28. 賠償
よろしくお願いします。
見ると湖の方からずぶ濡れの男が2人、こちらに向かって歩いて来ていた。
1人は年寄りで、もう1人は中年。
ていうかこの2人は、さっき儀式で湖に舟で出ていた村長と漕ぎ手だ。
湖で起きた爆発に巻き込まれていたが、岸に流れ着いて無事だったんだな。
村長と漕ぎ手はふらふらと歩いて来ると、オレの前で崩れ落ちるように膝をつく。
「おぬし、これは……一体……」
「どこまで見ていた?」
「おぬしと、湖の主様とが、あのドラゴンを倒して……後から現れたもう1匹のドラゴンが、倒したドラゴンを運んで行ったところまで……」
「お、俺達、なんとか岸に流れ着いて、それから、森の中に隠れてたんです。広場で皆が襲われてるのはわかったけど、どうしようもなくて……」
「そうか、無事で何より」
オレの問いかけに、震える声で答える村長と漕ぎ手。
実際、戦っている最中にこの2人に出てこられても邪魔にしかならなかったと思うので、隠れてくれていたのは助かった。
「お、おぬし……ドラゴンを、倒したのか?あの伝説の魔物……」
「知らん」
「は?」
オレに質問を遮られて、村長が固まる。
そんな彼らに、オレは言葉を続ける。
「オレはドラゴンと戦ったりなんかしていないし、頭を吹っ飛ばして倒したりもしていない。突然襲ってきたプラントドラゴンに、この湖の主が皆を助けるために戦った。そこに後から現れたクンツァイトドラゴンが、プラントドラゴンを倒して村を助けてくれた。プラントドラゴンの死骸は、クンツァイトドラゴンがどこかに持っていってしまった。以上」
「な……何を、言うておる?おぬしが、あのドラゴンを……」
「そっちこそ何を言っている。単独でドラゴンを倒せる人間など、いるわけがないだろう。違うのか?」
「そ、それは……」
言葉に詰まる村長。
実際のところ、誰かに言ってところでとても信じてなどもらえないレベルの話なのだろう。
後で冒険者ギルドなどで確認した話によると、ドラゴンはその強さに応じて上位・中位・下位とランク付けのようなものがされているのだそう。
そして上位は宝石や鉱石の名前、中位は色の名前、下位は能力の名前が付けられているとのこと。
下位のドラゴンであれば、トップクラスの実力を持つ騎士や冒険者などがチームを組んで倒せたこともあるらしいのだが、中位にいくとそれすらも通用しないほどの力を持ち、上位ともなればもはや神様扱いと言っても過言ではないほどになるのだという。
そんなものを、湖の主の助力があったとはいえ戦って倒したなんていうのは、誰かに言ったとしても夢でも見たのかと笑われて終わりと、それぐらいの話になるということなのかもしれない。
「……それではおぬしではなく、湖の主様とあのドラゴンが、我々を救ってくれたということで良いのじゃな?」
「そうだ。それからこれを」
「?これは?」
「プラントドラゴンの爪だ」
「……は?」
オレが差し出した物を見て、村長が怪訝な顔をする。
しかしそれも、オレの次の言葉に全身から血の気が引いた。
「クンツァイトドラゴンが、同族が迷惑をかけたお詫びだと置いて行った。何か紋章のようなものも入っているぞ。カッコいいだろう」
「……ま、待て、今おぬし、何と言うた?」
「だからプラントドラゴンの爪だ。どれだけの値打ちがあるものかはわからないが、売ればそれなりのお金になるんじゃないか?そうすればお祭りのやり直しもできるかもしれないし、なんなら助けてくれたお礼ということで、湖の主にありったけのごちそうなんかをあげても……」
「いやいやいや!それなりの金とか、おぬし何を言うておる!?ドラゴンの爪じゃぞ!?それなりどころか町の10や20、丸ごと買えるほどの値打ち物じゃぞ!?本当なら儂など触ることも許されん、国の宝として国庫に厳重に納められる代物じゃぞ!?」
「そうか、じゃあこれはいらないか?」
「……………………もらう」
不承不承ながらも手を出して爪を受け取る村長。
「儂の手には余る代物じゃなあ……領主様に献上して、代わりに復興費用をお願いしてみるとするか……」
などと、ブツブツつぶやいている。
クンツァイトドラゴンはプラントドラゴンの爪を2つ残していったから、これは1つはクックパ村のものということで良いんだろう。
もう2つあるのは、オレ達がもらっておくことにする。
大層な値打ちのある物みたいだし、お金に困ることがあったら売るのが良いだろうか。
もしくは、何やらそれっぽい紋章も入っていることだし、お守りとかになるかもしれない。
村長の方はまだ頭を抱えている様子ではあるがとりあえずは一件落着ということで、オレはミズキ達を追ってクックパ村へ足を向けるのだった。
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