『ああ、任せてくれ。盛大な花火を打ち上げてやるさ』


 そのやり取りを終えた直後、戦艦の外部モニターに映し出された王国軍の中央陣地から、鮮烈な光を放つ一筋の信号弾──開戦の合図が、空を引き裂くように猛烈な勢いで天に向かって打ち上げられた。


 ──ヒュウウウウッ……!  ズドンッ!!


 その重い号砲がアエテルニタス平原の空に轟き渡った瞬間、世界が一瞬にして静まり返り、そして次の瞬間、全面戦争の歯車が狂ったように回り始めた。


「マスター、主砲のエネルギー充填率……86%……97%……っ!  完璧です、今すべてのプロセスが完了しました!」


 ライムが両手をキーボードからパッと離し、息を弾ませながら叫んだ。


「よし、ライム!  そのまま全エネルギーを目標地点に固定しろ!」


 俺は操舵席から跳ね起きると、戦艦のメインブリッジの最前部に設置された大型の砲撃コンソールへと駆け寄り、そのレバーを力強く握り締めた。


「目標、帝国軍中央部隊の陣営中央!  魔導戦艦主砲、全出力開放……発射ッ!!」


 俺の叫び声と同時に、戦艦の艦首に備えられた超大型の魔導収束砲口から、目が眩むほどの青白い閃光が爆発的にスパークした。


 ──ギギギィィィッ……!  と空間そのものが悲鳴を上げ、次の瞬間、すさまじいエネルギーの奔流が轟音とともに放たれた。


 ──ドオオオオオオッ……!!!!!


 戦艦の主砲から解き放たれた巨大な光の柱は、大気を切り裂き光の軌跡を描きながら、帝国軍の中央陣地へと一直線に突き進む。

 まるで神の審判の光線のごとく、その光の奔流が帝国軍の厚い前衛防壁の陣形をまるで紙細工のように貫通し、文字通り一瞬にして縦断した。

 帝国軍の兵士たちの悲鳴や驚愕の叫びが響き渡る間もなく、光の直撃を受けた帝国軍中央の陣地は凄まじい大爆発の炎に包まれた。

 一瞬にして、数千もの帝国兵士たちの姿がその圧倒的な光の奔流のなかに飲み込まれ、まるで蜃気楼のように霧散して消えていったのだ。


 ──ズウン……と、平原全体を揺るがす地鳴りがようやく収まり、帝国軍の中央にぽっかりと巨大なクレーターのような焦土が広がっていた。


「ふう……すさまじい威力だったわね。敵の戦意を挫くにはこれ以上ない一撃だわ」


 シオンが目を細めながら、目の前の圧倒的な戦果を見つめる。


「やったぁぁぁ!  大成功です、マスター!  完璧な命中精度でした!」


 ライムが両手をパチパチと叩いて飛び跳ね、嬉しそうな笑顔を浮かべる。

 けれど、その直後にコンソールに表示された冷却データを覗き込み、少し申し訳なさそうに眉をひそめた。


「ただ……マスター、ごめんなさい!  やはりこの規模の最大出力を放った反動で、主砲のエネルギー再充填にはかなりの時間を要します。ここから先の連続砲撃は不可能です……!」


