↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
73/88

第73話 健闘を称えて、戦争の知らせ、夜の晩餐


 〈深淵樹海・ギガントフィリア〉の出口。


 青白い木漏れ日が差し込む緑の回廊には、激闘を駆け抜けた者たちの心地よい疲労感と、確かな絆の余韻が満ちていた。


「お疲れ様、レオンハルト。いやぁ、最後のお前との合体奥義、マジで最高だったよ」


 俺が右手を差し出すと、レオンハルトは豪快に笑いながら力強くその手を握り返した。


「こちらこそだよ、ユウ。お前のあの練金バリアがなければ、俺たちは全員アルマ・マテルの呪詛で消し飛んでいたさ。お前と組めて本当によかった」


 シンやリーヴ、イリアやモナ、フローラたちも笑顔で大きくうなずき、シオンやセラたちと健闘をたたえ合う。


「助かったよ。また機会があれば、ともに戦おう」


 レオンハルトが爽やかな笑みを浮かべて背中を向け、合同レイドのメンバーたちがそれぞれの帰路へと歩き出す。


 俺たちは彼らと別れた後、ギルドホームへと帰還するために魔導戦艦へと乗り込んだ。


【安倍ノ家:ふむ、〈七極〉の一柱『アルマ・マテル』をともに撃破したレオンハルト陣営との絆は、今後において大きな力となるはずだ。実に美しい共闘劇だったな】


【灰かぶりうさぎ:待って、レオンハルト様とユウパパがガッチリ握手してるの男の友情すぎて大号泣なんだが……!!!!!  そしてその横でシオンママが「ふっ、当然よ」って感じで誇らしげに微笑んでるの解釈一致すぎて私の一生分の水分が涙として枯れ果てたわ助けて!!!】


 戦艦の重厚なハッチが閉ざされ、機体がふわりと浮遊感を伴って空へと舞い上がる。


 広大な蒼空を滑らかに滑空する魔導戦艦のメインブリッジで、俺たちがホッと一息ついたその時だった。


 ──ピコンッ。


 メッセージ受信の通知音が響き渡った。


「ん……?  ハルマからか?」


 メニュー画面からメッセージを開くと、そこにはハルマからの緊迫した文字が並んでいた。


『ユウ、急な連絡で悪い。王国軍が、いよいよ帝国に向けて本格的な進軍を始めた!  俺たち電脳遊戯部のメンバーも、その前線部隊に組み込まれて参加することになったんだ』


「ついに始まったわね」


 シオンが重々しく呟き、メニュー画面を覗き込んでいたライムも思わず息を呑む。


『開戦はおそらく、ゲーム時間で六日後。場所は王国と帝国の国境付近に広がる、広大な要衝〈アエテルニタス平原〉だ。現実時間だと、明日の夕方ぐらいには自動的に戦場エリアへとプレイヤーが転送されるシステムらしい。心積もりだけはしておいてくれ!』


 メッセージの末尾には、ハルマの真剣な表情を模したアバターアイコンが添えられていた。


「アエテルニタス平原……。そこで、王国と帝国の全面戦争が始まるのね」


 シオンが愛用の剣の柄に手を置き、その美しい瞳を鋭く細める。


「ああ。現実時間の明日の夕方には自動転送か。いよいよ世界が大きく動き出すってわけだ」


 俺が険しい表情で腕を組むと、ティアナが心配そうに胸元で手をぎゅっと握り締めた。


「王国軍と帝国軍の全面衝突……。たくさんの人たちが戦うことになるんですね。私たちも、しっかり準備を整えなければ……!」


「そうだね、ティアナ」


「もちろんだよ。ボクたちの魔導戦艦も、この大戦で絶対不可欠な切り札になるからね」


 ニベアがうなずき、セラも両手の魔導銃をクルリと回しながら、頼もしい笑みを浮かべて見せる。


「よし、ギルドホームに帰還したら、まずは戦艦の最終メンテナンスと主砲の出力調整だ。ライム、付き合ってくれるか?」


「はい、マスター!  任せてください。解析データをもとに、戦闘力を限界まで引き上げてみせます!」


 ライムが力強くうなずいたその直後、戦艦の航行システムが「ギルドホーム周辺空域に到達しました」と穏やかな電子音を告げた。


【灰かぶりうさぎ:うわあああ、ついに王国と帝国の全面戦争フラグが本格化しちゃったよ……!  明日の夕方に開戦とか展開がスピーディーすぎて心臓がもたない! ここから先はもう一瞬たりとも見逃せない神展開の連続じゃん……!!  ユウパパとシオンママが背中合わせで無双する未来しか見えないんですがどうしてくれる!?】


