26. 紫竜
よろしくお願いします。
勝った……
地面に崩れ落ちる首無しプラントドラゴンに、オレは大きく息を吐く。
やっぱり、恐ろしく強かった。
オレ1人では勝てなかったな。
そう思いながら、広場の方で立ち上がる湖の主に目をやる。
「どうもありがとう!おかげで勝てた!」
先ほどの戦いの時に何度か助けられたので、とりあえずお礼を言ってみた。
相手の方からは返事は無かったものの、主はさっきとは違い、落ち着いた目でオレを見返してきている。
と、その顔が不意に上に向いたかと思うと、空を見た目が大きく見開いた。
何かと思ってオレも空を見上げると、そこにいたのは全身を薄紫色のウロコに覆われた、たった今倒したものよりも二回りほど大きな、ドラゴンの姿だった。
「っ!!」
さすがにうろたえる。
さっきあれだけ苦労して倒したのに、またドラゴンか!?
しかもこのドラゴン、身体が大きいということは、おそらくだがさっき倒したドラゴンよりも強い。
これは……まずいかもしれない。
冷や汗をかいていたオレだったが、目の前に滞空している薄紫色のドラゴンは、動くでもなくこちらをじっと見つめてきている。
攻撃、してこないのか?
オレが戸惑っていると、やがてドラゴンは広場の人々の死体にもちらりと目を向け、そしてゆっくりと地面に降りた。
倒れている深緑色のドラゴンの死骸に近づいて、頭と左前脚と翼の無くなった身体を少しの間じっと見ていた薄紫色のドラゴン。
何やら考え込んでいるみたいだったが、やがて顔を上げると軽く周囲を見渡すと、何かを見つけたかのように森の中へ歩いて行く。
木々の中に顔を突っ込んで、そこで拾い上げた物は深緑色をしたドラゴンの前脚。
さっきオレが撃った紫光線でちぎれたものだろう。
プラントドラゴンの死骸のそばに戻って来た薄紫色のドラゴンは再びオレを見つめてくると、その両眼がドラゴンの身体の色に強く輝いた。
何だ!?と思っていると、薄紫色のドラゴンが持っていた深緑色のドラゴンの前脚が光の球体に包まれる。
続いて、周囲の地面から無数の、小さな薄紫色の光の球体が浮かび上がってきた。
次の瞬間、プラントドラゴンの前脚を包んだ大きな光球と、周囲に浮かんだ小さな光球が、一斉にオレに向かって突っ込んで来た。
「うわ!?」
驚きはしたものの、光球に包まれて少し眩しくはあるが痛みや不快感のようなものは感じない。
そして同時に頭の中に流れ込んでくる、何者かの意思。
これは……あの薄紫色のドラゴンの考えていることなのか?
言葉ではないが、ドラゴンが何を伝えたいのかが感覚としてわかるような感じだ。
どうやらこのドラゴンは念力が得意であり、同じ系統のドラゴンの中では最も強いらしい。
人間からは、クンツァイトドラゴンと呼ばれているのだという。
一方でさっき倒したドラゴンは、プラントドラゴンという名前の通りに植物を操る能力を持ち、同系統のドラゴンの中では弱い方なのだそうだ。
弱い方のドラゴンで倒すのにあれだけ苦労したのだから、強い方となるとどれほどのものになるというのだろう。
できれば戦うような事態にはなってほしくないものだ。
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