32. 失踪
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1時間ほどして帰ってくると、酒場のテーブルではミズキがミックを諭そうとしている。
「ねえアンタさ、こんなことして本当にいいわけないでしょ?お父さんもお母さんも今頃心配してるし、エルナちゃんやマルクスだって……」
「大丈夫だって!俺がビッグな冒険者になって帰れば、もうなんにも言わねーよ!そんなことよりさ、おかわり」
ミックの方は、相変わらず聞く耳を持たないみたいだ。
オレがテーブルに近づくと、目ざとく見つけたミックが声をかけてくる。
「あ!兄ちゃんどこ行ってたんだよ?」
「ちょっと用事だ。ミズキ、冒険者ギルドに頼んできたぞ」
「そっか、なら良かった」
「オレはこれから食べるから、2人は先に休んでて良いぞ」
オレが行ったのは冒険者ギルド。
そこでミックの家族宛に手紙を出してきたのだ。
オレはまだこの世界の文字がちゃんと書けないのでギルドの職員に代筆してもらったのだが、内容はミックがオレ達についてきてしまったこと、オレ達はミックを旅に連れて行くつもりはないのでできれば迎えに来てほしい、といったことを書いてある。
手紙はクックパ村の方に行く冒険者に持たせてすぐに送るとのことだったので、上手くすれば、3〜4日くらいで迎えが来るだろう。
その間この町で足留めを食うことになるのだけれど、それはまあ仕方ない。
そう思っていたのだが。
ミックがいなくなっているのにオレとミズキが気づいたのは、両親宛に手紙を出した翌々日のことだった。
オレとミックは2人部屋に泊まっていたのだけれど、朝起きるといつもは誰よりも遅く起きてくるはずのミックがいない。
ミズキを起こして聞いてみても知らないという。
フロントにいた宿の主人に聞いてみたところ「明け方ぐらいに出て行った」との返事。
しかも「今まだ寝ている2人が返すから」と、借りられるだけのお金を借りて。
主人から「なんか、渡しといてくれって言われたよ」と差し出されたのは借金の証文と「ビッグな冒険者になったら返す」と汚い字で書かれた1枚の紙だった。
「やられた……あんのクソガキ!!」
「実家に手紙を出したのを察知されたか」
ブチ切れるミズキをなだめながらオレは確認のため証文に書いてあった金貸しを訪ね、利子が増えるのも面白くないということで、その場でミックの借りた額である金貨2枚を支払った。
その後で一応ミックの行方を探してはみたものの、運輸ギルドで「朝一出発の、王都ラキオスブルック行きの馬車に乗り込んだ」ということがわかったのみ。
さすがにこれ以上追いかけるわけにもいかず、オレ達はその日入れ違うようにしてファカンタ市に着いたミックの母親に平謝りで事の次第を報告。
勝手についてきた上にお金を盗んで逃げた息子の所業を謝ってくるミックの母親とミズキとオレと、3人で必死に頭を下げ合う事態になってしまった。
結局、母親がミックにかかったお金や借りて行ったお金を払おうとしてくるのを断り、「もう息子のことは諦めます」と疲れた顔で呟く彼女と別れ、オレとミズキは国境行きの馬車に乗り込んだのだった。
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次回、エピローグになります。




