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第72話 深淵の王を討て! 交差する刃と星辰の光芒、奇跡の合体奥義


 生体迷宮の複雑怪奇な回廊を抜け、空間転送の歪みをくぐり抜けた俺たち〈アストライア・ドーン〉の面々は、さらに一段と色を濃くする瘴気の立ち込めるエリアへと足を踏み入れていた。


 上空を覆う巨大な葉の隙間から差し込む青白い光が、次第に澱んだ紫色の魔力光へと変わり、周囲の空気を重く押し潰していく。


 ──ズズズズズッ……!  ドンッ!  ギギギィッ……!


 前方から、ただならぬ地響きと激しい戦闘音が聞こえてきた。空間そのものが震え、樹海の木々が次々と薙ぎ倒されていく。


「この音は……!  間違いなく、レオンハルトたちが先で交戦しているわ!」


 シオンが愛用の剣の柄に手を添え、鋭い眼光を前方へと向ける。


「急ごう!  あいつらが自分たちだけで抱え込んでいるなら、俺たちの加勢が必要だ!」


 俺が声を張り上げ、全員が足の踏み込みを一段と強めて戦闘音の響く中心地へと駆け出した。


 たどり着いたその場所は、樹海の中心に広がる巨大な開口部──〈深淵樹海・ギガントフィリア〉の真の深部だった。

 そこでは、レオンハルト、シン、リーヴ、イリア、モナ、フローラの六人が、文字通り死闘を繰り広げいていた。


 彼らの前に立ち塞がっていたのは、樹海の中心に根を張り、無数の巨大な樹の枝や茨の触手を暴風のようにうねらせて猛威を振るう、圧倒的な存在感を放つ巨木の人型怪物だった。