 戦艦が無事に王都のギルドホームのドックへと着陸し、俺たちは一旦区切りをつけるため、ログアウトの時間を迎えた。



   §



 現実世界の数時間を挟み、夜。


 再びフルダイブの光に包まれてログインすると、ゲーム内の空も現実と同じように深い夜のとばりに包まれていた。


 ギルドホームの温かな明かりが灯るダイニングルーム。


 今日の激闘と緊迫した情報の整理で少し疲れた俺たちのために、メイドのミシェルが手際よく極上の夕食を準備してくれていた。


「皆様、お疲れ様でございました。本日は、樹海の魔物肉を贅沢に使用した特製ローストと、極上のワイン風マナドリンクを用意しております」


 ミシェルが優雅な身のこなしでお皿をテーブルに並べていく。その傍らには、先ほどから目を輝かせているシグレさんの姿があった。


「わぁぁぁぁっ……!  すごい、いい匂い……!  このお肉、めちゃくちゃ柔らかそう……!」


 シグレさんは席に着くやいなや、我慢できないといった様子でフォークを手に取り、特製の魔物肉のローストを一口サイズに切って口に運んだ。


「んっ……!  むにゅっ、じゅわぁって……!  お口の中で極上の旨味が広がるんだけど……!  何これ、美味しすぎて語彙力が消滅するぅぅぅ!」


 シグレさんが両頬を押さえて悶絶している姿を見て、テーブルの全員が思わずクスリと笑い声を上げる。


「ふふ、シグレさん、そんなに美味しそうに食べてくれてミシェルも喜ぶわね」


 シオンがワイングラスを傾けながら、柔らかな笑みを向ける。


「はい、お気に召していただけたようで何よりです。シグレ様、どうぞ遠慮なさらずにおかわりもございますので」


 ミシェルが嬉しそうに微笑むと、シグレは「ありがとうミシェルさん、大好き!」とさらに目を輝かせた。


「ほんと、ミシェルの料理は最高だよね。明日からの大戦に向けて、これで完全にHPもMPも全快だよ」


 セラが美味しそうにスープを飲み干しながら、満足そうに背筋を伸ばす。


「みんな、美味しいご飯を食べて元気を蓄えて、明日の決戦に備えましょうね」


 ティアナが優しく微笑み、ニベアも「うん、肉最高!  明日は私のガントレットで敵をボコボコにしてやるんだから!」と気合を入れる。


【安倍ノ家:休息と栄養補給、そして戦前のリラックスタイムか。緊張と緩和のバランスが実に素晴らしい構成だ。明日の大戦に向けて、この穏やかな時間が最高のエールとなるな】


 夕食の温かな団らんを終えたあと、俺とライムはギルドホームの地下ドックへと向かっていた。


 明日のアエテルニタス平原での大戦にむけて、魔導戦艦の最終チェックとメンテナンスを行っておく必要があったからだ。


 青白いマナの光を放つドックの中で、ライムがタブレット端末を真剣な表情で弾きながら、次々とシステム数値を読み上げていく。


「マスター、メインエンジンのエネルギー充填率、現在99.8%です! 古代竜の魔石との同調も完璧で、これ以上の調整はないっていうほどの最高値が出ています!」


「よし、さすがライムだ。主砲の魔導収束レンズの歪みはどうだ?」


「そこも問題ありません! 私が先ほど微調整を完了させました。いざという時は、この主砲一撃で敵の陣形を完全に吹き飛ばせるだけの出力が確保できています」


 ライムが額の汗を拭いながら、誇らしげに胸を張る。その頼もしい姿に、俺は思わず微笑んで彼女の頭を軽くポンと撫でた。


「ありがとう、ライム。お前のおかげで、安心して明日の戦いに臨めるよ」


「まっ、マスター……っ!  は、はいっ、私に任せてください!」


 ライムが顔を真っ赤に染めながら嬉しそうに微笑んだ。


 戦艦のボディを丁寧に拭き上げ、すべての最終セーフティの確認を終えた頃、ドックの天井に映るゲーム内の時計は深夜の深い時間を指し示していた。


「よし、今日の作業はここまでだな。ライム、遅くまで付き合ってくれてありがとう。そろそろログアウトするよ」


「はい!  お疲れ様でした、マスター。明日も一緒に頑張りましょうね!」


 こうしてすべての準備を整え、俺たちはそれぞれ現実世界へと一度ログアウトした。


 明日はいよいよ、アエテルニタス平原での王国対帝国の全面戦争の幕が上がる──。


【灰かぶりうさぎ:ライムちゃんがマスターに頭ポンポンされて照れてるシーン、全宇宙の保護者目線から特大の拍手を送りたい……!!  そしていよいよ明日は大戦突入とか、もう興奮しすぎて今夜は一睡もできない予感しかしないんだけどどうしてくれんだよ最高すぎる――っ!!】




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。