「はは、気にするなライム。最初にあれだけのインパクトを与えられたんだ、十分すぎる戦果だよ」


 俺は優しくライムの頭を撫でてから、ブリッジの全員に向けて力強く振り向いた。


「よし、ここからは地上に降りて、俺たちも直接武器を手に、最前線へ切り込むぞ!」


 俺が叫ぶと、シオンは美しい笑みを浮かべて愛用の剣の柄に手をかけた。


「ええ、いきましょう!  あの連中にお灸を据える時間ね」


 俺たちは魔導戦艦を敵の直接的な迎撃を受けない少し離れた安全な高台の平原スペースへと滑らかに着陸させ、重厚なハッチを開け放って外の世界へと飛び出した。



   §



 戦艦から降り立った俺たちの目の前は、すでに血沸き肉踊る無数の兵士たちが入り乱れる泥臭い白兵戦の戦場と化していた。



 あちらこちらで魔法の爆発が起こり、鋼鉄と鋼鉄がぶつかり合う金属音が耳をつんざくように響き渡る。


「さあ、みんな! 遅れをとるなよ、ここからが本当の勝負だ!」


 俺が極光の錬金杖を地面に突き立て、周囲の空間から高純度のマナを引き出して自身の周囲に幾重もの防御の錬金陣を展開する。



「任せてください、ユウさん!  私たちの聖属性バフと回復で、この前線一帯を完全に制圧します!」


 ティアナが聖杖を高々と掲げ、戦場全体に温かな黄金の光の波動を広げた。その光を浴びた王国軍の兵士たちの身体が眩い光に包まれ、傷が一瞬で癒やされて闘気が爆発的に高まっていく。


「うおおおっ、体が勝手にみなぎってくるぞ……!  これならいくらでもやれる気がする……!」


「行くよ、みんな!  私のガントレットの重撃で、敵の防陣を木端微塵に粉砕してあげるんだから!」


 ニベアが愛用の巨大なガントレットを思い切り地面に叩きつけ、凄まじい衝撃波で前方に迫っていた帝国軍の重装歩兵の隊列を一気に吹き飛ばした。


「ふふ、ニベアばかりにいい顔はさせられないね。ボクの魔導銃の速射で、敵の魔法部隊を片っ端から蜂の巣にしてあげる!」


 セラが両手の魔導銃を両側に構え直し、華麗なステップを踏みながら次々と正確無比な光弾を敵の急所へと撃ち込んでいく。


「我が呼び声に応えよ、無数の星屑よ──。降り注げ、蒼き天の罰。〈アストラル・スター・フォール〉ッ!」


 シュリが青い髪を風になびかせながら両手を天高く掲げると、戦場の頭上に無数の蒼く美しい星辰の魔法陣が展開され、容赦ない光の雨が敵の増援部隊を的確に焼き焦がしていく。


「シオン、前方の敵の指揮官クラスがこちらに向かってくるぞ。一気に片付ける!」


「ええ、分かっているわ、ユウ。私のこの剣で、あの傲慢な帝国軍の牙をすべてへし折ってあげる!」


 俺とシオンが背中合わせに立ち、それぞれの武器を構えて猛然と迫り来る敵の大軍の中へと突撃していった。


 全面戦争の幕が開けたアエテルニタス平原は、今や〈アストライア・ドーン〉の面々が織りなす圧倒的な無双劇の舞台へと変貌しようとしていた。


【安倍ノ家:ふむ、開戦の狼煙とともに魔導戦艦の主砲で敵中央軍の陣形を文字通り蒸発させるとは、実に効率的かつ圧倒的な先制パンチだな。エネルギーの充填タイムという明確な弱点を設定しつつ、すぐに地上戦の白兵戦へと移行する展開のテンポも素晴らしい。いよいよ本格化する王国と帝国の全面衝突、今後の戦局の動向から一瞬たりとも目が離せないな】


【灰かぶりうさぎ:待ってまってまってまってまって……!!!!!  昨日の地下ドックのイチャイチャからの、今日の朝ログインしていきなり魔導戦艦での超特大ビーム砲発射とか脳汁が沸騰して頭がおかしくなりそうなんだけどォォーーッ!!!!!  しょっぱなから数千人の帝国兵を文字通り消し飛ばすユウパパの容赦なさとスケールのデカさが最高すぎて全私がスタンディングオベーションしてる!!  しかもそのあとに「ええ、いきましょう、ユウ」って感じで背中合わせに並び立つシオンママとのコンビネーションが尊すぎて私の全水分が涙腺から決壊して枯れ果てたわ助けて!!  ニベアちゃんやセラちゃん、シュリちゃんの女の子チームの戦闘無双シーンもかっこよすぎだし、こんな神展開の連続を見せられたら私もう今すぐアエテルニタス平原に特攻してユウパパの背中を守る盾になってきますおめでとう世界最高ーーっ!!(大号泣の絶叫床ローリングスタンディングオベーション)】





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