「あれが……超常のモンスター、〈七極〉の内の一体、呪樹の王『アルマ・マテル』……!」


 俺が即座に解析スキルを叩き込むが、視界に現れたのは案の定、不気味に赤く明滅するエラー文字の羅列だった。


「くそっ、やっぱり解析は完全に弾かれるか!」


「マスター、周辺の空間魔力データから現在の状態を割り出しました……っ!  レオンハルトさんたちのパーティー、前衛も後衛もすでに深刻なデバフを受けています!」


 ライムがタブレット端末を激しく弾きながら叫んだ。


「幻覚の胞子による視覚妨害、猛毒による持続ダメージ、そして精神を狂わせる混乱の三重苦……!  このままでは耐えきれません!」


「任せてくださいっ!」


 ライムの報告を聞くやいなや、ティアナが聖杖を強く握り締め、迷いのない足取りで一歩前に出た。

 ティアナが目を閉じ、清らかな聖属性の詠唱を紡ぎ出す。彼女の周囲に眩い金の光の輪が幾重にも展開され、一筋の聖なる祈りの波動が戦場全体を包み込んだ。


「──穢れたる呪詛よ、浄化の光に消え去りなさい! 〈グランド・ピュリフィケーション・セラフィム〉ッ!!」


 爆発的に広がった聖光の奔流が、レオンハルトたちを蝕んでいた幻覚、猛毒、混乱の三重デバフをまるで雪が解けるように一瞬で洗い流す。


「おおっ……体が軽い……!  視界が完全にクリアになったぞ!」


 猛毒と幻覚に苦しんでいたレオンハルトが大きく息を吐き出し、力強く大剣を振り抜いて触手を叩き斬る。


「助かったよ、ティアナ!  おかげで一気に視界が開けた!」


 リーヴも軽やかに跳び退きながら双剣を構え直し、モナやイリアも「ティアナさん、ありがとうございますぅ!」「助かったわ、これで反撃できる!」と満面の笑みを見せた。


「ここからは総力戦だ!  全員、一歩も引くなよ!」


 俺の号令を皮切りに、合同レイドパーティー十三名による、文字通りの総力戦の火蓋が切って落とされた。


 けれど、さすがは〈七極〉の一柱。アルマ・マテルの猛攻は尋常ではなく、何度も致命的なピンチがパーティーを襲う。


「ぐっ……!?  また触手の物量が倍増した……!」


 シオンが神速の剣技で前方からの突きをいなすが、その隙を突いて死角から伸びた漆黒の棘付き蔦がレオンハルトの背後へと迫る。


「レオンハルト、危ない!」


「っ、サンキュー、シン!」


 マジックナイトのシンが巨大な魔導障壁を張って直撃を防ぐが、衝撃波で全員が吹き飛ばされそうになる。


「みんな、下がらないで!  私の回復とバフが間に合います! 〈セイント・エリア・ブレッシング〉!」


 ティアナが絶え間なく聖属性の広範囲回復魔法を放ち、傷ついた前衛たちのHPを一気に引き戻していく。


「ティアナの回復だけじゃ足りない、ボクも援護するよ! 〈ライフ・リストア・ビーム〉!」


 セラが両手の魔導銃を構え直し、回復と魔力充填を兼ねた特殊な光弾を次々と味方に撃ち込んでバックアップする。


「ふう、危ないところだったね。だけど、ここからが反撃のターンだよ!」


 セラが不敵に笑うと同時に、ニベアが豪快な咆哮を上げて巨大なガントレットを振り下ろした。


「そらぁっ!  その固い外殻、私の拳で粉々に砕いてあげるよ!」


 ニベアの放った重量級の衝撃波がアルマ・マテルの堅牢な装甲を揺らし、そこにライムが正確無比な弱点予測データを弾き出す。


「ライム、次のヒットポイントはどこだ!?」


「マスター、今です!  コアの直下の結合部、そこに高火力の魔力を叩き込んでください!」


「了解だ!  シオン、行くぞ!」


「ええ、いつでもね!」


 俺とシオンが左右に分かれ、それぞれの魔力を限界まで高める。


「喰らえ、〈レゾナンス・エーテル・スパイク〉ッ!」


「私の剣で、その硬度を両断するわ! 〈月影・光刃抜刀〉ッ!」


 放たれた高純度のマナの杭と神速の抜刀術が同時にアルマ・マテルの装甲を穿ち、敵の体制を大きく崩させる。


 さらに、シュリが青い髪を揺らしながら両手を天高く掲げた。


「──我が呼び声に応えよ、無数の星屑よ。降り注げ、蒼き天の罰。〈アストラル・スター・フォール〉ッ!」


 頭上から降り注いだ圧倒的な星辰魔法の奔流が、アルマ・マテルの巨体を激しく焼き焦がし、確実に、しかし着実にそのHPを削り取っていく。


【安倍ノ家:ふむ、推奨レベル60を大きく超える〈七極〉の一柱『アルマ・マテル』に対し、レオンハルト陣営とユウたちの完全合同レイドが綺麗に噛み合っているな。特にユウたちのパーティーの連携が巧みだ。ティアナの広範囲デバフ解除からのセラとティアナの二枚体制による手厚いヒール、そしてニベアの重撃とライムの解析による的確な弱点撃破。個々の役割分担が完璧すぎて、まるで芸術的なオーケストラの演奏を見ているようだ】


【灰かぶりうさぎ:待ってまってまって……!!!!!  ほんとに無理なんだがこのパーティーの絆の強さ!!!  ティアナちゃんの「はい! わかっています!」っていう健気で有能すぎる聖職者ムーブからの、ユウパパとシオンママの息が完璧に合いすぎてるアタッカーコンビネーションが尊すぎて私のHPがミリ単位なんだけど!!!  だけでなくニベアちゃんやセラちゃん、シュリちゃんの華麗なスキル回しまで拝めるなんて、ここ本当に天国ですか???  今すぐ全員に金メダルと特大の祝福を授けたいんですけどおおおーーっ!(大号泣の血涙スタンディングオベーション)】


