22. 懇願
よろしくお願いします。
急降下して突進してきたドラゴンに、先ほど以上の大混乱になる広場。
広場にいた人々がドラゴンの爪に引き裂かれ、悲鳴が周囲を埋め尽くす中、オレは右手にミズキ、左手にエルナを抱えてクックパ村の方へと逃げる。
そんな中、後ろを走って付いてくるマルクスの「主様!?」という声が聞こえると同時に、先ほどのドラゴンのものとは別の咆哮が響き渡った。
振り返って見ると、広場で暴れるドラゴンの首に、湖から上がってきた主が横から噛みついていた。
あれは、アインクル湖の主がドラゴンを襲っている!?
「主様が、僕達を助けてくれてる!」
見ていたマルクスが叫ぶ。
実際に広場の人達を助けているのか、それともナワバリに入られて怒っているのかはわからないが、それでも主が攻撃をしかけたことでドラゴンに隙ができたのは事実。
「逃げろ!村に向かって走れ!」
オレはマルクスや周囲の皆に向けて怒鳴ると、再び村へと続く道を走り出した。
10分ほど走ったところで、脇に抱えていたミズキが「タ、タマ……!もういい!大丈夫だから、降ろして……!」と声を上げた。
立ち止まってミズキとエルナを降ろすと、エルナの方はその場に膝をついて涙目で荒い息を吐き、すぐに追いついて来たマルクスを認めると抱きついて大声で泣き出した。
アインクル湖の方からは、今でもプラントドラゴンと湖の主が戦っているのだろう轟音が響いてくる。
少しすると息を整えたミズキが顔を上げて、湖の方に目を向けながら言ってきた。
「まだ、戦ってるね。主様だったら、あのドラゴンにも勝てるかな……」
「無理だろうな」
即答したオレに、ミズキが目を丸くする。
「む、無理……なの……?」
「ああ。オレの見た感じではあるんだが、湖の主よりもあのドラゴンの方がおそらく強い。あのまま戦ってれば負けるだろうが、時間稼ぎにはなっている。その間に、オレ達は村にこのことを伝えて逃げる。マルクス、エルナ、走れるか?」
「に、逃げるの……?」
「何を言ってる。危険なものからは、出来る限り早く遠くに離れるのが当然のことだろう」
「そ、それはそうだけど……!主様や、広場にいる人達は……!」
ミズキは少し口ごもる。
しかしすぐに顔を上げると、続いてこちらをすがるような顔で見つめてきた。
「ねえタマ……あれ……なんとか、ならない?」
「あれをなんとかとは?」
「あの、ドラゴン……このままじゃ、主様だけじゃなくて、湖も、クックパも、皆やられちゃうよ。だから……」
「オレに、あれと戦えと?」
オレは1度アインクル湖で上がっている土煙や轟音や咆哮の方に目をやり、そしてまた視線をミズキに戻す。
「たぶん勝てない」
「……っ!」
オレの答えに、息を呑むミズキ。
一度直に向き合っているのでわかる。
あのドラゴンは強い。
元の怪獣の身体であった時ならわからないが、少なくとも今の人間の身体では勝てる気がまるでしない。
「……」
唇を噛んで顔を伏せるミズキと、少し落ち着いたか横で不安そうな顔を向けてくるマルクスとエルナ。
こんなことをしているよりも、早く逃げたいところなんだが……なんて思っていると、少ししてミズキがキッと顔を上げた。
「あのドラゴン、私達のことを遊びで殺すつもりなんでしょ?だったら、逃げても追いかけて来るよね。だったら向こうは飛んでるんだし、私達走っても逃げ切れないと思う。それに私達を追いかけてドラゴンが村に来たら、村の人達も……」
なるほど、確かに。
ということは……
「ここで倒しておいた方が安全ってわけか。だがさっきも言ったが、オレの力では……」
「今ドラゴンはあの主様と戦ってるよね。2対1なら、なんとか勝てない?」
2人がかりか。
オレは今までにチームワークというのはあまりやったことがないし、何よりもあの主が味方をしてくれるという確証も無いんだが。
とはいえ、敵を挟んでお互いに牽制し合うように立ち回ることができれば、あるいは……
そう考えたオレは、ミズキを見返す。
「わかった。やってみよう」
「ほ、本当に!?」
「ミズキ」
喜色を浮かべて見上げてくるミズキの顔を見返して、オレは静かに告げた。
「1つ言っておく。オレは神様でも超人でもない。ただの1匹の怪獣だ。お前のためならなんでもするが、だからってなんでも出来るわけじゃない。それはわかってくれ」
「あ……」
ハッとした表情になり、何かを言いかけるミズキに「マルクスとエルナを連れて村に走れ」と言い置いて、オレはアインクル湖の方へ向かって走り出した。
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