30. 握手
よろしくお願いします。
「それじゃあ、ミズキさん、タマさん、お気をつけて」
「うん。エルナちゃんも、マルクスと仲良くね」
「マルクスも、村はまだまだ大変だろうけど、無理はしないようにな。健康が第一だ」
「うん。あの……タマさん、村長さんは主様がって言ってたけど、本当はタマさんがあのドラゴンを倒して村を助けてくれたんだよね?本当にありがとう」
「オレにはさっぱりわからんな」
「フフッ、とにかくありがとう!」
アインクル湖祭りの初日、そしてこのクックパ村がプラントドラゴンの襲撃を受けた日の翌々日。
オレとミズキは、村の入り口でマルクスとエルナの2人と、お別れの挨拶をしていた。
プラントドラゴンに襲われるという大変な事態に見舞われてしまったこの村だったが、ドラゴンが現れたのが村からは少し離れたアインクル湖だったことで、建物への被害はほとんど発生していない。
一方で、襲撃の際に湖畔にいた村人や観光客には、少なくない犠牲者が出た。
それを考えると、ドラゴンを撃退したの爪をもらったの言ったところで手放しで喜べることではない。
クックパ村としては、そのあたりも合わせて、これからどのように湖の伝説と向き合っていくのかを考えるとのことだった。
オレとミズキは、昨日1日被害の後片付けを手伝い、軽く一段落着いたところで、予定通りにこのクックパ村を出立することにしたのだ。
「そういえば、ミックはどうした?なんか今日は静かだな」
オレが何の気なしにした質問には、マルクスとエルナが顔を見合わせる。
「なんか……今朝からどこにもいなくて……」
まあ、この期に及んでついて来るだのなんだの騒がれても困るのだが。
ちなみに一昨日のアインクル湖祭りの時も姿が見えなかったミック。
結局戦いが終わった後に森の中から出てきたのだけれど、本人を問い詰めた結果、湖の対岸にあったお社に潜り込もうとしていたらしい。
「主の社を探検して、湖に隠された謎を暴く!」などと考えて、湖畔の森の中を対岸側へと向かっていたのが、たどり着く前にあの魔法陣と爆発が発生してしまう。
後はもう動くに動けず、オレと湖の主VSプラントドラゴンの乱闘が終わるまで、ひたすら身を潜めていたとのこと。
いつもであれば友達であるマルクスも誘うところなのだが、どういうわけか今回は1人で行動していたようだ。
なんにせよ無事だったのと、マルクスが持ち込まれないで済んだのは幸いだった。
そんなミックだったが、まあいないものはしかたない。
そうしていると、エルナが少し声を震わせて尋ねてきた。
「あの……ミズキさんもタマさんも、また会えますか?」
「うー……ん、どうかな。私達、ちょっと遠い所を目指してるから……」
それには、ミズキが困った顔で答える。
「そう、ですか……」
「もしもここに来ることがあったら、その時はまた泊めてくれ」
「……はい!」
残念そうにするエルナとマルクスにオレがそう言うと、2人とも笑顔になって元気よく頷いた。
そこに「お2人共、馬車が出ますよ!」という声がかかる。
乗せてもらうことになっていた東行きの馬車が、もう出発するようだ。
オレとミズキは最後にマルクスやエルナと握手を交わして馬車に乗り込み、見送ってくる2人に手を振って、クックパ村を後にしたのだった。
ところが……
お読みいただきありがとうございます。
また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。