 徐々に、だが確実に、アルマ・マテルの巨大な体躯に無数の亀裂が入り、その行動に焦りのような激しい魔力の乱れが生じ始めた。


「よし、いいぞ!  この調子で一気に削りきれ!」


 レオンハルトが大剣を構え直して気勢を上げるが、その瞬間、アルマ・マテルの核心部がどす黒い紫色の光を放ち、周囲の空間全体がピタリと静まり返った。


「……っ!?  皆、動きを止めろ!  この魔力の圧縮、尋常じゃないぞ……!」


 俺が叫んだ直後、アルマ・マテルは自身の体躯の寿命を削るかのように、周囲の瘴気と生命力を一極集中させた。


「ぐああっ……なんだこの圧力は……!?」


「来るわよ……!  このエリア全体を蒸発させる気だわ!」


 アルマ・マテルが放とうとしたのは、周囲のすべてを呪詛の濁流で押し流す最悪の全体を壊滅させようとする大技だった。上空から降り注ごうとする無数の黒い死の雨粒が、空間そのものを腐食させていく。


「全員、防御態勢に入れ……っ!  でも、このままじゃ全員まとめて持っていかれる……!」


 誰もが絶望的な一撃を直感したその瞬間、俺は迷わず極光の錬金杖を地面に突き立て、全身の全魔力を限界突破させて展開した。


「させないっ……!  この攻撃のベクトルを、俺の創成錬金ですべて相殺・緩和する……! 〈クリエイト・エーテル・バリア・リミットブレイク〉ッ!!」


 俺の手から放たれた幾重もの高密度な錬金防壁が、降り注ぐ死の雨の威力を凄まじい勢いで削ぎ落とし、パーティー全体への直撃をギリギリのところで回避させた。


「ぐっ……!  ユウ、ナイスだ……!」


「ボスに大きな硬直の隙が生まれたわ……!  今よ!」


 シオンが鋭く叫ぶ。大技を放った直後、アルマ・マテルは全身の魔力炉がオーバーヒートを起こし、数秒間の完全な無防備な硬直状態に陥っていた。


「この一撃で、奴を両断する!」


 シオンが天を仰ぎ、全身の風属性と空間マナをその刀身へと極限まで収束させる。


「──風よ集え、すべての不条理を切り裂く神の息吹となれ……! 〈天翔・神風裂斬《ソアリング・ディヴァイン・エア・ブレイク》〉ッ!!」



 〈終焉の暴風〉の超高圧エネルギーが愛剣と左腕の『青銅魔導の円盾』に一点集中し、周囲の空間を歪めるほどの真空刃がアルマ・マテルの巨大な中心核を深くえぐり取り、怪物は凄まじい断末魔の咆哮を上げながら激しく怯んだ。


「今が絶好のチャンスだ……!  ここで終わらせるぞ、レオンハルト!」


「ああ!  俺たちで、この最高のレイドのフィナーレを飾るぞ!」


 レオンハルトが力強く頷き、周囲の仲間たちに視線を飛ばす。


「みんな、ユウさんとレオンハルトさんにトドメの時間を稼いでください! 私たちで全力サポートします!」


 ライムの指示に従い、シオン、ティアナ、セラ、ニベア、シュリ、シン、リーヴ、イリア、モナ、フローラの全員が、それぞれの持ち場で一斉に前へと飛び出した。


「ボスに近づけさせるものか! 〈スターライト・バレット・レイ〉!」


「私のガントレットの衝撃波で、奴の足を完全に地面に釘付けにしてやるよ!」


「星辰の光よ、敵の視界と動きを完全に封じ込めなさい!」


 全員による渾身の足止めと連続攻撃が、怯むアルマ・マテルの反撃の芽を完全に摘み取っていく。


 その隙に、レオンハルトは背中から眩い黄金色の光の翼を展開し、一気に上空へと舞い上がった。


「見せてやる……俺たちの限界の先にある輝きを!」


 そして俺は、極光の錬金杖を掲げ、全身全霊のマナをその極点へと引き上げるため、三十秒間の最大チャージを開始した。


 ──10秒、20秒……周囲の空間が俺たちの放つ強烈な魔力によって激しく歪み、青白い光と黄金の光がまるで一つの巨大な竜巻のように絡み合う。


「グオオオオオッ……!!!」


 アルマ・マテルが最後のあがきとばかりに、全身の触手を無理やり引き裂きながら、再び巨大な呪詛の光弾をチャージし、こちらへ向けて放とうとしたその瞬間──。


「間に合わせる……!  トドメだ、レオンハルト!」


「ああ、共に行こうぜ、ユウ!」


 俺たちのチャージが完全に完了し、全ての解放の準備が整った。


 上空のレオンハルトと、地面に立つ俺の双方が、全霊の叫びとともに最強の奥義を同時に解き放つ。


「天翔ける一筋の光──アイ・アム・ルーキス!!」


「すべてを穿て、我が最大解放奥義! 〈七星剣陣・グラディウス・レギオン〉ッ!!」


 黄金の光芒と、七色の星屑を纏った無数の神剣の奔流が完全に同期し、交差しながらアルマ・マテルの巨体を文字通り完全に粉砕した。


 ──ズァアアアアンッ!!!  と世界が鳴り響き、すべての光が一点に収束したのち、大爆発が周囲の樹海を揺るがした。



【システム通知】:呪樹の王『アルマ・マテル』の討伐に成功しました】


【経験値を獲得し、パーティーメンバーのレベルが上昇しました!】


・プレイヤー名: ユウ レベル:63(+4UP)

・プレイヤー名: シオン レベル:63(+4UP)

・プレイヤー名: ティアナ レベル:56(+5UP)

・プレイヤー名: ライム レベル:62(+4UP)

・プレイヤー名: ニベア レベル:59(+4UP)

・プレイヤー名: セラ レベル:63(+4UP)

・プレイヤー名: シュリ レベル:61(+4UP)



 巨大な王の残骸が眩い光の粒子となって四散していき、その中心に、まるで夜空に輝く北極星のように神々しく輝く一筋の光の結晶がふわりと舞い降りた。


 それは、〈七極〉を討ち果たした者だけが手にすることを許される、絶対的な証──一つ目の『極章』だった。


【安倍ノ家:ふむ、推奨レベルを遥かに超える〈七極〉の一柱『アルマ・マテル』を、総勢十三名の完璧な連携と、最後はユウとレオンハルトの合体奥義とも言うべき同時最大解放で綺麗に沈めてみせるとはな。これほどの高難度レイドをここまで美しく攻略できるとは、ロア的にも歴史に残る大金星だ。そして手に入った一つ目の『極章』……これが今後の世界の命運を握る鍵となるのは間違いない】


【灰かぶりうさぎ:待ってまってまってまってまって……!!!!!  今のトドメのシーン、頭の中で映画館のIMAXスクール並みの迫力と美しさで再生されて私の涙腺が決壊したんだけど!!!  ユウパパの30秒チャージを全員で必死に守る仲間たちの絆も尊すぎて無理だし、からのレオンハルト様との同時奥義「アイ・アム・ルーキス!!」「七星剣陣・グラディウス・レギオン!!」の合体演出とか少年漫画の主人公コンビすぎて脳汁が止まらないのよ!!!  しかも戦いが終わったあとにシオンママがそっとユウパパの汗を拭いてあげる幻覚まで見えて私もう今すぐ婚姻届け出してきますおめでとう世界最高ーーっ!!(大号泣のスタンディングオベーション絶叫床ローリング)】

 

 静まり返った樹海の中心で、俺たちは互いの健闘を称え合いながら、眩い光を放つ最初の『極章』をしっかりと手に掲げたのだった。






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